10年のキセキ(92) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日7月29日は、2015年、APOCRYPHA-Only the Fox God Knows@TSUTAYA O-EASTが行われた日DEATH。

2019年7月2日、BABYMETALは2014年11月のBack to US/UKツアー以来となるロンドン、O2 Academy Brixtonのステージに立った。
オープニングアクトを務めたのは、女性メインボーカルのエリーゼ・リード、男性グロウルのヘンリク・エングルンド、男性シャウトのニルス・モーリンの三人ボーカル体制で、超絶ギタリスト&キーボディストのオロフ・モルクの未来都市を駆け抜けるような世界観を奏でるスウェーデンのメタルバンドAMARANTHEだった。
メタルコア~メロデス~パワーメタルといった音楽性で、ぼくの好きなバンドのひとつ。
2019年3月のDownload Japanで来日した際、終演後の握手&サイン会で、エリーゼとちょっとだけお話できたが、そのときにはまだBABYMETALロンドン公演のOAになることは発表されていなかった。
BABYMETALはイギリスを「第二の故郷」と位置づけているが、イギリス人にとっても、BABYMETALは日本で考える以上に人気バンドである。欧米デビューした2014年のBack to UKツアーのライブ会場となったAcademy Brixtonは収容定員4,900名、『METAL RESISTANCE』のチャートランキングは、日本人最高位で、リリース直後の2016年のWembley Arenaは12,500人をSOLDOUTした。
ロックフェスでは、Sonisphere 2014は6万人、2015年のReading & Leedsフェスは8万人、Download 2016は6万人、2018もセカンドステージとしては過去最多の観客を動員した。
Kerrang! Awards 2016の「Best Live Band」の称号も手にしている。その意味で、2011年デビューの中堅メタルバンドAMANRANTHEをOAに起用するのはちっとも不自然ではなかった。
イギリスでこれほどまでBABYMETALが人気アーティストになったのは、音楽的な斬新さやオリジナリティが突出していたからだと思う。
前述したように、AMARANTHEは男女三人ボーカルに特徴があるが、バックバンドはギター+ベース+ドラムスという構成で、ライブではキーボード/シンセサイザーがマニピュレーションされる。楽曲のメロディーラインやリズムはプログレ的で壮大な構成を持っているが、歌詞は英語であり、全体的にはオーソドックスなパワーメタルである。
しかし、BABYMETALは、日本語で歌う日本人女性リードボーカル+二人のダンサーというフロントに大きな特徴があるだけでなく、楽曲はデスメタル、パワーメタル、ハードコア、プログレメタル、フォークメタル、Djentといった様々なメタルのジャンルを網羅し、和楽器&和メロディ(「メギツネ」)や、童謡(「いいね!」のコガネムシ、「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」のきらきら星)、ナンセンスソング的要素(「ド・キ・ド・キ☆モーニング」「4の歌」「ギミチョコ!!」「あわ玉フィーバー」)、ラップ(「いいね!」「おねだり大作戦」「GJ!」「Sis. Anger」)など、さまざまな要素がちりばめられ、「まさに音の宝石箱や~」(Copyright ©by彦摩呂)の様相を呈している。
しかもそこに「Fox God=キツネ様=稲荷神信仰」という、欧米人にとってはキリスト教の悪魔でも仏教でもない未知のギミックが付加され、Kawaii三人の少女がそれを演じ、白塗りの神バンドが超絶技巧でバッキングすることで、ジャパニメーション的な「魔法少女」の神秘性をも体現していた。
2018年5月にアメリカで発現したDarkside路線は、YUIMETAL欠場~脱退という危機がベースにあったが、音楽的には「In the Name of」、「Distortion」、「Starlight」のような曲でDjent要素が強まり、ブルージィなSU-METALソロの「Kagerou」や、ドラマティックなプログレ色が強まった「THE ONE Unfinished Ver.」は、大人びたメイクやコスチュームと相まって、ある意味メタルバンドとしての「正常進化」に見えた。
しかし、「紅月-アカツキ-」でのサポートダンサー二人の殺陣、ナンセンスソングの系譜を引き継ぎつつ、Djentなリフを重ね、SU-、MOAを含めた四人が見事なフォーメーションダンスで世界観を表現する「Elevator Girl」などは、「メタルとダンスの融合」であるBABYMETALらしさも残していた。
だから、2019年6月の横浜アリーナで再びLight Sideの「三人組」に戻り、悪夢からの「AWAKEN」を宣言したBABYMETALが、USツアーと『METAL GALAXY』のリリースに先立って、強行スケジュールでロンドン公演を行い、ファンにいち早くそれをお披露目するのは、「第二の故郷」への強い感謝の表れともいえた。
セットリストは以下のとおり。
1.    メギツネ
2.    Elevator Girl
3.    Shanti Shanti Shanti
4.    Distortion
5.    Starlight
6.    シンコペーション
7.    PAPAYA!!
8.    ギミチョコ!!
9.    KARATE
10.    THE ONE Unfinished Ver.
11.    Road of Resistance
アベンジャー:鞘師里保
神バンド:大村孝佳(G)、BOH(B)、青山秀樹(D)、Leda(G)
「メギツネ」が1曲目に来るのは、Sonisphere以来変わらぬBABYMETALらしさで、観客を一気に熱狂させる効果を持っていた。2曲目の「Elevator Girl」はDownload 2018ではセトリに入っていなかったから、イギリスでは、先日のグラストンベリーに続いて2度目となる。3曲目の「Shanti Shanti Shanti」も同じ。


インドはイギリスの植民地だったから、インド音楽との向き合い方は、THE BEATLES(「Norwegian Wood」「Love You To」「Within You, Without You」)や、Led Zeppelin(「Kashmir」)など、イギリスのロックバンドにとって実は大きな課題である。BABYMETALは、そのブリティッシュ・ロックの伝統に則り、2019年にこの曲を発表した。それも、三人がインド舞踊を取り入れ、ヘヴィなリフで二拍子→三拍子と変わってもヘドバンしつづけられるメタル楽曲として。この音楽的な生真面目さこそ、BABYMETALの真骨頂だとぼくは思う。
エスニックテイストの商業利用を「資本主義による文化的盗用」だとする議論は承知しているが、これについては後日書く。
4曲目の「Distortion」はDownload 2018でも披露され、観客の大合唱&サークルモッシュを生んだが、そのときのコスチューム&メイクとは全く違い、「新三人組」が希望に満ちて前進するアンセムとなった。
5曲目の「Starlight」は、イギリス初披露。
Richardさんもそうだが、BABYMETALを好きになったイギリス人メイトさんの多くが、ジェフ・ベックやアラン・ホールズワースに影響を受けて超絶ギタリストになった藤岡神をリスペクトしていた。その意味で、藤岡神に捧げられた「Starlight」は多くのイギリス人観客の感動を呼んだ。
6曲目「シンコペーション」もイギリス初披露。『METAL RESISTANCE』EU版には収録されていないので、新曲だと思った観客もいたようだ。
7曲目「PAPAYA!!」も、イギリスではグラストンベリーに続いて2度目。「メギツネ」は和風のお祭りだが、この曲は、より熱帯アジア的な豊饒さに満ちたお祭りメタルであり、タオルの振り回しこそまだ定着していないものの、熱狂的なサマーチューンとして、Darksideとは真逆なBABYMETALの姿をイギリス人観客に見せつけた。
8曲目「ギミチョコ!!」、9曲目「KARATE」への流れは、以前のライブでも、グラストンベリーでもおなじみだが、10曲目「THE ONE」は、イギリスでは2016年4月のWembley以来で、静かなピアノのアルペジオから始まるUnfinished Ver.は、初披露だった。


2014年のSonisphere、2015年のReading & Leedsとコンスタントにファンベースを広げ、2016年には4月のWembley Arena、12月のレッチリ・サポートツアーでイギリス各地を回ったが、2017年はヨーロッパでの公演はなく、次は2018年のDownloadと飛び飛びになってしまった。そうしたイギリスでの来し方を、一段と成長したSU-が、胸に去来する様々な想いを込めて歌った。神バンドとともにMOAと鞘師里保が合流し、「♪ララララー」とシンガロングして、ファンをまた一つ=THE ONEに結び付けた。
フィニッシュは「Road of Resistance」。
2014年11月のBack to UKツアーで、場所も同じO2 Academy Brixtonで初披露されたのがこの曲だった。
インターリュードとともに登場したSU-、MOA、鞘師里保の三人は、あの懐かしいBABYMETAL旗を担いでいた。それは、メタル発祥の地イギリスこそ、BABYMETALの再出発に欠かせないというチーム・ベビメタ全体の意志を示していた。
「We are?」「BABYMETAL!!!」のC&Rでは、大歓声と拍手が沸き起こり、ほとんどの観客がキツネサインを高く掲げた。終演後の「紙芝居」で、史上最長の全米横断ツアー、『METAL GALAXY』のリリース、SSA、大阪城ホールという2017年と同じジャパンツアー4公演を経て、BABYMETALは2020年2月に再びイギリスへ戻ってくるというスケジュールが明らかになると、イギリス人観客は歓呼の声をあげた。
そして、イギリス弾丸ツアーを終えて帰国したBABYMETALは、7月6日、MOAMETAL20歳の聖誕祭である、BABYMETAL ARISES -BEYOND OF THE MOON-@ポートメッセなごやに臨むことになる。
(つづく)