エディよ永遠に | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日10月7日は、2013年、ニッポン放送「BABYMETALのオールナイトニッポン」が放送され、YUIMETALが「寝てんじゃねえ、豚野郎!」と叫び、2015年にはWorld Tour 2015 in Japan@Zepp Nagoyaが行われ、同日NTV「NEWS ZERO」でBABYMETALが報道された日DEATH。

エディ・ヴァン・ヘイレンが亡くなった。享年65歳だった。
死因は癌とのことで、X-JAPANのYOSHIKIはじめ、国内のミュージシャンからも早すぎる死を悼む声が相次いで投稿されている。
ぼくがこれを知ったのは、なんとNHKラジオ第一放送である。

ラジオ体操が終わったあとのニュースで、「…エディさんは、右手でギターの弦を押さえる“ライトハンド奏法”と呼ばれる独特の演奏法でも人気を集め、1983年に発表されたマイケル・ジャクソンさんの「今夜はビート・イット」にも参加するなど、その後のギタリストに大きな影響を与えました。」というアナウンスが聞こえてきたので「なんだなんだ」と思っていたら、いきなり「エラプション」を流し、その後の通常番組中でも「パナマ」などを流していた。こういうところが1970年代から世界のロックバンドを紹介しFMやBSでも、どんな時代にもロック番組、メタル番組をラインナップしてきたNHKらしさだと思う。
残念ながら、『虎ノ門ニュース』ではこのニュースは流れなかった。同番組で芸能関係の話が出るのは、サヨク芸能人の政治的ツイートとか、マイケル・ムーア監督のトランプ攻撃発言とかだけで、日本文化を世界に広めているBABYMETALの話題も出ない。このへんが保守系メディアの幅の狭さである。
国内外の著名ミュージシャンが発言しているので、ぼくの文章など屁のツッパリにもならないが、BABYMETALにも多大な影響を与えたエディの、何がどう凄かったのかを説明したい。


エディ・ヴァン・ヘイレンは、ジミ・ヘンドリクス、リッチー・ブラックモアと並ぶ、ロック史、エレキギター演奏史における革新者であり、ロックギタリストで彼が編み出した奏法の影響を受けていない者はいない。
当ブログの趣旨に照らしてまず挙げられるのは、BABYMETALのギターサウンドは、エディ・ヴァン・ヘイレンのサウンドであるということだ。
エディ・ヴァン・ヘイレンといえば、シャーベルのストラトキャスターモデルを改造し、ハムバッカー・ピックアップやフロイドローズ・トレモロユニットを取り付けた「フランケンシュタイン」と呼ばれるギターがイメージされるが、そのサウンドはPeavey 社と共同開発した5150というアンプをフルアップさせ、そこにMXR製のフェイザーや、320mSec.という深いディレイをかけて創られている。
HRギタリスト御用達のマーシャル・アンプとPeavey 5150との違いは、プリアンプ管を5本も使用していることで、これにより生まれる、倍音が多く含まれた、深く、美しいディストーションサウンドは、「ブラウンサウンド」と称される。


初期5150モデルは、プリアンプ管をオーバードライブさせるのでノイズが多かったため、エディのライブ使用アンプはそこを改善したPeavey 5150Ⅱ、5050Ⅲへと発展していくが、1990年代にエディとPeaveyの契約が切れた後はMusic ManによるシグネチャーモデルのEVH 5150アンプになる。一方、Peaveyでは5150という名称が使えないので、5150の回路は6505という型番に変わって現在も発売されている。
神バンドのギタリストだった藤岡幹大神は、BABYMETALのツアーに帯同する際は、ドイツ製のプロファイリングアンプであるKemperを使用していたが、BABYMETAL楽曲のリフやバッキングを演奏する際のRythmと名づけられたモデリングは、アンプシミュレーターがPeavey 5150 Mk1、キャビネットシミュレーターがHesu 4×2で、もろにPeavey 5150コンボアンプ=初期エディ・ヴァン・ヘイレンのサウンドをシミュレートしていた。
もちろん、藤岡氏は、曲によっては、マーシャルやENGL-リッチーブラックモアモデル、クリーン・トーンではH&Kを使ったサウンドも使っているが、バッキングのベースになっているのはPeavy 5150MK1である。

ぼくらがライブで聴いていた小神様のギターの音は、エディのサウンドだったのだ。

そして、藤岡氏の死後、その設定はKemperや使用ギターごと大村孝佳神に受け継がれている。
NHKニュースが言っていたように、エディがギター史上に残した最大の遺産は、ライトハンド奏法、別名タッピング奏法である。
クラシックギターやアコースティックギターでは、弦の音がそれほど長く響き続けない(サステインが少ない)のでほぼ不可能だが、エレキギター、特に大音量のディストーションサウンドでは音が伸びるので、弦を弾いた後、右手でフレットを押さえると、音程を変えることができる。
例えば、2弦10フレットを左手の人差し指で押さえ、右手で弦を弾くと同時に左手薬指で13フレットを強く押さえ(ハンマーリングオン)、次に右手の人差し指で17フレットを押さえつつ、ひっかけるように弾く(タッピング)と、Amの三連符になる。それを4回繰り返し、今度は同じポジションのまま、次は右手の人差し指を18フレットにずらして同じように弾くと、Fの三連符になる。ポジションを変えていくと、バッハ的な音階の演奏ができる。
1970年代のリッチー・ブラックモアの速弾きは、あくまでも正確なピッキングによるものであり、アラン・ホールズワースのように、ピッキングしないで左手の指の動きだけで音程を変えるレガート奏法では音の迫力に欠ける。

だが、エディは、右手のタッピングを使うことによって、音域・速度とも異次元の演奏を披露したのである。その真骨頂が1stアルバム2曲目の「エラプション」である。
ぼくのような70年代リッチー小僧は、エディの新奏法に驚愕し、動画などなかったから、ギター雑誌を見ながら、明けても暮れてもそのテクニックをマスターしようとした。

そして現在でもメタルのソロにはたいていタッピングが用いられている。
BABYMETALでいえば、「紅月-アカツキ-」のツインギターソロには、ふんだんにタッピングが出てくるし、先日ご紹介したIRON BUNNYのKotonoによる「Lightning Speed」にも使われている。


つまり、タッピングはメタルギタリストの必修科目なのである。
もし、エディ・ヴァン・ヘイレンがいなかったら、メタルギターもなかったかもしれない。それほど、タッピングはギター奏法上の革命だったのである。
さらにもうひとつ、エディ・ヴァン・ヘイレンがギター史にもたらした革新は、「エディ・チューニング」である。
和音を美しく響かせるには、あるKeyのルート音に対する純正律でチューニングする必要があるのだが、そうすると、他のKeyになったとき、オンチに聴こえてしまう。

歌声やフレットのない楽器なら問題ないが、ピアノやギターのようにあらかじめチューニングしておく楽器では、どんなKeyでも対応できるように、音の響きを若干犠牲にしても、1オクターブを12等分した平均律でチューニングされるのが普通だ。
クリーントーンでは、ほとんど聴感上問題はないのだが、フルアップしたアンプでディストーションサウンドを鳴らすと、どうしても和音が濁ってしまう。


そこで、エディは特定の曲に合わせた純正律的なチューニングを編み出した。
初期ヴァン・ヘイレンでは、エディのチューニングは半音下げにしているのだが、3弦F#に対して2弦B♭をわずかに下げて、ディストーションサウンドでも音が濁らないようにチューニングする。1弦E♭も同じように2弦に合わせて平均律よりわずかに低くする。

こうすると、4弦、3弦、2弦を同じフレットで弾くAポジションの多い曲だと、音が気持ちよく調和して聴こえるのだ。実際には、チューナーのAを440Hzではなく445Hzにするとか、1弦・2弦はそのままに、3弦・4弦をずらすとか、いろいろなやり方があるのだが、ともかく、こういう純正律に近いチューニングをすることで、例えば「パナマ」の

E♭→E♭sus4→B♭→E♭→E♭sus4→B♭→D♭→D♭sus4→A♭(アーミング)

という最初のリフが、滅茶苦茶気持ちよく鳴る。
逆に言えば、エディ・チューニングとPeavy 5150+320mSecディレイでないと、「あの音」は出せない。
つまり、ピックアップ、トレモロユニット、アンプ、エフェクター、チューニングに至るまで、徹底的に「音」にこだわったのが、エディ・ヴァン・ヘイレンだった。
大音量のマーシャル・アンプを使い、いわばナチュラルに歪んだ音で「ロックの音」を創出したジミヘンは偉大だが、怨念のこもった荒々しいペンタトニックスケールとギター破壊という激しさが主流だったハードロックギターに、深いディストーションサウンドなのに豊かな倍音が効いた美しいサウンド、タッピングによる画期的な奏法を広めたのが、エディ・ヴァン・ヘイレンの偉大さである。
ヴァン・ヘイレンのデビューアルバム『Van Halen(邦題:炎の導火線)』(ワーナーブラザース)のリリースは1978年だから、ハードロックの完成型ともいえるし、LAメタルの始祖ともいえるが、キンクスのカバー「ユー・リアリー・ガット・ミー」「ジャンプ」「パナマ」などは、多くの日本人もきっと一度は聴いたことがあるだろう。
今頃は、メタル銀河で藤岡幹大神とセッションしているかもしれない。
ご冥福をお祈りいたします。