『鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛』 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

今朝は7時半に起きた。

風呂に小一時間浸り、中国共産党の覇権主義を考えとった。経済力がグンと高まったんやから軍事力もそれに見合うだけ増やして誇示し、大国らしさを見せつけ、あわよくば領土も拡大したろちゅうんやろ。

朝食に北海道産ゆめぴりか米でご飯炊き、くめ納豆、海苔で二膳。デザートは栃木産梨。

風呂掃除をした後、牛乳飲みながらカーリン・クローグ&アーチー・シェップのレコードアルバム「ハイ・フライ」を繰り返し聴いた。
昼食に裏浅「草うんすけ」へ行き、健康志向で一汁三菜ランチを頼み、ご飯は赤米。飲み物の選択肢が増えとって、客に人気あると云うグリーンマテ茶飲み1000円也。

満足して店を出て、スーパーでヨーグルト買うて帰宅。

「後宮の涙」第43話、第44話をギャオで見た。

ほな、一昨日D君とKさんに会う前、図書館で再読した池波正太郎が書いた物語について記しますわ。

 

 

池波正太郎著「鬼平犯科帳」はほとんど読んどる。

それをテレビドラマ化したもんもよう見とったもんや。中村吉右衛門演ずる鬼平こと長谷川平蔵に感じ入ってたからな。あの長谷川平蔵には男の色気がプンプン漂うとlった。

吉右衛門の前に萬屋錦之介が鬼平演じとったのは知ってたんやけど、実父松本白鸚が演じとったのは知らんかった。HJちゃんと「鬼平犯科帳」の話になった時、それ教えてもろた。白鸚が演じたシリーズも見てみたいなあ。

吉右衛門鬼平の脇役には、平蔵から信頼されとる筆頭与力の佐嶋役に高橋悦史、女と食い物大好きな同心木村忠吾に尾美としのり、小野派一刀流免許皆伝の同心沢田小平次に真田健一郎、密偵のリーダー格大滝の五郎蔵役には綿引勝彦、密偵おまさは梶芽衣子、密偵小房の粂八に蟹江敬三、密偵伊三次に三浦浩一、密偵相模の彦十に江戸家猫八。そして平蔵の妻久栄には多岐川裕美が配され、楽しませてくれた。

「鬼平犯科帳」は、ワテが高く評価する田沼意次失脚後、禁ずるの好きな松平定信が筆頭老中で政治を仕切った時代の事で、長谷川平蔵宣以は石川島人足寄場を設立した実在の人物ですわ。

白河藩藩主松平定信と云えば、教科書に寛政の改革とか載っとるが、高校の時にその記述読み、やっとるの禁禁禁でどこが改革なんや、田沼意次の目指してたもんの方こそ改革やろ、可笑しいがなと腹立たしかったの記憶しとる。太田南畝が「白河の清きに魚も住みかねて元のにごりの田沼こひしき」と詠んどる通りやと思うたもんですわ。

さて、 『鬼平犯科帳 血頭の丹兵衛』やが、火付け盗賊改の長官に鬼平こと長谷川平蔵が復帰したのは、犯行の凄まじさは言語に絶するもんがあった血頭の丹兵衛一味の神出鬼没さに平蔵の後任が手を焼くばかりやったさかい、堪りかねた当局が平蔵を戻すしかないと考えたからや。

平蔵が復帰した火付け盗賊改も、なかなか丹兵衛の手掛かりつかめずにいた時、平蔵は野槌の弥平一味しとて捕縛されたが自白後も牢屋に留め置いとった粂八ちゅう苦味のきいた顔した盗人と会話すんねん。

[「粂。元気かえ」

牢格子からのぞきこむ平蔵へ、

「よく、帰っておくんなさいましたね。長谷川さまが盗賊改メの御頭をおやめになったときいて、この五ヵ月というもなあ、この首が今飛ぶかと、いえもう、びくびくもんでございましたよ」

「やはり、生きていたいか?」

「ばかなことで・・・こうして御牢内におりますと、めっきり、気が弱くなります」]

名の知られた盗賊でも迫る死は恐怖以外の何ものでもないんや。

それから、粂八は若い頃に丹兵衛の配下やったと云い、あれらの凶行は丹兵衛を騙る偽物の仕業やと断言し憤慨して見せますんや。丹兵衛は金箔付きの親分やと。

なぜなら、丹兵衛は人を殺さず、女を犯さず、貧乏人からは盗まずちゅう盗人三か条を守る尊敬すへき盗賊やからで、実際に己も一味だった時の盗みの際にその掟破り飯炊き女を嬲って丹兵衛に破門されとる云いますんや。

けれど、粂八が破門後にその三か条、中でも女を犯さずちゅうを守って来たかどうかは分からんでえ。そうそう人間は変わりたくとも変われんもんやからな。

そして、粂八は平蔵に向かいその偽物を捕まえる手伝いをしたいと申し出ますんや。

平蔵が粂八に会うた三日目、襲われた紙問屋の重傷負いながらも生き残った次女が耳にした盗賊の言葉から、盗賊の一味が向かった先が東海道の島田宿らしいとなりますんや。

平蔵は改心しとらん小房の粂八のどこを信じたのか、牢から放ち密偵として犯人探らせる。粂八の他に筆頭同心酒井祐助や同心沢田小平次等火付け盗賊改を島田宿へ向かわせるんや。

そんな中、江戸で書籍商の家人が就寝中にいつ押し入ったかも分からん見事な盗みをやって、これ見よがしに丹兵衛の木札を残す盗人が出た。しかも数日後には、主人の枕元へ盗んだ金をその儘返して去るちゅう事をしてのけますんや。これ迄とは別人のような遣り口や。

粂八はそれこそが本物の丹兵衛やとほくそ笑む。

しかしながら、後に粂八は失望し落胆する事になる。もう盗みはすれども非道はせずちゅうかつての仏の丹兵衛は居なかった。悪う変わる人間は居るちゅうこっちゃ。

粂八に顔見せた丹兵衛は云う。

[「いまのおれは、むかしの丹兵衛じゃあねえ。このせわしい世の中に、むかしのようにのんびりしたお盗がしていられるもんかえ」

「急ぎ仕事ゆえ血も流そうし、あこぎなまねも平気でするのさ。そうでなくっちあ、当節生きてはゆけねえ。なに、これはおれたちの稼業にかぎらねえことよ」]

と丹兵衛は言い放つ。

世知辛い世の中が悪く、悠長な事して大きくコスト掛けるなんぞ馬鹿らしいと云いたいんですわ。効率至上主義であれば、あこぎなまねもせなならん。

だが、粂八に会って勧誘したのが運の尽きで、盗人宿は与力達に襲撃され、丹兵衛達は捕縛されたり斬り殺されたりする。

捕縛された丹兵衛から顔へ唾吐きつけられ「狗め!」と罵られた粂八は、唾を吐き返し、与力同心達の前で次の如く叫んで見せなならん事になる。

[「にせものの血頭の丹兵衛め、素直に獄門へかかりやゃあがれ」]

果たして、その時の粂八に盗人の矜持はあったんやろか?

この物語、酒井と共に江戸へと先発した粂八が、峠の麓の茶屋の前を通り抜けようとした時、そこに大黒人形そっくりな老人蓑火の喜之助を見つけてからがごっつええねん。

[「近頃の若い連中は、力まかせのむごいやり方が増えていけねぇ。隠居から久しいが、この間丹兵衛どんの名を騙る外道に我慢がならず、代わりにちょいと本格の手際を披露してやったよ」]

と、儲け至上主義では無い喜之助がいたずらを打ち明けますんや。粂八同様、喜之助も凶悪な急ぎ働きは偽者の丹兵衛の仕業やと思うとったんや。 
尚、テレビの方では粂八と平蔵が先発し茶屋で休んでるところで喜之助に出遇うように変えとる。その喜之助を演じとったの島田正吾なんやが、ごっつええねん。

当然それから京へ行く喜之助は江戸へ移送されて来る唐丸籠の中の丹兵衛を目にするはずやが、そこは書かないところ撮らないところが粋ですわ。

物語の最後はこう書かれとります。

[粂八の脳裡からは、丹兵衛の唐丸籠を見たときの喜之助の驚愕・・・その哀しげな老顔がなかなかに消えなかった。]