10年のキセキ(82) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日7月16日は、2013年、NHK『MJアネックス』に出演し、ローリー寺西にメタル脳を教わった日DEATH。

Dark Night CarnivalでのBABYMETALのセットリストは以下のとおり。
1.    In the Name of
2.    Distortion
3.    ギミチョコ!!
4.    Elevator Girl
5.    紅月-アカツキ-
6.    Starlight
7.    META!メタ太郎
8.    メギツネ
9.    KARATE
10.    Road of Resistance
11.    THE ONE 
サポートダンサー:丸山未那子、佃井皆美、秋山翔子、平井沙弥、大森小都乃
神バンド:大村孝佳(G)、BOH(B)、松本英二(D)、ISAO(G)

セトリの基本的な流れや舞台装置、ダンスのフォーメーションは、World Tour 2018ジャパンツアー@幕張メッセと同じ。ただ会場が大きくなった分、スクリーンが大きくなり、三角舞台の可動域や、照明効果がスケールアップし、Chosen Sevenのシアトリカルな世界が展開された。
客電が落ちると、短いDark Night Carnivalの紹介動画から、「BABYMETAL」の文字が大写しになると大歓声。低い男の英語で、「Light and Darkness…」とスタートしたナレーションが「…It’s time to Metal Resistance Episode Ⅶ with BABYMETAL」で終わると同時にDjentのギターリフが駆け上がり、特効が「パーン」と爆発。
1曲目「In the Name of」である。
舞台上段にはキツネミミガウンをまとったChosen Sevenがズラリと並んでいた。7人が錫杖を上手から下手へ動かしていくと、それにシンクロして舞台から客席に向けてピンスポットライトが幾条にも照射された。


SU-が一人だけ階段を降り、ステージ最前面の三角舞台に進むと、それは一気にSU-の身長の3倍くらいの高さまでせり上がった。ピットレベルから見れば10メートル近い。もちろん三角舞台には手すりなどない。
2013年Legend”1997”のオープニングの聖母像前、2014年日本武道館黒い夜の銅鑼鳴らし、2016年東京ドームの中央塔の頂点ステージなど、とんでもない高さに登るのはBABYMETALのお家芸だが、それにしても高い。
その高さから、錫杖を持ったSU-は3万人の観客を眺め渡す。文字通り女神の降臨である。
SU-がクルリと後ろを向いて呼び込むと、三角舞台が下がり、MOAに率いられたメンバーが階段から三角舞台に降りて三角舞台の縁に並び、気合に満ちた眼差しで客席を見つめる。圧倒的な迫力だった。
曲が終わって暗転し、7人は一旦舞台から去る。やがて青い照明に変わると「キーン」という不穏なハウリング音の中、ドラム音とDjent風のギターリフが繰り返された。
2曲目「Distortion」。
「♪Wow Wow Wow Wow」というコーラスが聞こえてくると、もちろん観客もすかさず大合唱し、早くもサークルが形成される。流れは幕張と同じだが、収容人数が約3倍のSSAでは、響き渡る歓声も、作られるサークルもより大きく、場内は興奮のるつぼと化した。
導入部のグロウルの掛け合いは、観客とSU-との対話になっていた。
観客が、「Give up? Give up?」と歌うとSU-が「Can’t stop the power」と応える。
もう一度観客が「Give up? Give up?」と歌うとSU-は「Stop the power」と応える。
観客が再度「Give up? Give up?」と問うと、SU-は「Caught in a bad dream」と応える。
だが、観客が最後に「Distortion!」と叫ぶと、SU-の歌声は、閉ざされたかに見える状況を切り裂いていく。
「♪歪んだカラダ叫びだす」(Wow Wow Wow Wow!)、「♪歪んだイタミ、切りつける、汚い世界だった」
「♪歪んだツバサ飛べるなら」(Wow Wow Wow Wow!)、「♪歪んだシハイ恐れない、偽善者なんてKill捨てちまえよ」
1番、2番が終わるごとに大歓声が湧いた。


2018年のDarkside期間、BABYMETALファンにとって「Distortion」は救いだった。
2018年の海外ツアーに帯同した遠征組の方は、ライブでは早く「♪Wow Wow Wow Wow」と歌いたくてウズウズしていたとおっしゃっていた。
苦境の中、Darksideのコンセプト、サポートダンサー、新コスチューム、メイクで新機軸を出していることはわかるのだが、ファンも参加してライブを盛り上げたい。
2018年の新曲「In the Name of」はインスト曲だし、「Elevator Girl」、「Kagerou」、「Starlight」はいずれも合いの手やシンガロングが入れにくい曲だった。
そんな中「Distortion」は唯一、シンガロングでBABYMETALをサポートできる曲だった。
BABYMETALの大きな特徴として、Scream=「合いの手」やシンガロングを楽曲に組み込んでいるということがあげられる。
日本の「アイドル」では、曲中に「パン・パパン・オー」のリズムになるパートを組み込むのが定番で、事実、BABYMETALの出身母体であるさくら学院でも「ベリシュビッツ」「See You…」などに組み込まれていた。
BABYMETALは「アイドルとメタルの融合」だから「合いの手」があるのだと思われがちだが、実はそうでもない。合いの手やシンガロングは、SABATONの「Swedish Pagans」の「♪オーオーオー、オーオーオオオーオ」のようにメタルバンドの定番でもある。
もともと、アイドルオタクのMIXは、80年代メタルファンの流入によって生まれたという歴史的事実もある。
楽曲を耳で聴くだけでなく、ヘドバン、モッシュ、合いの手、シンガロングなどで観客が参加できることは、アイドルでもありメタルでもあるBABYMETALにとっては当然なのだ。
なぜ、2010年代の日本で、弱小「アイドル」出身、しかもマイナージャンルになっていた「メタル」をやるBABYMETALがこれほど支持されたのか。
ぼくの考えでは、それは楽曲CDという「モノ」を購入するのではなく、BABYMETALの世界進出に参加するという「コト」だったからだ。
2018年、YUI不在という苦境にあるBABYMETALを、ファンが全力の合いの手とシンガロングでサポートできる「Distortion」がライブの中核になったのは、その実例だったといえる。
間奏部、SU-は「ヘイ、サイタマ!」と叫び、「I wanna see a BIG CIRCLE PIT!」「Show me a BIG CIRCLEPIT!」と客席を煽った。MOAは手拍子をしながらニコニコ顔。5人のサポートダンサーもMOAにならって手拍子を促す。
ステージに近い超モッシュッシュピットで2つ。後方のモッシュッシュピットで1つ巨大サークルができ、SU-が再び「♪歪んだ…」と歌いだすと、観客はもみくちゃになりながら高速で回った。
続いて、3曲目「ギミチョコ!!」。
フォーメーションは、幕張と同じく中央△に3人、後方左右▽に各2名の7名が大迫力のダンスを展開した。
もちろん、ピットでは引き続き高速サークルモッシュ。
間奏部。今日の神バンドは、下手ギター大村神、ベースBOH、上手ギターISAO神で、ドラムスは元FACT/Joy Oppositesのメンバーで、2019年からKen Yokoyamaバンドに在籍している松本英二氏。
松本神のドラミングは、大柄な体躯に似合わず(失礼)、2バスのブラストビートを軽快に鳴らし続け、スリリングなオカズをふんだんに交えるテクニシャンぶりで、BABYMETALサウンドにマッチしていた。
手拍子を促すMOAの笑顔が弾ける。そして再び7人の大迫力ダンス。
続いてジャズっぽいエレピのコード弾きに「♪Hey Laby, Are you going up or dadadadadada down…」というオートチューンが施されたSU-の歌声。4曲目「Elevator Girl」である。
フォーメーションは、これも幕張同様、中央の△に3人、左右後方▽に丸山未那子、佃井皆美の両サポートダンサー。5人のダンスは見事にシンクロしており、曲の最後では全員SU-の回りに集まり、身体をくねらせるようなダンスになる。
合いの手は「♪Going up, going down, going up, going down Hell Yeah!」だが、当時はまだ正規の歌詞が公表されておらず、あいまいに歌うしかなかったが、曲終盤の「♪上へ参ります、下へ参ります」のあとは「♪ハイ!ハイ!ハイ!ハイ!」という合いの手が自然発生した。それは、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の終盤と同じリズムだった。日本での生披露はこれでようやく3回目だが、これで「Elevator Girl」が「ド・キ・ド・キ☆モーニング」の続編であることがわかった。
「ド・キ・ド・キ☆モーニング」がローティーンの女の子たちの忙しい朝の光景を描いているとすれば、「Elevator Girl」は社会人になった彼女たちが、毎日仕事に振り回される光景を描いている。「ド・キ・ド・キ☆モーニング」のイントロは、Kawaii目覚ましの電子音だが、「Elevator Girl」のそれはオトナっぽいジャズピアノ。
そしてSU-の最初のボーカルはどちらもオートチューンがかかっている。ね。明らかに続編でしょ。
Dark Night CarnivalはBABYMETAL史の結節点であり、現在のMETAL GALAXY体制の出発点だった。新体制になってもKawaii METALは続いていく。それがはっきりと分かった。
場内に物悲しい映画の一場面のようなインターリュードが流れ、場内が青く染まる。やがてピアノのイントロに変わる。
5曲目「紅月-アカツキ-」である。
舞台奥の最上段ステージにスポットが当たり、金色に輝くマントに身を包んだSU-が「♪幾千もの時を超えて…」と歌いだす。澄み切った歌声と立ち上るオーラに3万人の観客はしわぶきひとつ立てずに聴き入る。
「♪この身体が滅びるまで 命が消えるまで守り続けてゆく」と歌うSU-は、切々と心情を表現するというより、威厳さえ感じる強い意志を迸らせていた。
ギターのイントロが入ってくる。松本神がたたき出すバスドラの鼓動が、観客の心音と重なる。大村神のピッキングハーモニクスが空気を切り裂く。
SU-が「アカツキだー!」と叫ぶと、ステージ上段左右各4本、舞台前面左右6本ずつ置かれたパイロが巨大な炎を噴き上げる。観客は大歓声をあげ、再び高速サークルが発生した。
間奏部。大村神とISAO神のツインギターが唸りを上げる中、ステージ上段では、丸山未那子と佃井皆美による気迫あふれる空手の型が披露されていた。二人は階段を駆け下りると舞台中央でがっぷり四つに組み、すさまじい気を発しながら迫真の殺陣を展開した。
もし、この二人がいなかったら、2018年のDarksideは、理不尽な運命に抗うBABYMETALの核となる「戦う心」を表現できなかっただろう。これがなければ、Lightside=新生BABYMETALとしてのリスタートもできなかっただろう。なぜなら、過去の自分と戦うSU-の内面的葛藤を現わすこの殺陣は、そのままYUIMETALのいた「あの頃のBABYMETAL」に未練を残す、ぼくらファンの心の嵐の表現でもあったからだ。
だから、マントを翻して入ってきたSU-が歌う「♪過ぎてゆく時の中、瞳を閉じたまま」「♪この手に流れる赤い糸消えても感じている、絆を…」という歌詞は、まさしくそれを鎮め、浄化する祈りの歌になった。
後半のひざまずくシーンでも、幕張と違ってSU-の表情が悲しみに歪むことはなく、確信に満ち、毅然としていた。その強さにぼくらは圧倒され、心のざわつきも鎮められた。SU-が力強くマントを翻して後ろを向いて曲が終わると、場内は暗転。
大会場ならではのレーザーショウが始まった。青、赤、白のオーロラのような光の波。その中を「♪ララララーラーラーラーラー…」というコーラスが聴こえてくる。
6曲目、新曲「Starlight」である。観客の多くが、キツネサインを掲げた。
藤岡神とYUIMETALへの感謝と愛を込めた別れとともに、その意志も背負って「メタル表現の極北」へ前進する。Dark Night Carnivalに集まった3万人のファンが、「Starlight」で思いを共有した。
3rdアルバム『METAL GALAXY』のDarksideと位置づけられたDisk2は、「IN THE NAME OF」→「Distortion」で始まり、「Starlight」→「Shine」→「Arkadia」で終わる。
2017年12月の広島Legend-S-の終演後の「紙芝居」、2018年FOX DAYのDarksideトレイラー、そして2018年Darksideライブ終演後の「紙芝居」では、まだタイトルさえもわからなかった「Shine」のメロディが常に使われていた。
だが、Darksideを潜り抜けるには、過去と向き合い、大切にしながらも、それと決別し、前を向く「Starlight」を経なければ「Shine」には至らず、「Arkadia」を導くことはできなかったのだ。
3万人のDark Night Carnivalの「紅月-アカツキ-」~「Starlight」で理不尽な運命との戦いと浄化の祈りを共有したことで、BABYMETALもファンも、吹っ切れたのだと思う。
ここからはお祭りだった。
スクリーンに、「METAL WARS」のタイトルとともに、テレビゲーム画面のような「紙芝居」が映った。
「時は、戦国。新たな時代の幕開けを告げる鋼鉄の祝砲が鳴り響く中、銀河帝国の愉快な仲間たちと、瑞典(ウインターランド)の鋼鉄の勇者たちを乗せたメタルの箱舟はメタルの銀河へと出て、新たな船出をするのだ。メタルのハートとメタルのパワーがあれば恐れることはない。さあ、生まれ変わろう!みんながヒーローを待っている!」
明転するとステージにSU-、MOA。後方にピエロメイクのサポートダンサー二人。
ドラムの音が響くと、観客はすかさず「メタ!」と叫ぶ。Legend-S-以来封印されていた「META!メタ太郎」だった。
「♪メタ太郎、メタ太郎、君はヒーローさ…」の部分はSU-とMOAが一緒に歌い、「♪ずっと昔、もっと昔はるか彼方」まではSU-、「♪銀河系の澄んだ星で生まれました」はMOAが歌った。1番と間奏部が終わり「ウォーウォーウォーウォウォ、ウォーウォーウォー」とシンガロングしたところで、SU-が「Tonight’s Special Guests!」と呼び込むと、あのコスチュームでライトセイバーを持ったGALACTIC EMPIREのDark Vaderが階段を下りてきた。SU-が「Thank you very much to join us!」と挨拶し、さらに「SABATON!」と呼び込むと、ヨアキム・ブローデンが同じくマイクを持って階段を下りてステージに現れた。
観客は大歓声。ここがDark Night Carnivalのハイライトだった。
ダンサー二人を残して、下手からMOA、ベイダー卿、ヨアキム、SU-の4人が最前面の三角舞台に乗ると、オープニングと同じく、そのまませり上がっていく。


ベビメタの二人は慣れたものだが、さすがにベイダー卿とヨアキムは一歩も動かず、手を振るだけだった。
MOAがニコニコしながらベイダー卿の後ろでぴょんぴょん飛んでいたのがKawaiかった。
もちろん観客は、敬礼振りをしながら「♪ウォーウォーウォーウォウォ、ウォーウォーウォー」の大合唱。場所も同じSSAで行われた去年の巨大キツネ祭りを彷彿とさせた。
SABATONもGALACTIC EMPIREもBABYMETALも、世間ではギミックに満ちたメタルバンドと思われている。だが演奏力は一流で、とにかくライブが楽しい。
反商業主義だのジャンル・セクト主義だのにがんじがらめになって、眉間にしわを寄せ、批評しながら聴くなんて、ロックじゃない。
ようやく4人を乗せた三角舞台がフロア位置まで下がると暗転。
大歓声と拍手が上がる中、「♪キーツーネー、キーツーネー、私はメーギツネー」というSU-の声が流れた。
(つづく)