『ラブレター』 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

一旦3時半目覚め、すぐ眠れたものの今朝は6時ちょっち前に起きた。近くを亜細亜らしい異国語で歌う輩が通り過ぎ目覚めさせられたんや。

ジョー・リー・ウィルソンのアルバム「シャウト・フォー・トレイン」をレコードで聴いた。

朝食は新潟産こしひかりでご飯炊き、くめ納豆、海苔で一膳半。デザートは青森産りんご。

岩波邦江→佐藤ひびき→片野麻代→大塚ひろこ→NAOKO→堀北やこ→井上真紀と歌をユーチューブで聴いた。

昨日から花粉症状出始めたが、昼食には久し振りに上野「ステーキダイニング鷹」へ行き、和牛ハンバーグランチ食うた。サラダ、ミネストローネ、漬物、コーヒーが付き、200円値上げし値段が1500円になっとった。

満足して店出て、スーパーで食料買うて帰宅。

風呂に小一時間浸り考えとった。昨日から確定申告が始まったが、税務署を訪れた納税者から批判の声が一斉に噴出したんやて。当然ですわな、議員共は裏金つくってその使途を明らかにしとらんのやからな。二階俊博はワテ等の税金3500万円を饅頭本に使うたと明かしたけど。

友人達にメール送付した。

 

 

先々週ビール好きA君夫妻がやって来て一緒に酒飲んだんや。また読書の話になったんやけど、A君が浅田次郎の短編集「鉄道員ぽっぽや」収録の『ラブレター』読んで涙したと云うやないの。{老いの兆しなんか、彼も涙もろくなったわ}と思うとると、読んどるかどうか問われたんで、頷いて「お涙頂戴物語やけど、一滴の涙も零さんかった」と控えめに答えた。

ほんまは読んだ後、お涙頂戴が露骨なんで業腹な思いやった。己の価値観を問い直すよう促す物語を読みたかったんや。

ワテ、A君夫人に「涙零れました?」と尋ねてみたら、笑うて否定した。それにA君が意外そうで「ウルウルはしただろ?」と尋ねても、「どうだったかしら」と彼女はビール飲んだ。

文庫本がすぐ見つかったさかい、念の為改めて読み返してみたんや。二度目やから怒りは湧かんかったが、以前読んだ時と同じく面白くなかった。主人公も感情移入し難い部類なのに、A君は涙もろくなっとる。

物語やが、裏ビデオ屋の雇われ店長である高野吾郎が、パクられ十日間の勾留の後でシャバに出て店長しとった店に来て覗いとったら、新宿署の保安係の刑事に「おまえのかみさん、死んだぞ」と伝えられますんや。

意味分からず戸惑う吾郎やったが、親しいヤクザ佐竹に頼まれ戸籍を貸しとった。つまり50万円で偽装結婚しとったんですわ。

その中国人不法就労者の名は康白蘭。吾郎は一度も会うとらん戸籍上の妻が亡くなったちゅうんで千葉県千倉に佐竹興業のサトシと行くんやが、佐竹から彼女の写真、戸籍謄本、住民票、パスポートの写し、それと手紙を手渡された。手紙は死ぬ間際の出稼ぎ女性肉体労働者白蘭からのですわ。

どこがあかんかやが、この手紙が出て来てからどうにも嘘臭さが鼻に付く物語になるからやねん。その時の心境にもよるが、そもそも関係性無い者との手紙では巧みなもんであってもそうそう強く心動かさせぬもんや。身近に接して姿見たり声聞いたり匂い嗅いだりしてみんとあないになるかい。

白蘭の遺品の中に吾郎宛てのもう一通の手紙の内容と吾郎の反応なんか明らかに泣かせる為のつくりもんですわ。作者が編集者にお涙頂戴もん要望され、短編一作書きましたとしか思われん。そして出来たんはガラス細工な小説ですわ。

人それそれではあるが、あれで泣ける人なんて、頭でっかちか、幸せ続きな人生経験なんちゃうやろか。A君、大学時代に長い髪の見目麗しくちょっち艶っぽい女子大生に手痛く振られたが、辛かったんはそれだけで、その後は幸せに暮らして来たんやろ。

文庫本の北川次郎による解説には、『ラブレター』が女性読者に圧倒的に好評やったとある。しかも「現代の恋愛小説として哀切きわまりないから、女性読者の涙腺を刺激するのは理解できる」と書いとる。ほんまにそう思うとるんかいな?

浅田次郎の小説は「鉄道員ぽっぽや」の他に数冊読んどるが、よう知られとる「鉄道屋ぽっぽや」が最も出来悪いと思うワテや。浅田次郎は時代小説がええ。