「蔵王スターワイン 白」 | 温泉と下町散歩と酒と読書のJAZZな平生

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人生の事をしみじみ噛み締め出す歳は人それぞれやろが、ワテもそないな歳になったんで記し始めました。過去を顧みると未来が覗けます。
基本、前段が日記で後段に考えを綴っとるんで、後段を読まれ何かしらの“発見”があれば嬉しゅうございます。

本日、咽喉から胃辺りにかけ詰り感があって宜しく無かったわ。
料理する気がせず、近所の弁当屋で油物入って無い物三種類買うて、それから家に閉じ篭もった。
掃除洗濯せず、今年の誓いの土曜日筋トレも30分のみ。
風呂に入ってみたが、回復せんかった。
夜になって不快感は薄らいできているが、脳の働きが鈍いので、昔のメモ書きからEみさんの事写してみるな。
Eみさんとお付き合いしとる頃は出張多かったんや。
当時東京ではあまり知られとらんワインやったが、ワテ山形県上山に気に入ったワインがあってそれを土産に買うてEみさんの住まいへ行った時のメモを今手にしとるんですわ。今頃の時節の話や。


出張後の夕刻、お土産のワインを持ちEみさんの住まいへ直行し、ワテは勝手にワイングラスを二つテーブルに用意し、炬燵に入りワインのコルク抜いた。
「このタケダワイナリーのお薦めなんや。山形でもこの「蔵王スターワイン 白」のようにコストパフォーマンスええのあんねんでえ」と話し掛けた。
「もう飲んじゃうの?」
「早う飲みたかったんや」そして、ワテは溜め息ゆっくり吐いた。
「何か云いたげ?」
「仕事のストレスで疲れた心を優しくほぐして欲しいんや」と云いながら、ワテ二つのワイングラスに薄黄色の液体を注いだんや。
「ワインに?」
「ちゃうわ、お前様にや。もうちょっち労いの言葉とか姿勢とか欲しいところや」
「S吉は仕事でストレス溜まってるように見えないょ」と、Eみさん一つのワイングラスを手にし顔に近づけた。
「そんな事ないでえ、出張終えると疲れ意識するもんな」と、ワテももう一つのグラスを手にワインを口に含んだ。「ええ辛口や」
「それ、体の疲れでしょ」と云いながら一口で乾したEみさん「うん、バッチリだね。優しい甘さと酸味も感じるぅ」
「体の疲れもあるかもしらんが、ストレスもあんねん。どや、爽やかな味やろ」
「大変なんだねぇ」と今度は分かってくれたようなご返事のEみさん、「うん、爽やか」と続けた。
そして、グラスを差し出し御代わりの催促や。
注がれたワインをまた一口で乾した彼女は、上目遣いでワテを見て嬉しそうに聞くんや。「体力の回復とストレスを解消するにはどうしたらいい?」
{始まりよった。また、美味しいもん食べに行こちゅう事や。Eみの思う壺にはまらんようにせなならん}声には出さず独りごち、咳払いしてから云うた。「そやな、出張で旨いもん食うて来たから、ワテEみにマッサージしてもらいたいなあ。優しいからしてくれるやろ」
「ずる~い。一人で美味しい物食べて来たぁ」
{やはり反応しよるのはそこのところだけや}「仏壇いや別段、一人で食べたんや無い。お客様と食べたんや。仕事の一環ですわ」と云うて、ついついニタニタしてしもた。
そのにやけた面見たEみさん、「分かった!」と云う声が大きかった。
「そうか、分かってくれたか」
「じゃ着替えなくっちゃ。お仕事、お仕事」と早口で云うて、Eみさんは隣室に着替えに行き、「S吉もすぐ出られるようにね」そう呼び掛けるねん。
「ちょい待ち。お仕事って、どこで?」
「それは接待役の君が決める事でしょ」と、隣室から顔だけ出した。
「接待役?」
意表を突かれ、ちょっちの間Eみさんの魂胆が分からんかったんや。
{読めた。そう来たか!}と気付き、「ワテはお前様と取引しとる訳やないやろ」と憮然たる面持ちでEみさんを睨んだ。
「お取引してます」と一言きっぱり云い、「今日は日曜日だし閉まってる店もあるから、着替え終わるまでに行くお店よく考えといてょ。ビジネスだから無駄な時間は削ろう」と、しゃあしゃあと云う。
「あのね、ワテ出張から戻ったばかりなの知っとるやろ、そやから」
Eみさんワテの話続いとるのに隣の部屋から遮ってこう云うた。「まだのんびり気分になってなくてよかったょ」
「ワテな、そののんびり気分になりたいんや。そやから、家庭的な料理が食べたいねん。旨いワインも封切ったばかりやろ。店は夜逃げせえへんから、今日はお前様の美味しい料理食べさせてえな」そう姿見えぬEみさんに云うた。
「ビジネスに消極的態度は禁物だょ」
「何がビジネスや。つくるの面倒になったんか?」
「お取引相手に面倒なんて云えないね。ビジネスはビジネスに相応しい場所でしなくては、という事だね。ホテルのレストランにする?日曜日でも大丈夫だし」
「そやから、ワテとお前様の間柄はビジネスや無い」
「じゃ何?」と、また顔を出した。
Eみさんの顔色見て云うた。「愛しい間柄・・やろ」と、語尾がちょっち自信無げな云い方になってしもた。
Eみさん「いいね」と云い、「だったら愛しい間柄らしく素敵なお店で美味しいものだね」と断言し、「お化粧もするからちょっち待って」と、顔を引っ込めた。
{ワテは愛しい間柄やったら、自宅で手料理やと思う}、とは云わず飲み込み諦めて、どこに行こうかと考えとった。
揉めるのうっとうしかったからな。どうせEみさんの願いが通る結末やし。上山温泉へ連れて行けちゅう話やなくて良かったと思わな。
しかし、Eみさんの美味しい物食べようとするこの執念は、仕事にも発揮されとるんやろか・・・