浙江省便り(最終回)
2025年11月18日 松本 徹
気が付けばここ浙江省平湖はすっかり冬の空気に包まれていた。6月の終わりに天
津に入り、7月この地にやって来た。連日40度を超える暑さが続き、工場では暑
さ対策としてスイカが配られた。浙江省には以前仕事をしていたタチエス(自動車
用シートメーカー)のフレーム製造工場があり、時々監査の仕事で来ていたので馴
染みのある土地ではあった。また平湖には日系企業も多くあり、近くにはニデック
の巨大な工場もあるので、時々日本人も見かける事もあった。さて今回僕がお世話
になった会社は自動車の足回りの重要部品を生産している工場で平湖地区には3工
場がある。僕はこの会社に来て直ぐに品質目標を工程内不良率で0.3%以下に設
定した。この根拠は Cpk=1.0の不良率だ。しかしこの会社では廃棄率と言う指
標を使っており最初はその理由が良く分からなかった。一般的な廃棄率の算出方法
は工程内不良で発生した製品を手直しで修正し、修正の出来なかった製品は廃棄す
るしかないので、廃棄率と言う指
標で表す。仕事を始めて廃棄率の
データを確認すると0.7%前後
でそんなに悪い数字ではないの
で、安心をしてこの0.3%を設
定した。しかし部品寸法のデータ
を取ってみると不良率が20%を超える日もあり、徐々に廃棄率のデータの怪しさ
に気付いていった。しばらくすると担当者が廃棄する部品があるので、サインして
欲しいと言って書類を持って来た。その書類の中身を確認すると60万個を超える廃棄品があった。そこで初めて廃棄率にしている理由が分かったのだ。
次に研磨設備の能力が低いのでいくらメンテしても工程内不良は目標には届かなか
った。そこで不良品の廃棄コストを計算して、新規に設備を購入した時のコストと
比較してメリットある法案を選択すると言う事になったのだ。また10月にはタイ
に行って欲しいと言われ準備を始めたのだが、まさかこの会社のオーナーが共同で
ブレーキキャリパーの生産をしているとは全く知らず 、今度タイでブレーキキャリパ
ーの生産が始まるので、監査対応に行って欲しいと言われた。始めは何のことだか
全く理解出来なかったが、なんとかこの監査は無事にクリアーする事が出来たの
だ。しかしここまでくると会社に対して不信感しかなく当初の計画は達成したと言
う事を理由に日本に戻る事にしたのだ。
そこで帰る前に上海観光を計画
し、新人と一緒に上海に行き昔の
知り合いにも会って来た。
上海では1年間サンルーフの会社
で顧問をやっていたことがあり、
その時の知り合いが今でも上海で生活している。僕の隣の女性は当時通訳をしてく
れていた何さんで今は旦那さんと一緒に特殊材料の工場を西安に立ち上げて、この
会社の副総経理をやっている。次に左の男性が陸さんで、この会社に誘った張本人
なのだ。彼とは2016年知り合い彼の紹介でサンルーフの会社で顧問をやる事に
なった。その後も付き合いは続き彼の紹介で仕事をする機会に恵まれたのだ。もともと彼がこの会社で物流部門の総監をやっており、その時私は誘われてこの会社で
仕事をする事になったのだった。しかし私がこの会社で仕事を始めた時には、彼は
既にこの会社には席が無く、違う会社で
仕事を始めていた。久しぶりに一緒に仕
事が出来ると思い楽しみにしていたのだ
が、ふたを開けたらこの有様だった。今
考えるとこの時点で既にモチベーション
は下がっていたのかもしれない。
久しぶりの上海ではパンダを生まれて初
めて見る事が出来たし、テレビ塔も対岸
から見る事が出来た。11月30日の飛
行機で羽田に戻る便を既に取ってあるので、残り少ない中国の生活を楽しみたいと
考えている。日本に戻ったら試作メーカーの浅野会長に会って、それから AI ソフト
会社の大塚さんに会って愚痴でも聞いて貰いたいと考えているところだ。
二人とも同級生なので気軽になんでも話せる仲だと僕は勝手に思い込んでいる。
日本戻ったら暫く炬燵にあたって、冷えた心を温めても貰うことにしよう。