★今日のベビメタ
本日3月19日は過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。
「♪きーつーねー、きーつーねー、わーたーしーはメーギツネー…」というアカペラが響き、ステージ上部スクリーンに、ツインテールの分け目を見せるYUIの後姿がアップになる。2014年日本武道館、2015年横アリThe Final Chapter of Trilogy、2015年新春キツネ祭り@SSA、2017年広島グリーンアリーナなど、過去のライブでの「メギツネ」登場シーンが浮かんでは消える。
10 BABYMETAL BUDOKANでは、YUIがいた頃の映像も、10年間の歴史の一場面として映し出される。あの頃があったから今がある。在籍していないからといって、YUIの姿を映さないようにする方が不自然だ。
360度の観客から見られる中央ステージで、スクリーンに隠れるように、南面して右手を後ろから顔の前に持ってくる“メギツネポーズ”をとったあと、MOAと百々子は90度回転して東向きに”狛ギツネポーズ“をとり、客席にキツネサインを突き刺す。SU-も東向きにポジションをとり、三人揃ってピョンと跳ぶと、「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と踊り出す。
それに合わせて、5000人の観客も両手を上げてジャンプする。ぼくの前にいたポニーテールのメギツネさんが、正確に振りマネして踊っているのがKawaii。
今日もぼくは2階席だが、三人の足位置や向きが、十字線のバミリに沿って正確に動いているのがわかる。360度ステージの全方位ダンス。もう八回目とはいえ、すさまじい「練度」である。
間奏部。
西のステージ脇からキツネ面をとったSU-が、「ヘイ!ブドーカーン! I want to see the big wave! 3,2,1!」と叫ぶと、東客席にスポットライトが当たり、オープニングで練習した通り、東から時計回りに2周、ビッグ・ヘドバン・ウェイヴが起こる。上部スクリーンに映るKOBAMETALもちゃんとタイミングを合わせてウェイヴをずらしていくのが凝っている。
そしてSU-の煽りは、いつもの「On the count of Three, Let‘s jump up with the FOXGOD. 」に変わり、「Are you read---y? 1,2,1,2,3,Jump!」から、5000人の大ジャンプ大会が始まった。
後半の「なめたらいかんぜよ!」では、一瞬、中央ステージの赤く染まったフロアにその文字が大写しになる。SU-の言葉と映像が一体化しているのだ。見事な演出である。
定番の流れで、照明が赤から青に変わると、9曲目「KARATE」のイントロが始まる。
この曲では三人が南西から北東にかけて斜めに両手を伸ばしたところからスタートする。その角度は完ぺきな平行線になっている、そこから、西面に正対して曲が始まる。首をかしげる角度、正拳突きのタイミングすべてがシンクロしている。SU-の両足は正確に十字線の中心点にあり、MOAと百々子の両足は南北線より30センチほど前(西側)に出るところに位置して、SU-を頂点とした逆二等辺三角形をなしている。
この逆二等辺三角形を維持したまま全体がリニアに動き、2番では、東面に正対する。
三人が倒れ込むシークエンスでは、中央ステージフロアに、過去の倒れ込み映像が映し出される。現実の三人と、映像の中のYUIを含む三人が重なる。ひたすら前進を続けるBABYMETALだが、だからこそ過去は忘れ去るべきものではなく、重層的に積み重なり、現在を形作っているものだ。だからこそ、BABYMETALは、日々強くなるのだ。
そして、辛い過去も力にして積み重なった強さをバネに、BABYMETALは再び成長の時を迎える。それがMETAL RESISTANCE最終章EPISODE Xの意味である。
その象徴が10曲目「ヘドバンギャー!!」である。
10 BABYMETAL BUDOKANのセトリを見ると、Ⅰ~ⅣとⅦ-Ⅷでは「Road of Resistance」の前の10曲目、Ⅴ~Ⅵではアンコール前の11曲目にこの曲が置かれているのがわかる。
この曲は、15歳のバンギャ少女がメタルの力でいい子ちゃんからの「成長」を表す曲である。
2014年の日本武道館公演「黒い夜」で、SU-が銅鑼を鳴らしたあと告げられたのは「世界進出」だった。
続くヨーロッパ公演では、パリでYUIが、ケルンでMOAが、それぞれ2番を歌って15歳を祝った。
2017年の広島LEGEND-S-ではSU-が、2019年のPMなごやLEGEND-M-ではMOAが、それぞれ「♪ハータチのよーるを…」と歌って祝福された。
そして、2019年9月からの史上最長の全米横断ツアー以降、LEGEND METAL GALAXY幕張メッセ公演初日を除いて、全公演でこの曲は終盤に演奏されている。
つまり、この曲こそ、今が、BABYMETALの「成長」の時であることを示しているのだ。
先走って書けば、すでに2021年度THE ONEの会員更新・新規募集が行われているから、10 BABYMETAL BUDOKANを以てBABYMETALが活動停止するなどということはない。
10年にわたったMETAL RESISTANCEというステージが終わり、新たな段階に入るのだ。
だからこそ、YUI脱退によるDarksideを抜けてアベンジャーシステムになった2019年6月から今まで、ずっと「成長」を予兆するこの曲が演奏され続けていることには大きな意味がある。
ライブレポートに戻ると、5000人の観客は、その意味をよくわかっているから、曲が始まると同時に、横降りヘドバンで三人と息を合わせ、「♪いーちごのよーるを」のところでは、「♪トイ!トイ!」と叫んだ。そして、SU-の「ヘドバン、ギャー!!!!!」からは、MOAと百々子に合わせて、両手を上げて上下に大きく動かす土下座ヘドバンを行った。天空席から見ると、日本武道館にいるすべての観客が立ち上がり、「ヘドバン!ヘドバン!…」とやっていた。ぼくの近くでは本当に床に座り込んで土下座ヘドバンをしている人もいる。
10 BABYMETAL BUDOKANに集まった5000人の観客は、BABYMETALの「成長」の瞬間を共有しようとしているのだ。
三人が、これまでの自分を脱ぎ捨てる「人形ぶり」で倒れ込むと、大歓声が上がった。
暗転。鬨の声を上げる戦国SE。赤いサーチライトに続いて、三人がBABYMETAL旗を担いで、西、東、南から登場。本編の最終曲となる「Road of Resistance」が始まった。
南にいるSU-が中央ステージに向かって、客席を分ける仕草をしても、Wall of Deathはできない。MOAが「1234!」と掛け声をかけてもモッシュはできない。
そんなことはわかっているが、観客はその都度、禁じられている大歓声を上げて心意気を示した。
シンガロングパートでのSU-の挨拶は、「この10年間、みなさんのおかげで、どんな壁も乗り越えることができました。本当にありがとう!」というものだった。
今、ぼくらが置かれている「壁」も、乗り越えられる。
現に、「緊急事態宣言」の中でも、10 BABYMETAL BUDOKANを決行した三人・神バンド・チームベビメタと、平日開催&割高なチケット代でも、こうして定員限界の5000人がSOLD OUTしているではないか。
この強固なファンベースがあれば、来るべき新章=次の10年間もBABYMETALは走り続けられる。もっとも高齢メイトにとっては、ライブに参加し続けられるかどうかわからんのだが。(´;ω;`)
SEによるアンコール「BABY、METAL、チャッチャッチャッチャッ…」のあとは、Ⅰ~Ⅳと同じく、12曲目「THE ONE」、そしてフィニッシュは13曲目「イジメ、ダメ、ゼッタイ」だった。
2日間終わってみれば、Ⅰ~Ⅳとほぼ同じセトリで、6曲目「BxMxC」と7曲目「Brand New Day」が入れ替わっただけだった。Ⅴ-Ⅵがいかに特別であったかがわかる。
これで無事8公演が終了。残すところ4月14日のⅨと、15日のⅩだけとなった。
『METAL GALAXY』からの楽曲が多く残っているから、オープニングは「FUTURE METAL」~「DADADANCE」、フィニッシュは「Shine」~「ARKADIA」が予想されるが、その他のセトリがどう展開するのかはわからないし、終演後の「キツネ様のお告げ」がどうなるのかは、まったくわからない。
だが、いずれにしても、10 BABYMETAL BUDOKANは「緊急事態宣言」下という異常な状況の中で5000人を集める大規模ライブを行うという「新たな伝説」を生み出した。
昨日、菅首相は3月21日をもって「緊急事態宣言」を解除することを決定した。
そして日本各地では例年より1週間ほど早く、桜が開花している。
そういえば、3月15日、武道館の参道でも、桜の花が数輪咲いていた。
1か月後の4月14-15日。桜はもう散っているだろうが、救世主BABYMETALの新たな門出とともに、DYSTOPIAが明ける。