『のぼりうなぎ』 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

深夜3時に一旦目覚め、今朝は7時ちょっち前に目覚めたんやが、9時近くなっとるかと思うた。光が眩しかったし、長~い夢を見とったからや。業界紙に雇われ円安に苦しむ企業へ取材に廻るんやが、三社目がどうしても見つからず約束時間が迫り焦るもんやった。

朝食は昨夜スーパーで4割引きやった稲荷寿司詰め合わせ。デザートは栃木産スカイベリー。

ダイアナ・クラールのCDアルバム「ザ・ルック・オブ・ラブ」を聴いた。
「孫子兵法」第28話と第29話をギャオで見た。

坂井レイラ知美→SHANTI→CHAKAと歌をユーチューブで聴いた。

昼食は西浅草「鍋茶屋」へ行き、いつものランチ鰻丼。まだ1080円の儘やった。

満足して店出て、郵便局で金下ろして帰宅。

風呂に小一時間浸り考えとった。先週会うたEI君は以前5月迄に1ドル130円を予測しとってほぼ当てて鼻高かったが、今度は8月迄に140円はあると円の価値下落を予測した。円を刷る事奨励しよった安倍晋三はこの円安どない思うとんのやろ?

マッコイ・タイナー→ハービー・ハンコックとピアノ演奏をユーチューブで聴いた。

夕食はブラジル産鶏肉、茨城産ピーマン、愛知産ブロッコリーをタジン鍋で蒸して食うた。デザートは栃木産スカイベリー。

「孫子兵法」第30話と第31話をギャオで見た。

 

 

山本一力の小説「蒼龍」から『のぼりうなぎ』を読んだ。

商いの話である。商いには辛抱が要る。それだけやなく商いには知恵と工夫が必要や。

小さな店には小さい店なりの苦労、大店には大きいなりの苦労があるもんや。

主人公は深川黒江町の裏店に住む五尺九寸の大男弥助や。彼は腕利きの指物職人なんやが、日本橋の老舗の大店呉服屋である「近江屋」の七代目九右衛門に手代としてヘッドハンティングされるんですわ。

その話の仲介役が木場の材木問屋「杢柾」主の柾之助。弥助は日頃世話になっとるから彼の頼みは無碍には断れぬ。けど、柾之助が切り出した頼みが思いも寄らぬ事やさかい戸惑う弥助。

口説く柾之助やが、最初に九右衛門から間を取り持ってもらえぬかと云われた時は、弥助が小僧の時から職人一筋の男で商いのいろはも知らぬのに呉服屋の手代が務まる道理があらへんと云う。せんでもええ苦労を背負わせる片棒は聞けぬ云う。

近江屋の七代目は養子なんや。その九右衛門が一芸に秀でる弥助なら務まる、奉公人の手本になって欲しいちゅうんや。今居る奉公人達が変わらん儘やと遠からず近江屋は傾く。弥助に奉公人達が変わる触媒の役割を果たして欲しい七代目なんや。

九右衛門の胸の内を察する事が出来た柾之助、仲介役を引き受けた。

全くの畑違いで荷が重過ぎると弥助は両手づきで柾之助に断ったものの、ほぼ毎晩顔出す居酒屋「柿の葉」の主である膳吉がした養子に入る前の九右衛門が人気ある料亭のとびっきりの腕前の花板やった時の話で気持ちがほぐれるんや。

弥助は申し出を引き受けたものの、所詮は職人やとか、たかが指物職人に指図される謂れはないとか、番頭から小者迄彼への風当たりは強い。隙あらば排除したい異物としか受けとめられんのや。前途多難ですわ。

主七代目九右衛門の危機意識は、奉公人達が暖簾に寄り掛かっとる事にあんねん。老舗意識の上に胡坐をかいとるんや。しかも、亡くなった依怙地な六代目の悪い癖が一番番頭の利兵衛から小僧に迄染み付いて、一見客を相手にせぬ頭が高い商い振りなんや。

近江屋の商いの高はまだ悪くはあらへんが、越後屋が店頭で呉服の正札売り始めて江戸中の評判となり人が途絶える事が無い状況なのに対抗措置を講ずる様子無い。

そんな「近江屋」で、無視されたり、教えられなかったり、抑え気味の嘲笑いが帳場に溢れたりと、嫌がらせの酷さは弥助の覚悟を超えとったがな。

そして、柾之助が辰巳芸者衆を連れて近江屋に現れ大層な呉服を購入してから物語は大きゅう動くんですわ。

[弥助は言葉がなかった。多くの人が進んで力を貸そうとする木場と、噂ひとつで元旦から取り立てに出す近江屋の薄情さとの落差を、あらためて思い知ったからだ。

「この御代は間違いなく帳場に届けますが、あたしはその場で暇乞いをいたします」

「それは駄目だ。あんたが短気なことをしたら、九右衛門さんの面子を潰すぞ」

「あたしはあの人を見損ないました。面子が潰れようが気にはなりません」

「見損なったとはどういうことだ。あんた、何か思い違いをしてないか」

「いいえ、していません。元旦早々、こちらへ取り立てに出向くことを留め立てもせず、奥に引っ込んだまま番頭さんの好きにさせていますから」

「ちょっと待ちなさい」

居間に立った柾之助は、手紙を手にして戻ってきた。

「これは今朝方届いたものだ。構わないから読みなさい」

差出人は近江屋九右衛門だった。手紙は書き出しから詫びで始まっていた。]

店の小僧達や女中頭のかつえの弥助に対する態度は変わりつつあった。そやから弥助に、ちゅう事は近江屋にもほの明るい希望が見えるがな。

タイトルになっとる“のぼりうなぎ”は最後に出て来ます。身がとろけそうに柔らかいねん。

ええ話ですわ。焦らず前向きに生きなならんと教えてくれる物語やった。