10年のキセキ(75) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日7月7日は、2012年、ヘドバ行脚ライブ@大阪・難波Rocketsが行われ、2013年、Rock Beats Cancer フェス@日比谷野音に出演し、2014年、ロンドン公演@The Forumが行われ、2019年には、BABYMETAL ARISES Beyond the Moon Legend-M@ポートメッセなごや初日が行われた日DEATH。

今年2月下旬、トイレットペーパーが店頭で買えなくなったのは、「ネットでトイレットペーパーが不足しているというデマが拡散されたため」ではなく、「トイレットペーパーが不足しているというデマが拡散されている」というマスコミ報道の前半部分だけに踊らされた人々がトイレットペーパーを買い占めたためであるということがわかった。
『日経XTech』の記事によると、東京大学大学院工学系研究科の鳥海不二夫准教授は、TwitterのAPIを利用して2月21日から3月13日までの「トイレットペーパー」を含むツイート約460万件を収集し、実際の国内のトイレットペーパーの売上高推移との関係を分析した。
「トイレットペーパーが不足しているというデマが拡散された」とする2月21日から2月26日までに10回以上リツイートされたツイートのうち、「トイレットペーパーが不足している」という内容だったのは、わずか18件で、この間はトイレットペーパーの売上高は増えていない。
2月21日にテレビや新聞で「トイレットペーパーが不足しているというデマがネットで拡散されている」と報道された後、ネットではそれに反発するように「トイレットペーパーが不足しているというのはデマである」とするツイートが大量に発生した。
ところが、トイレットペーパーの売り上げが急増したのはそれからで、2月下旬、ついに店頭から消えた。
つまり、「ネットでデマが拡散されている」という報道そのものがウソだったのだが、自粛前、朝一番でドラッグストアやスーパーの店頭に列を作り、トイレットペーパーを買い占めた高齢者は、「デマが拡散されている」という後半部分ではなく、「トイレットペーパーが不足している」という前半のウソ部分を信じて行動したのだ。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/01353/070100001/
この分析は、「〇〇は××だ」というウソ情報が、「〇〇は××だというのはウソだ」という否定情報によっても補強拡大されてしまう大衆情報社会のメカニズム、すなわち「ウソ×ウソ=ホント」になってしまう空恐ろしい現実を示している。
言い換えれば、わが国の情報リテラシーは、「数理的に考える習慣をつける」どころではなく、「文章を最後まで読む」という小学生レベルの国語力すら欠けているということだ。
これでは、国民がフェイクニュースに踊らされるのも無理はない。
だとすれば、製造業に製造物責任法(PL法)があるように、事実に反する報道によって被害が出た場合のマスメディアの責任を問う法律を作るしかないと思う。

2018年6月4日、BABYMETALはオーストリア・インスブルック公演を行った。
オーストリアでは2015年、2016年連続でRock in Viennaに出演していたが、初めての単独ライブは音楽の都ウイーンではなく、冬季オリンピックで知られる高原の小都市インスブルックでの公演になった。


会場のMusic Hall Innsbruck は収容人員1,400名で、インスブルックの中心街から外れたInn川沿いに位置し、本物のアルプスの山々を望む牧歌的ロケーションにあった。待機列がぐるりと会場を取り巻いたころ、黒雲が空を覆い、雷鳴が轟き、雨となった。
女性ボーカリスト C.J. Gilpinを擁するイギリスのポスト・ハードコア・バンドDream Stateによるオープニング・アクトが終わり、いよいよオーストリア初の単独ライブが始まった。
セットリストは以下のとおり。
1.In the Name of
2.Distortion
3.Elevator Girl
4.Kagerou(仮称:Tattoo)
5.GJ!
6.紅月-アカツキ-
7.メギツネ
8.ギミチョコ!!
9.KARATE
10.Road of Resistance
11.THE ONE (English & Unfinished Ver.)
サポートダンサー:丸山未那子、佃井皆美
神バンド:大村孝佳(G)、BOH(B)、青山秀樹(D)、ISAO(G)
これは、アメリカツアーと同じで、1~4曲目は新曲、5曲目「GJ!」はMOAをセンターとした三人体制、6曲目「紅月-アカツキ-」はSU-ソロだが、間奏部で二人のサポートダンサーによる殺陣が演じられる。
7曲目以降は従来のレパートリーだが、四人体制のフォーメーションで、より迫力を増したパフォーマンスが展開される。
フィニッシュの「THE ONE」はLegend-S-同様、前半は静かなピアノの伴奏でSU-が歌い上げ、バンドが入る後半は、MOAが二人のサポートダンサーを率いて、DarksideでもBABYMETALが前進を続けるというドラマチックな流れになっていた。
2年ぶりのヨーロッパ単独公演となったこのライブには、ドイツ、フランス、イギリス、スイスなどからも大勢のファンが詰めかけており、冷たい雨の中、長時間待ち続けたあと入場した観客は、公式の収容人員をはるかに超える2,000人近い数となった。


2010年の結成以来、三人体制に慣れ親しんできた日本のメイトには、カンサスシティ以来のDarksideのライブを見る機会がなく、YUIMETALの欠場は、BABYMETAL存亡の危機だと思われていた。
しかし、アメリカツアーの後半~ヨーロッパツアーでは、新曲の投入や二人のサポートダンサー参加によるダンスパフォーマンスのクオリティの高さで、BABYMETALには新しいファン層がついていた。
後で書くが、Download UK 2018の現場でぼくが出会ったヨーロッパのファンは、YUIMETALの欠場を嘆くより、Darksideに入ってDjent、インダストリアル、シンフォニックといったメタルのサブジャンルのカラーがより鮮明になった当時のBABYMETALの音楽性を高く評価する人がほとんどだった。
特に、凝ったコスチューム、濃いメイク、「In the Name of」のミュージカルのような登場シーンや、「紅月-アカツキ-」の殺陣、「KARATE」間奏部の小芝居といった要素は、BABYMETAL=シアトリカルという印象を強めることになった。
1970年代のプログレッシブ・ロックには、例えばピンクフロイドがライブ会場で巨大な豚気球を飛ばしたり、ステージに高い壁を築いたりするシアトリカルな要素があったが、それは、巨大なバンドシンボルEdyが登場するIron Maidenや全員奇怪なマスクをつけて演奏するSlipknotへ引き継がれ、2000年代以降は、アンチキリストを演じるマリリン・マンソンやトビアス・フォージが「メタルの枢機卿」を演じるGHOST、マリア・ブリンク率いるIn This Moment、ステージに戦車を持ち込むSABATONなど、演奏だけでなく、コスチュームや舞台装置、ドラマ性を持ったパフォーマンスも表現の一部とするメタルバンドが増えた。
もともと、Legend “I”以降、BABYMETALのライブは「メタル少女歌劇団」の要素が強かった。
幼くKawaiiパフォーマーが驚異的な歌唱力とダンスパフォーマンスを見せるBABYMETALは、新たなアプローチで欧米でも人気を博したが、日本でのライブのように巨大な舞台装置を組み、シアトリカルな要素を前面に出したライブはWembley Arena公演くらいだった。
フェスでも奇怪なガウンと錫杖で登場し、ヘッドギアをつけた鎧のようなコスチュームで、卓越した演奏・歌唱・ダンスを見せる2018年DarksideのBABYMETALは、ある意味ようやくBABYMETALらしさ=シアトリカル・メタルバンドの本領を発揮し始めたとも見えた。インスブルック公演では、Rock im Parkと同様、SU-とMOAは濃いメイクで臨んでいたが、それもシアトリカルを強調する一要素だったと思われる。
つまり、日本の「アイドル界」から見れば、Kawaii METALの体現者だったYUIMETALの欠場や濃いメイクは「アイドル性の消失」に見えたが、世界のメタル界から見れば、幼い少女たちが超絶技巧の白塗りバンドをバックにメタルパフォーマンスをやることの方が異常で、Darksideスタイルこそ正常進化だと考えられたのだ。
日本のファンが思っている以上に、2018年、欧米でのBABYMETALのファンベースは拡大していた。
6月5日、6日は、オランダ初の単独公演となるユトレヒト公演@TivoliVredenburg(収容2,000人)。
ユトレヒトは首都アムステルダムの南方30キロに位置するオランダ第四の都市。建国の礎となったユトレヒト同盟発祥の地であり、現在では鉄道網の中心で、『ミッフィ』の作者ディック・ブルーナの故郷でもある。
BABYMETALは2016年6月のFortarock以来のお目見えだが、現地では絶大な人気になっており、両日ともSOLD OUTになった。ちなみに2020年もMETAL GALAXY WORLD TOURの一環として、2月17日に南部の小都市ティルブルフで単独公演を行い、第二ラウンドとなる6月17日にもユトレヒトで単独公演が予定されていた。ニーズが高いのだ。
2018年ユトレヒト公演のセットリストはインスブルックと同様で、DarksideとなったBABYMETALは新しいファンを含め、詰めかけた観客を熱狂させた。


この日のもう一つの話題は、BABYMETAL Graphic Novel@BABYMETAL_GNのツイッターアカウントが2枚目の絵を公開し、「Meet the Vulture God in our 2nd look at APOCRYPHA: THE LEGEND OF BABYMETAL」とツイートしたことだった。


このグラフィックノベルは、カナダ人イラストレーターのGMB Chomichukによるもので、2018年11月に『APOCRYPHA The Legend of BABYMETAL』のタイトルで全世界同時発売された。
善と悪の力を封じ込めたキツネ様のAGIMAT=護符が平安時代の日本で破壊され、コンドルのようなVulture God=大虐殺の女神が目覚め、地球に「毒」をまき散らす。キツネ様に召喚された三人の少女が1640年、1793年、1867年、1972年と時空を超えて転生と出会いを繰り返しながら、異様な怪物たちと戦い、ついにはバラバラだった護符の欠片をひとつにまとめ、世界を救うというストーリー。
2018年6月時点では、YUIMETALの脱退は確定していなかったため主人公は三人で、BABYMETALとして野外フェスに臨むラストシーンで終わるのだが、表紙にも、毒を封印するキツネ様の護符にもDarksideのコロナロゴが描かれていた。今考えると「毒をまき散らす大虐殺の女神」と戦うBABYMETALとコロナロゴの一致が、現在の事態の予兆のように思える。
“巨大勢力アイドル”と戦う「紙芝居」のストーリーとはだいぶ違うが、2018年5月以降、1カ月おきに公開されていったこの「神話」もまた、シアトリカルなDarksideのBABYMETALのイメージを補完するものだったといえる。
こうして、ヨーロッパでの3つの単独公演を終えたBABYMETALは、ドーバー海峡を越え、6月9日、Download Festival UK 2018@Donington Parkに臨んだ。
(つづく)