エルフの国へ(1) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ
本日12月30日は、2013年、Count Down Japan13/14 @幕張メッセに出演し、2014年には、NHK-FM「メタルゴッドJP」に出演した日DEATH。

少し気が早いが、来年1月25-26日のGalaxy World Tour in Japan Extra Show@幕張メッセが終わると、BABYMETALは、初の北欧(スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、フィンランド)を含む「汎ヨーロッパツアー」へと旅立つ。
イギリス、ドイツ、北欧各国を構成する民族は、アングロ=サクソン、ゲルマン、ノルマンといった人々だが、古代において、彼らは祖先を同じくする一族だった。
彼らの共通語だった古ノルド語で書かれた中世アイスランドの「サガSaga」や「エッダEdda」などの伝承文学に描かれた北欧神話やゲルマン神話には、妖精エルフ(アールヴ)や小人ドワーフ(ドヴェルグ)が登場する。
エルフは、印欧語で「白い」を意味するalbhを語源とし、北欧神話では小人とは別種の存在とされている。
だが、イギリス人の作家トールキンの『指輪物語』『ホビットの冒険』で、エルフは長い耳を持つ小人の種族として描かれたので、ぼくらのイメージはそうなっている。


『ハリー・ポッター』シリーズのエルフもそうだし、ディズニーの『白雪姫』の小人もエルフの一種とみなされている。日本のRPGやファンタジーアニメでも、長い耳のエルフ少女は定番となっている。
あまり日本で知られていないのは、英語圏ではエルフはサンタクロースの助手とされ、クリスマスにはプレゼントの包装や運搬で大忙しだということである。
1月になると、また2020年のクリスマスへ向けて、世界中の子どものデータベース入力の仕事が始まるので、クリスマスが終わり、新年になる前の短い間だけが、彼らの自由時間である。
BABYMETALの汎ヨーロッパツアーでは、『METAL GALAXY』収録曲の「OMAJINAI」が披露されるだろう。サビの「♪ナイナナナイナイナイナイナイ…」は、SABATONのヨアキム・ブローデン演じる大男だけでなく、エルフたちも、SU-、MOAと一緒に輪になって踊る光景が目に浮かぶ。
それで、事前にBABYMETALとそのファンに基礎知識をインプットさせるために、エルフの一人が、夜明け前の寒さに震えるぼくの脳ミソに飛び込んできた。

北欧といえば、メタル大国でもある。
本稿では、エルフと北欧メタルの親和性について考察してみたい。

アイスランドは、北大西洋にある火山活動でできた島国で、面積は約10万平方キロメートルと、日本の北海道と四国を合わせたくらいの大きさである。人口はわずか約35万人5000人で、首都レイキャビクは北緯64度8分に位置し、首都としては世界最北である。
そのアイスランドで、2012年、「妖精遺産保護法」が成立した。
火山島であるアイスランドのエルフは、国中いたるところにある大きな岩の下に住んでいるといわれている。道路や宅地建設工事の際に、エルフの家といわれている岩に手をつけると、たびたび機械が故障したり、予期せぬ技術的問題が発生したりするため、作業員がストライキを起こす。
そのため、エルフの存在を信じる国民の信仰心を尊重し、自然環境を保全する意味も含めて、エルフの住む岩を保護対象とするこの法律が作られた。どこかの国の「セクシー」な環境保護方針より、よっぽどお洒落で実効的だ。
紀元後871年、アイスランドでは大規模な噴火があり、それ以前に住んでいた人々の痕跡はほとんど消えてしまった。874年にノルウェーからの最初の移住者がやってくる前、アイスランドに住む哺乳動物は、北極キツネ(白キツネ)だけだったという。
9世紀末からヴァイキング(ノルウェー人)、スコットランドおよびアイルランドのケルト人約2万人が入植し、それぞれの共同体が合議で島全体を統治する「アルシング」と呼ばれる民主政治が行われた。
一方、入植者たちは、暖をとるために国土の1/4を占めていた針葉樹林を伐採し、さらに羊毛を採るため牧羊業が盛んになったので、その餌となる草もなくなり、アイスランドは荒涼たる岩だらけの風景になってしまった。
985年、アイスランド人の「赤毛のエイリク」という人物が、グリーンランドを発見して入植し、1000年頃には、その息子のレイフ・エリクソンという人が北アメリカ大陸に渡ったという。コロンブスより約500年前である。
ちなみにこの頃イギリスでは、フランスにおけるノルマン人の領地=ノルマンディー公だったウイリアムがドーバー海峡を越えて侵入し、ノルマン朝を開く(1066年)。
これが現在のイギリス王室の祖先であり、やがて大英帝国を築く植民地開拓精神はヴァイキングの血に由来すると思われる。
ノルウェーからの移民が多かったアイスランドはもちろん、この頃はイギリスもノルマン人の王朝だから、西欧ではなく、北欧の一部だった。
アイスランドでは、「アルシング」による民主政治がうまく機能し、大陸に羊毛やタラ、海獣や猛禽類の毛皮などを輸出し、小麦、大麦、ワイン、建築用木材などを輸入するまでに発展した。
だが、輸入されたのはそれだけでなかった。
入植者の「母国」であるノルウェー王国から、古い聖霊信仰を捨てて、キリスト教に改宗するように政治的圧力が強まり、カトリックの司教も派遣された。
そのため、古くからの信仰を守りたい人々と、キリスト教に改宗した人々との対立が生まれ、1292年にノルウェー王国が介入して、アイスランドは事実上の植民地になってしまう。
この頃アイスランドで盛んに書かれたのが「サガ」と総称される伝承文学で、文章の教本である「エッダ」もアイスランド人の作者によって書かれた。


「サガ」や「エッダ」のバックボーンになっているのが北欧神話で、その中に神々とも人間とも違う存在として記述されているのが妖精エルフである。
(つづく)