深川 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

今朝は8時半に起きた。

ジム・ホールのアルバム「コンチェルト」をレコードで聴いた。

朝食は山形庄内産つや姫でご飯炊き、くめ納豆、紀州産梅干で二膳。デザートは栃木産トマト3個。
今日もサラとクリフォードのアルバム「サラ・ヴォーン・ウィズ・クリフォード・ブラウン」をレコードで繰り返し聴いた。
雨が止んだんで上野から秋葉原へ散歩。昼食は吉野家で鰻丼食うた。
帰って筋トレ30分。
夕食は長崎で獲れた鯵の干物を焼き、神奈川産大根の下ろしでご飯二膳。デザートは山形産さくらんぼ。
牛乳飲んでから風呂に一時間浸り、利益相反疑念にもめげず人材派遣会社の取締役会長竹中平蔵が会議員務める政府の産業競争力会議が素案出したが、この会議の連中は我が国民の事ほんま考えとるんやろかと思うとった。我が国がデフレ低成長から抜け出す為には、正規社員比率爆上げせなならん。労働分配率を見直さなならん。グローバルな生産体制をシビアに見直さなならん。サプライチェーンを見直さなならん。
上がって、チョコレート食べながらM夫ちゃんに、中国製スマホにはスパイウェアが仕組まれとるし、もしかすると年に何度か中国行っとるH世っちの体にも人民解放軍によってスパイウェアが埋め込まれとるかもしれんちゅう葉書認めた。
そして、東京出張の前日に一泊されるH君へ私信や。
会う前にMさんとの事をブログに載せておけ云うとった約束守りまっせ。読んだらH君も反対給付の約束守ってや。
ほなH君、待望の一文記すな。


正月終わった時、大学時代から付き合うH君から電話が来た。
偶然Mさんと遭うていろいろ話しとったら、ワテと会いたい云われたんで、喜んで仲介すると応じた云いよるねん。「彼女、子供居る云うとったけど、シングルマザーらしいで。S吉のかもしれんなあ」と、脅しともからかいともつかぬ云い方してん。そして、勝手にお膳立て済ませとった。Mさんが如月の東京出張の前日に一泊するから会え、と指示すんねん。
Mさんがワテと会いたい云うたちゅうのは怪しいがな。H君がワテが会いたがっとるとか云うてお膳立てしたに違いない。
そのMさんとは昔数ヶ月お付き合いさせていただいたが、なんとはなしにフェイドアウトしとったんや。
ワテ、如月の日曜日、会う当日朝から緊張し出し、向かう電車内ではかなり緊張しとった。{どないな話が出るもんやろ。何十年も会うてない。まさかH君が脅すような事ではないやろが・・・}
指定の店に時間ぴったりに入ると、Mさんはすぐ分かった。Mさんも同様やったようで、ワテ見るなり席立ち上がった彼女はスタイリッシュな服装しとった。
互いに挨拶はぎこちないもんやった。
ワテ同様彼女も五十路過ぎとる身やから、若かりし日の在り様とのギャップは大きいものの、仕事をしとるせいか溌剌と見えた。
「ちょっと痩せたけど元気そうでよかった」
「ちょっとどころやない、Mさんと会うとった頃からしたら10Kg減っとる。それに紅顔の美男子やった容姿も衰えとるさかい、ワテ見ても気付かんかもしれんと危惧しとった」と、軽口云うた。
それから暫く体の様子の話になったが、会話しながら{ワテと会いたくなったんやて、どないしたん}問おうか止めとこか、心の中で悶々とした挙句、云わんかった。代わりにワテの口から発せられた言葉はこうや。「Mさんは酒強かったよなあ」
「Sちゃんの方が強いよ」
「ビールのジョッキが先に空くのはMさんやったでえ」
「Sちゃんはワインが好きだった。深川不動の縁日に行ったの憶えてる?」
「あぁ、一緒に行ったなあ。縁日の深川」
「屋台が参道に立ち並んでた」
「そうそう、縁日情緒楽しめた」
「今も、縁日続いてるんだろうな」
「思い出した。永代通りを越中島の方に入った辺りには、料亭とかあって花街情緒な所があったよなあ」
「富岡八幡宮にもお参りしたよね。それから居酒屋で夕食。Sちゃんは店の人にワイン無いんですか、って聞いてた」
「よう憶えとるなあ。深川ちゅうと富岡八幡宮の門前町やからな。居酒屋かあ、永代通りやったやろか、店の名前憶えとる?」
「そこまでは記憶してないけど、Sちゃん、辰巳芸者と芸者文化を熱く語ってた」
「お江戸物の小説や文化を書いた物好きやったからな。あの時分はもっと江戸を評価すべきやと強く思うとって、聞きかじりならぬ読みかじりの知識、皆に披瀝しとったんや。ウザかったか?」
「面白い人だなぁ、って思った。他の男のコとは違うなぁ、って」
「あの頃はよう本読んどった。神保町の古本屋街のお得意様やった」
「深川へ行ったの神保町駅で待ち合わせしてだったね」
「よう憶えとるわ。それに引き換え、ワテの記憶ピンボケしとるなあ」
「神保町の話したの深川につながってるのかと思った」
「いや、ワテの記憶力は薄弱でんねん。そや、忘れぬ内に。H君からの預かり物って何やの?」
「預かり物?何も預かってないけど」
「してやられたがな」
「Hさんに仕組まれたのね」
ふたりして顔見合わせ大笑いやった。
そないな話して、夜にまた会う事になって、Mさんは翌日の仕事の準備をし、ワテは歩いて移動しつつ彼女と付き合うとった頃の出来事思い出しとった。
日が暮れ、彼女が興味示した上野の立ち飲み居酒屋二軒で飲んだが、一旦時間を置いたせいか二度目の再会ちゅう気分になったのは彼女も同様やったろう。昼間のコーヒー飲みながらの会話とは違った。彼女が服装カジュアルなもんに変えとったのもあるかもしらん。或いは冬の月明かりがそうさせたんか。
「Sちゃんが会社勤めを30年以上続けるとは思わなかった」
「猿りマンで10年はおられんと、JAZZ友の何人かにも云われとった」
本音が出始めたが、Mさんは19時に銀座で友人に会う約束があり、慌しく梯子し飲んだ。娘の話は一切出なかった。
自宅に戻ってつらつら考えた。
当時を思い返せば、ワテと彼女のお付き合いも慌しかったなあ。
若い時には自分が強くて、つまり我が強く相手の想いを受け止めきれぬ事が多かった。
つくづく実感した。ワテの記憶は、どこまでも己独りのもんや。しかし、他人のワテに係わる記憶はそれとズレとるもんや。
しかも誰しも記憶は揺れる。事実と異なる事にすり替わっとる場合も無くは無い。
そやから記憶に閉じ籠もってはあかん。
そして、思い出は大事にしとかんとあかん。煮詰まった時など思い出に復讐されるからな。