Legend-METAL GALAXY考察(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日1月28日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。

Legend-METAL GALAXY@幕張メッセは、SU-METAL、MOAMETALの顔笑りはもちろん、アベンジャーの鞘師里保、岡崎百々子、藤平華乃、神バンド、銀河神バンドのメンバーだけでなく、コレオグラファー、デザイナー、舞台スタッフ、音響スタッフ、映像スタッフをはじめ、すべての関係者が、過酷なワールドツアーに旅立つ新生BABYMETALのはなむけに、持てる力を出し切って創りあげた最新かつ最高のライブだった。
仕事、家庭、懐具合、体調など、様々な事情でライブに来られなかったファンも多かったと思う。ぼく自身も、コンディションは万全には程遠く、あのライブを目撃できたのは幸運以外の何物でもなかった。まずは感謝したい。
余韻をしがみつつ、今回のライブの意味や、最後に示された「謎」について、若干の考察を加えてみたい。


まずはセットリストの分析から。
曲名の後の( )内は収録アルバムと収録順、および初披露の日付である。

<Day-1>
1. FUTURE METAL(3rd-disk1-1曲目、2019年6月28日)
2. DA DA DANCE(3rd- disk 1-2曲目、2019年10月11日)
3. Elevator Girl(3rd- disk 1-3曲目、2018年5月8日)
4. Shanti Shanti Shanti(3rd- disk 1-4曲目、2019年6月28日)
5. Oh! MAJINAI(3rd- disk 1-5曲目、当日初披露)
6. YAVA(2nd-4曲目、2015年6月21日)
7. Brand New Day(3rd- disk 1-6曲目、当日初披露)
8.ギミチョコ(1st-3曲目、2013年12月21日)
9.メギツネ(1st-2曲目、2013年6月22日)
10. Night Night Burn(3rd- disk 1-8曲目、当日初披露)
11. THE ONE(2nd-13曲目、2015年12月12日)
12. Road of Resistance(2nd-1曲目、2014年11月8日)

3rdアルバム『METAL GALAXY』のDisk-1から7曲、それもきれいに収録順に並んでいる。披露されなかったのはDisk-1-7曲目の「↑↓←→BBAB」だけである。
残りの楽曲は、1stアルバム『BABYMETAL』から代表曲「ギミチョコ!!」と「メギツネ」の2曲、2ndアルバム『Metal Resistance』から「YAVA!」「THE ONE」「Road of Resistance」の3曲が入った。

<Day-2>
1. In the Name of(3rd-disk2-1曲目、2017年12月2日)
2. Distortion(3rd-disk2-2曲目、2018年5月8日)
3. PAPAYA!!(3rd-disk2-3曲目、2019年6月28日)
4. KARATE(2nd-2曲目、2015年12月12日)
5. Kagerou(3rd-disk2-5曲目、2018年5月8日)
6. BxMxC(3rd- disk2-4曲目、当日初披露)
7.シンコペーション(2nd-7曲目、2016年8月8日)
8.ヘドバンギャー(1st-12曲目、2012年6月23日)
9. Starlight(3rd-disk2-6曲目、2018年10月23日)
10. Shine(3rd-disk2-7曲目、2019年7月6日)
11. Arkadia(3rd-disk2-8曲目、2019年6月28日)
12.イジメ、ダメ、ゼッタイ(1st-13曲目、2011年7月23日)

Day-2は、『METAL GALAXY』のDisk2から8曲、それも「BxMxC」と「Kagerou」の順番が入れ替わった他は、ほぼ収録順で、『BABYMETAL』からは「ヘドバンギャー!!!」と「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の2曲、『Metal Resistance』からは「KARATE」と「シンコペーション」の2曲がセトリに入った。
これにより、初日と二日目で、すべて演奏曲が異なるという東京ドームスタイルの構成になっていた。
東京ドームのように通算全曲というわけではないが、「↑↓←→BBAB」を除く『METAL GALAXY』全収録曲を重なりなく配分した。
これにより、次のような記録が爆誕した。

●BABYMETALが生で披露したレパートリーは、全41曲に
これは、2012年のLegend-D(「White Love」「Over the Future」「翼をください」)、2013年のLegend-1999(「ちょこっとLove」「Loveマシーン」)、Legend-1997(「魂のルフラン」)などのカバー曲を除いた曲数である。
これまでに音源としてリリースされたオリジナル曲は、「君とアニメが見たい」「From Dusk Till Dawn」を含めて全部で42曲だが、「↑↓←→BBAB」以外は全部生演奏で披露されたことになる。
なお、数カ月おきにEPをリリースする「巨大勢力アイドル」に比べて、同じく知名度のある10年目でこの曲数は圧倒的に少ない。BABYMETALより1年遅くデビューした乃木坂46は軽く120曲を超えている。
逆に言えば、BABYMETALがアルバムリリース→ライブツアーというロックバンド形態であることを示しているといえる。

●「ギミチョコ!!」と「メギツネ」が両方とも演奏されない初めてのセトリ
Legend-METAL GALAXY Day-2で、『BABYMETAL』からセトリに入ったのは、「ヘドバンギャー!!!」と「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の2曲で、BABYMETALの代表曲である「ギミチョコ!!」と「メギツネ」は演奏されなかった。
今回と同様、両日のセトリが重ならないというスタイルで行われた2016年の東京ドーム公演では、「ギミチョコ!!」は初日Red Nightに、「メギツネ」は二日目Black Nightに分けて演奏された。
「メギツネ」は2013年6月のいなりんとヒット祈願@タワレコ渋谷店で、「ギミチョコ!!」は、2013年12月のLegend-1997で、それぞれ初披露された。両曲がそろった2014年以降、ミニライブ、前座、フェス、単独公演を問わず、ベビメタを代表するこの2曲が両方ともライブで演奏されなかったのは、今回が初めてである。

●「↑↓←→BBAB」が当面の焦点に
この曲は、「BxMxC」とともに『METAL GALAXY』EU/US盤には収録されていない。
だが、「BxMxC」はDay-2に初披露されたので、「↑↓←→BBAB」は唯一の未演奏曲となった。
『Metal Resistance』収録曲の「シンコペーション」も、EU/US盤に収録されず、日本では2016年8月8日Apocrypha-The White Mass@なんばHatchまで、海外では2019年5月のロンドン公演@O2 Academy Brixtonまで、生演奏されなかった。
「↑↓←→BBAB」も、同じように、初披露はいつか?が期待される曲となったわけだ。
バランス的には、初日に「YAVA!」ではなく「↑↓←→BBAB」を入れた方がスッキリする。だがそうなると初日の初披露曲が4曲になってしまい、次回への期待が残らない。
そんなわけで「↑↓←→BBAB」を未演奏曲として残したのだろう。
なお、『Metal Resistance』のEU/US盤だけに収録された「From Dusk Till Dawn」は、2017年6月のSpecial Headline Show@ハリウッドPalladiumで初披露され、それ以降一度も生演奏されていない。
ちなみに『METAL GALAXY』のEU/US盤のみに収録されているのは、「Elevator Girl」のEnglish Ver.である。

さて、両日のセトリを変えることで、BABYMETALは何を表現したかったのか。
ライブレポートでも触れたように、「紙芝居」では、しきりに太陽と月、「光の力」と「闇の力」を対照させ、BABYMETALが2つの力を得たことを示していた。
確かに、SU-の表情は、笑顔にあふれていたDay-1と、客席を眼光鋭くにらみつけるDay-2では全く異なった。
初日の「DA DA DANCE」、「Elevator Girl」や、初披露された「Brand New Day」、「Night Night Burn」は都会的だし、「Shanti Shanti Shanti」や「Oh! MAJINAI」は民族音楽っぽく、楽しい曲だった。
これに対して、二日目の「In The Name Of」、「Distortion」、「Starlight」は、Darksideの2018年を思わせたし、「KARATE」や「ヘドバンギャー!!!」も、理不尽な運命を乗りこえる闘いの様相を表現していた。初披露の「BxMxC」もインダストリアル+ラップというエクストリームな楽曲だった。
楽曲を「光」と「闇」に分けるというシナリオに、ツッコミどころがないわけではない。
例えばDay-1に演奏された「メギツネ」はジャパニーズホラーだから、「闇の力」に位置づけてもいいし、Day-2に演奏された「PA PA YA!」は灼熱のアジアの祝祭だから、どちらかというと「光」の方ではないか。
だが、2日間のライブを通した感動を思えば、そんなのは些細なことである。
Day-2のフィニッシュ曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」を聴いた瞬間、Darksideの2018年と、『METAL GALAXY』の2019年だけでなく、デビュー以来のBABYMETALの歴史が、ひとつにつながった。
「♪夢を見ること それさえも持てなくて 光と闇のはざま一人…」
この歌い出しから、ちゃんと「光と闇」がテーマになっていた。
ぶっちゃけてしまうと、Day-2のぼくのブロックは最後列上手側のGで、脊椎間狭窄症で右足が痛むぼくは、中央寄りの柵に陣取っていた。すぐ横にはミキサーブースが設置されていた。
開演直前、そこにKOBAMETALが現れて、スタッフに声をかけていた。ライブが始まるとその姿は見えなくなったが、終盤に再び現れ、二階に登って「Arkadia」が終わったあと、アンコールを続ける観客をスマホで撮影していた。
MOAが一人でステージを駆け抜けた2017年の広島以来、ある意味リベンジとなる「イジメ、ダメ、ゼッタイ」の全員そろい踏みのシーンを、KOBAMETAL自身もその目で見たかったのだと思う。
思えばBABYMETALの歴史は、乗り越えねばならない困難の連続だった。
2010年11月、横浜赤レンガ倉庫で、重音部が「ド・キ・ド・キ☆モーニング」を初披露し、2011年2月のバレンタインライブでBABYMETALと名乗った直後、3.11が発生し、さくら学院自体、数か月間活動を休止せざるを得なくなった。
「アイドル界のダークヒロイン」として人気が定着し、「ヘドバンギャー!!!」でインディーズデビューした2012年、SU-METALのさくら学院卒業で、BABYMETALは解散の危機に立たされた。あの時「最後まで悩んで」、課外活動としてBABYMETALを存続させる決心をしたのはMOAだった。
2014年3月1日、史上最年少の日本武道館公演初日、「ヘドバンギャー!!!」の途中で、花道からYUIが転落するという事件が起こった。あの時は、YUIが自力で花道に戻り、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のクラウチングスタートのポーズをとった。アイコンタクトでYUIの無事を確認したSU-とMOAの目には涙が浮かんでいた。その深い絆を1万人のファンが目撃した。
欧米デビューを飾った2014年のSonisphereでは、6万人の本場メタルヘッズをノックアウトしたが、続くレディ・ガガの前座ツアーでは、さくら学院最終学年で生徒会長だったMOAが、連続出演してきたTIFに出られず悩んだ。
2015年の10か国を巡るワールドツアーでは、成長期のYUIとMOAが灼熱のステージ袖で倒れ込む事態も発生した。
2017年8月のサマソニは、セカンドヘッドライナーとして幕張マリンスタジアムに登場し、「ついに、ついにここまで来ました!」というSU-の名言が生まれたが、12月の広島ではYUIが欠場。小神様の悲劇を経て、2018年、日蝕ロゴのDarkside、Chosen Sevenのパフォーマンスとなった。
「光と闇は表裏一体」。
2018年の「紙芝居」で繰り返されたあのフレーズは、決してすべてが順調ではなかったBABYMETALの運命に対する“祈り”のようなものだったのだろう。
だから「光と闇」をテーマにしたLegend-METAL GALAXYのフィニッシュ曲は、デビュー曲「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でなければならなかったのだ。
(つづく)