10年のキセキ(97) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日8月5日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

2019年8月9日、10月11日にリリースされる3rdアルバム『METAL GALAXY』の収録楽曲が発表された。
これで、ニューアルバムの日本盤コンプリートエディションが二枚組であり、それまで「Tattoo」と呼ばれてきた曲が「Kagerou」であり、横アリ以来、ライブ中盤に置かれていたモノクロ動画が「FUTURE METAL」という名前でアルバム冒頭に来ること、二枚目の終盤は「Shine」~「Arkadia」になることなどがわかった。
さらに、まだ披露されていない「DADADANCE」には松本孝弘(B’z)、「Distortion」にはアリッサ・ホワイト・グラズ(Arch Enemy)、「Oh! MAJINAI」にはヨアキム・ブローデン(SABATON)、「Brand New Day」には若手マスロックの雄ポリフィアの二人のギタリストが客演することもわかった。
最もヘヴィメタルらしいタイトルと思われたのは「Night Night Burn」で、これがバブル期サンバ調の「ないないばあ」だとは予想できなかった。「BxMxC」とか「↑↓←→BBAB」とか、読み方さえわからないタイトルの曲もあり、否応なく期待感が盛り上がった。
翌日8月10日には、11月23日に行われる香港Clockenflapフェス@Central HarbourfrontにBABYMETALが出演することが発表された。だがこれには正直「大丈夫か?」と思った。
SU-の生まれた1997年にイギリスから中国に返還された香港では、2047年までの50年間、「一国二制度」として、従来の自由と民主主義の体制が継続されるはずだった。ところが2014年に、学校で中国共産党の正当性を教える「愛国カリキュラム」の導入を機に若者を中心とした「雨傘デモ」が起こり、民主化を求める言論人が行方不明になるなど、「約束」を反故にする中国共産党政権との軋轢が強まっていた。
2019年6月、香港政庁が、中国共産党政権の指名する「犯罪者」を無条件で本土へ引き渡す「逃亡犯条例」の制定を強行しようとしたことに対して、民主化を求める若者を中心に市民が立ち上がって街頭デモを繰り広げ、6月22日には200万人規模に達した。
8月に入ると、中国政府の意向を受けた香港警察が街頭デモを禁じたため、民主化を求める若者たちは、SNSで情報を発信し、フラッシュモブのように「願帰栄光香港」という歌を歌いながら、ショッピングモールや地下鉄駅の周辺に集まる散発的なものになった。
だが、警察官が至近距離の若者に発砲する事件も起こり、そのことへの抗議デモが大きくなると機動警察隊が容赦なく催涙弾を発射し、「市街戦」の様相を呈する状況になった。新学期が始まると、若者たちの立てこもる大学が次々に包囲され、多くの学生が逮捕された。
2019年11月23日に予定されていたClockenflapフェスでは、BABYMETALがヘッドライナーだったが、こうした事情を考慮して、結局、中止となってしまった。
2020年1月に行われた台湾の総統選挙は、当初親中国派の国民党韓国瑜高雄市長が優勢だったが、香港の政情から中国共産党政権の「一国二制度」は信用できないとの国民感情が働き、現状維持=独立志向の民進党の蔡英文総統が圧勝した。
ChthoniC(閃靈樂團)のフレディ・リムも台湾独立派の政治家であり、蔡英文総統の支援集会で演奏した。もし4月3日にBABYMETALの台北公演が実現していれば、2014年以来の再会となっていた可能性もある。
2020年7月1日、中国全人代で「香港国家安全維持法」が可決、即日施行された。これによって、外国人であっても香港の独立を公然と支持したり、中国共産党の批判を行ったりした者は逮捕され、中国本土へ送られることになった。
表現の自由が失われ、外国人観光客の安全さえ保証されなくなった以上、香港ではロックフェスなどできなくなった。
2019年、アベンジャーシステムによる「新三人組」体制となった新生BABYMETALは、台湾・超犀利趴10を皮切りに、香港・Clockenflapフェス、そして10月13日に発表された2020年3月からのタイ・マレーシア・インドネシア・台湾・フィリピンPULP SUMMER SLAMまでのアジアツアーで、通常の「アイドル」とは真逆に、欧米からアジアへと歩みを広げ、「メタルで世界をひとつ」にしようとしていた。
だが、経済力と武力を背景に、情報を統制し、人権を無視し、多様な価値観や自由な批判を許さない中国共産党の強権による「国と国との分断」「人と人との分断」は、武漢ウイルス禍が発生する前から起こっていたのである。
 

超犀利趴10から12日後、BABYMETALは2年ぶりにサマーソニック2019のステージに立った。
2020年東京オリンピックが予定されていたので、サマソニは休止となり、その代わりサマソニ2019は3日間開催となった。BABYMETALはRed Hot Chili Peppersがヘッドライナー、日本人アーティストとしてはADWIMPSがセカンドヘッドライナーを務めるチームに入り、8月16日(金)大阪、8月17日(土)東京というスケジュールだった。出番は大阪・東京ともMountain Stageのトリ。
大阪会場では、15日夜半から台風10号が接近し強烈な風雨となったため、Ocean StageとMountain Stageの14:00台までのステージはキャンセルとなった。15:00以降は予定時間を変更して実施され、BABYMETALの出演時間も18:50から19:20に変更された。


セットリストは大阪・幕張共通で、以下の通り。
<8月17日-18日サマーソニック2019セットリスト>
1.    メギツネ
2.    PAPAYA!!
3.    ギミチョコ!!
4.    FUTURE METAL
5.    Elevator Girl
6.    Shanti Shanti Shanti
7.    ヤバッ!
8.    Distortion
9.    KARATE
10.    ヘドバンギャー!!!
11.    Road of Resistance
神バンド:大村孝佳(G)、BOH(B)、青山秀樹(D)、Leda(G)
アベンジャー:鞘師里保
ぼくは8月17日の幕張メッセだけ参加した。当時は脊柱管狭窄症で、右太ももに矢が刺さっているような痛みがあったため、移動は極力避け、LovebitesもBand-MaidもTash Sultanaもあきらめ、朝からMoutain Stageのプラチナエリアに陣取った。
18:20、Bring Me The Horizonが終了。
このままBABYMETAL待ちの観客が多いのだろうと思っていたが、半分くらいが出ていった。入れ替わりに、黒いベビメタTシャツを着た観客が続々と入ってくる。だが、メイトらしき観客は全体の3割くらい。入場制限がかかる勢いはない。実際、Mountain Stageで最も客が入ったのはZEBRAHEADで、ミキサータワーの後ろまでパンパンだったが、BABYMETALは、ラスト近くでもタワーより後ろは空きがあった。
定刻19:00。「♪キーツーネーキーツネー、私はメーギツネー…」というおなじみのSEに続いて、「メギツネ」のリフが繰り返される中、「紙芝居」が始まった。
―引用―
A Long time ago, in a METAL GALAXY far, far away…
SUMMER SONIC またの名を”天下一メタル武道会”。鋼鉄の海と山を舞台にメタルの神々が集う夏の祭典。
海へと山へと右往左往する勇者(メタラー)たちの人の波は巨大なWALL OF DEATH となって夏休みの若者たちを巻き込んでいくのだ。
やさしいキツネ様はこっそり教えてあげるのだ。前前前世はこっちじゃないぞ?
諸君、首の準備はできているか?
もう一度聞く。首の準備はできているか?
祝20周年!”天下一メタル武道会”の幕開けだ!
―引用終わり―
「前前前世」は、もちろんマリンスタジアムで同時刻に重なったRADWIMPSを指し、2013年に「リンキンパークはこっちじゃないぞ」とからかったことのセルフ・パロディである。
ちなみに、当日のRADWIMPSのセトリには「前前前世」は入っていなかったとのこと。
「紙芝居」が終わると、三人が登場。キツネ面はかぶっておらず、リフの終わりに「メギツネ」ポーズをしたところで、和楽器が「♪カラリンコン」と入り、MOAとアベンジャーが狛キツネポーズをとる。
サマソニのアベンジャーは鞘師里保だった。


二人の背後に立ち、客席をくまなく見渡すSU-METALの目つきが徐々に鋭くなっていく。イントロが終わるまでの短い間に、エネルギーを全開にしていくのだ。「♪キィーン」というピッキング・ハーモニクスを合図に、三人は平行移動ダンス・シークエンスに入っていく。MOAは微笑みながら、「♪ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」とよく通る声でScreamする。鞘師里保の表情はやや硬いが、ダイナミックな動きでSU-、MOAとぴったりシンクロしている。
「♪古の乙女たちよかりそめの夢に歌う…」と歌い出したSU-の声はよく伸び、ピッチも正確だった。
間奏部のSU-の煽りは、夏フェスらしく日本語で、「ヘイ、サマーソニック!」「もっと声出して!」というもの。
煽りの基本は英語だが、ドイツならドイツ語、フランスならフランス語、台湾なら中国語。ライブ始めの挨拶は各国語に対応するのがワールドクラスのアーティストの証だが、日本では日本語で煽ってくれるのが嬉しい。
客席は「ウォー!!!」と応え、SU-の「1、2、123、Jump!」でジャンプ大会に突入した。
オープニングから汗だくになってしまったが、暗転すると間髪を入れず「Give Me…ギリギリギリ…」というSE。
2曲目「ギミチョコ!!」である。
SU-、MOA、鞘師里保の「ギミチョコ!!」は横アリ初日、グラストンベリー、ロンドン公演、PMなごや初日と数を重ね、抜群の安定感になってきた。藤平華乃、岡崎百々子はまだ出演機会が少なく、この頃はどうしてもSU-、MOA+後輩という感じだったが、鞘師里保のキャリアやオーラはSU-、MOAと「対等」であり、「三人組」としてのダンスの表現力が増強されたように見えた。
ギターソロは上手のLada神によるもので、音源通りのフレージングだったが、ワーミー部分はより激しさが増していた。超犀利趴10と同様、MOAと鞘師里保は上手・下手の端まで駆けていって、ニコニコ顔で手拍子を促したあと、全力疾走でステージ中央に駆け戻った。
3曲目は「PA PA YA!!」。イントロがかかった瞬間、ステージ前面に設置された8本のパイロがスモークを噴出し、同時に観客が「パッパパパヤー!」と叫んだ。
歌に入る前、SU-は「んJump!んJump!んJump!…」と煽る。
フェスなので、初見の観客も多かったと思うが、ベビメタTシャツを着たメイトがタオルを振り、絶え間なく「パッパパパヤー!」と合いの手を入れるので、場内は熱帯ジャングルのお祭りと化した。
サビでは、ライブ演奏機会が増えてPAのマイク音量調整タイミングがよくなり、SU-の男前巻き舌と、盆踊りしながらScreamするMOAのKawaii声のコントラストがよく聴き取れるようになった。
SU-「♪まつrrりだ!まつrrりだ!…」MOA「♪祭りだ!祭りだ!」SU-「♪Spicy Summer セゾン」グロウル&観客「パッパヤー!」
SU-「♪騒げ!」MOA「♪Hey!」SU-「♪騒げ!」MOA「♪Hey!」SU-「♪騒げ」MOA「Yo!」SU-「♪PAPAYA BOYS」というように。
MOAはLegend-M-を経ても「Scream & Dance」のままだったが、踊りながらSU-とコントラストをとる形で、Screamというより「歌割り」に加わる度合いが増えた。既存曲でも、例えば「ギミチョコ!!」終盤は、ほとんどSU-とユニゾンで歌っている。鞘師里保はもちろん、藤平華乃も岡崎百々子も歌えるダンサーである。だが、新生BABYMETALでは、SU-がリードボーカル、MOAがScream(≒コーラス)のカタチで歌詞世界を表現し、ダンサーはダンスに徹するという役割分担になっている。その絶妙なアレンジがはっきりしてきた。
4曲目は、曲名が判明した「FUTURE METAL」だった。屋内とはいえ、猛暑の中、激しいダンス曲が3曲続いたので、インターバルをとった感じ。だが、この映像は、かつてロブ・ハルフォードが「ここにメタルの未来がある」と言ったLegendを引き継ぎ、和風な「キツネ様」の神秘感を近未来的なイメージに変換し、新生BABYMETALの新たなアイコンとして訴求する役割を果たしていると感じる。
5曲目は、「Elevator Girl」。
このブログでは何度も触れているが、この曲は新生BABYMETALの「ド・キ・ド・キ☆モーニング」である。
グラストンベリーフェス出演後、『NME』のインタビューで、SU-は「Elevator Girl」についてこう語っている。
―引用―
私たちは元々「キュート」と「メタル」の融合をしていたのですが、小さい頃にやっていた「可愛い」と「メタル」だったものが大人になった「可愛い」と「メタル」にどんどん変化していって。「Elevator Girl」はまさしくその象徴じゃないかなと思っていて。これから大人になったけど「可愛いメタル」というものを見せていくという、新たな合図というか、そういう音楽になっているんじゃないかと思います。
新しいアルバムではいろいろな挑戦をしていて、「Elevator Girl」はさっき言った通り「大人可愛いメタル」という感じなんですけど、私たちのアルバムはオモチャ箱のようにたくさん、いろんな要素が入っているので、その中の大切な一つの要素になると思っています。
―引用終わり―
かつて「ド・キ・ド・キ☆モーニング」はKawaii Metalの象徴だったが、「Elevator Girl」では、大人になったBABYMETALが社会の荒波に揉まれながらも、Kawaiく奮闘する姿を描いている。だから、スクリーンにはステージ上のダンス映像に炎のようなエレベーターの枠が上下するCGが合成されて表現されている。
だが、本当の闘いの現場、猛暑の中、踊り続けなければならないステージそのものである。SU-もMOAも汗びっしょりで、踊りながら、黒髪がうなじやおでこに張りつくのを振り払っていた。
その熱気は、さらに6曲目の「Shanti Shanti Shanti」で加速した。
シタールの音色とタブラの響き。正面スクリーンに黄色の万華鏡映像。幕張メッセMountain Stageの時空は一気に灼熱のインドへと飛び、カレーの匂いが漂ってくる。
「♪Shanti Shanti Shanti…生ける者たちのプラナ…」という出だしは、MOA、鞘師里保の振りもしなやかで優雅だが、「♪…舞い上がれよカルマ」からは、一気に2/2拍子のヘヴィなボリウッドメタルになる。「合いの手」はないが、観客はヘドバン、手拍子など、思い思いに曲にノっていく。途中の三拍子になるところも、ヘドバンは続けれらる。単なるインド風ポップではなく、こういう変拍子をブッ込んでくるところが、Djentやマスロックをレパートリーとする神バンドを擁するBABYMETALの真骨頂である。正直言って、こういう高度な音楽性に基づくエンターテインメントをやれるバンドは、今日のMountain Stageには一組もいなかった。それは次の7曲目「ヤバッ!!」でより鮮明になる。
「ヤバッ!!」のリズムは「♪んチャんチャんチャんチャ…」というスカのリズムである。
サマソニ2019幕張2日目のMountain Stageに出演したTHE INTERRUPTERSやZEBRAHEADは、70年代後半~80年代中盤のパンク、スカ、ダブといったニューウェーヴ音楽シーンに影響を受けたバンドである。そこからハードコア~オルタナティブロック~エモ、スクリーモへと向かう流れと、NWOBHM~グラムメタル~スラッシュメタル~デスメタルへと向かう流れに分化し、さらにそれらがラップやヒップホップ、シアトリカルな表現ともクロスオーバーして現在のラウド系音楽の多様化、細分化が起こっていくのだが、ここ数年、海外のフェスで人気を集める若いバンドは、あえて複雑なことをやらずに、シンプルな楽曲構成のオリジナルパンクに回帰する傾向がある。
だが、BABYMETALはそれとは真逆に、メタルをベースとして、卓越した演奏技術と幅広い音楽性を持ち、表現としてのダンスをも導入したアーティストである。「Fusion of Heavy Metal and J-POP」というキャッチコピーは、「Heavy Metal」が様々な音楽に分化していることと、「J-POP」が、世界のあらゆる音楽の寄せ集めであることを考えれば、実のところ、とんでもなく音楽的に高度なことだとわかるはずだ。
もちろん、それが好みかどうかは別だが、少なくともBABYMETALは簡単にコピーできるバンドではない。
スカのリズムを持つ「ヤバッ!!」も、冒頭に「エリーゼのために」が1フレーズ引用されており、ブレイクではシンプルなスカバンドにはあり得ないヘヴィメタルのリフが顔を出し、グロウルの「トイ!」と、「ピッポパッポピッポパッポピー…」というわけのわからないScreamも入っている。
そして、何よりこの楽曲を歌い踊るのは、Kawaii日本人アイドルであり、キメはMOAとアベンジャーが口に手を当ててKawaiく驚いてみせる「♪ヤバッ」ポーズである。
同じスカのリズムの楽曲でも、BABYMETALはそれを演奏する技術だけでなく、その曲調で何を表現するかというところで勝負している。それがよくわかったのが、サマソニ2019だった。
8曲目の「Distortion」は、いつものドラムス×Djent風ギターではなく、エレクトロニカ風のインターリュードから始まった。
「♪ウォーウォーウォーウォー…」でコーラスが高まると、マーチ風のドラムスに合わせたダンスが始まり、激しいイントロに入った。ぼくのいたプラチナエリアから会場後方を見ると「メギツネ」や「ギミチョコ!!」に熱狂していた若い観客が「静観」しているようだった。きっと、2018年のDarksideのことをあまり知らない観客が多いのだろう。東京ドーム公演があった2016年にBABYMETALを好きになった子たちが、「三人目」が入ったのを知って戻ってきたのかもしれない。
間奏部、そんなことおかまいなしに、SU-が「Sing!」と煽ると、メイトさんが「♪ウォーウォーウォーウォー」とシンガロングすると、やがてそれが客席全体に広がっていく。観ればわかる。BABYMETALはどんな曲でもカッコいいのだ。
青い照明の中、7曲目「KARATE」のイントロが始まる。三人の斜めに伸ばした腕の角度は見事にそろっている。鞘師里保が入ると、本当に振り付けの完成度が高くなる。
「KARATE」なら、Darksideを知らない観客も安心してノレる。「オイ!オイ!」というメイトの合いの手に、みんな拳を突き上げてノっている。
間奏部。今日は、グラストンベリーのようなハミング煽りはなく、SU-がMOA、そして鞘師里保を助け起こす「黙劇」である。三人が拳を突き上げて前進し、SU-が「Everybody、Jump!」と叫ぶと、客席は大ジャンプ大会と化した。
9曲目は「ヘドバンギャー!!」だった。
前回2017年のサマソニではSU-が「♪イーチゴのよーるを…」と歌い、それがLegend-S-の「♪ハータチのよーるを…」の伏線になった。
PMなごやでは、MOAが「♪ハータチのよーるを…」と歌ったが、超犀利趴10ではセトリに入らなかった。
1か月前に20歳になったMOAがサマソニでも「♪ハータチのよーるを…」と歌ったらウケただろう。
サマソニ20周年なのでSU-が「♪(サマソニ)ハータチのよーるを…」と歌ってもよかった。
だが、実際には、SU-が普通に「♪イーチゴのよーるを…」と歌ったのだった。
2019年9月からの全米横断ツアーと2020年2月からの汎ヨーロッパツアーでは、フェス以外の全公演で「ヘドバンギャー!!!」がセトリに入った。要するにこの曲はMOAの20歳の聖誕を祝うだけでなく、BABYMETALの新たな「成長」を象徴する曲だったのだ。
間奏部。MOAと鞘師里保がボンベを持って、ニコニコしながら「いくよー!」と客席最前列へ向けて炭酸ガスをぶちまけた。「紙芝居」に続き、2013年のRainbow Stageの再現である。
フィニッシュは「Road of Resistance」。
ステージ上にすっくと立った三人は、もちろんBABYMETAL旗を担いでいる。その角度は見事にそろっていた。


いつものようにSU-が場内を分ける仕草をすると、「Wall Of Death!Wall Of Death!」の声がかかり、ピット数か所でサークルが形成された。MOAの「1234!」の掛け声で、曲が始まる瞬間、SU-が「ツッコメー!」と煽り、観客は歓声をあげて高速サークルモッシュを敢行した。
シンガロングパートでは「♪ウォーウォーウォーウォー…」の大合唱の中、SU-が客席にマイクを向け、上手では、MOAが観客と目で会話していた。鞘師里保も下手ステージの端でニコニコしながらこぶしを振り上げていた。
「♪命の続く限り決して背を向けたりはしない…」と歌うSU-は気高さに満ち、MOAと鞘師里保も自信に満ちた表情で踊り続けた。「今日が明日を作るんだ、そうぼくらの未来On the Way」のあとのSU-の叫び声は「かかってこいやー!」だった。その直後、「♪進め!答えはココにある」のとき、アップになったのはMOA。ステージを指さし、すべての答えが観客の心を動かすライブにあることを、全身で決意表明していた。
9月からの全米横断ツアーは、BABYMETAL史上最長であり、『METAL GALAXY』のセールスツアーでもある。
その戦いに臨むBABYMETALの気概を感じたサマソニ2019だった。
(つづく)