自由の価値(12) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
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★今日のベビメタ
本日10月4日は、2019年、カリフォルニア州サンフランシスコ公演@The Warfieldが行われる日DEATH。ただし、時差が16時間あるので、開演は日本時間10月5日12:00、ベビメタ登場は13:10ごろとなります。
『METAL GALAXY』リリースまで、あと7日。

『進撃の巨人』アニメの放映が始まった2013年4月、韓国でも話題が沸騰し、ポータルサイトNAVERの検索ワード1位になった。
漫画版は2011年にハクサン文化社が原作漫画の翻訳本を発行して20万部を売り上げていたが、アニメがケーブルテレビや有料ネットで吹き替え版が放映されると、ファンの間で、不思議な意見対立が起こった。
ひとつは「壁」の中に閉じ込められた人類とは韓国人のことで、襲ってくる巨人とは日本のことではないかという意見。
もうひとつは、これとは全く反対に、「壁の中」の人類が、襲ってくる巨人と戦い、自由を求めるというストーリーに、「平和憲法に縛られている日本人が再び軍国主義的になる願望を表している」という意見。これに賛同して、作者諌山創さんのブログに韓国人が大量の非難メールを送りつける事態も発生した。
「壁の中の人間」のモデルは韓国なのか、日本なのか。
もちろん『進撃の巨人』はフィクションであって、読者が作品世界に寓意を読み取るのは自由だが、それを現実と混同するのは馬鹿げている。
ただ、壮大な全体設定がわかってきた今、この物語は、多様な角度から社会状況を読み解く「頭の体操」のヒントにはなる。
主人公エレンが生まれ、「立体起動装置」を駆使して巨人と戦う舞台、三重の壁に囲まれた都市は、実はパラディ島という島国にあった。エレンを含めた壁内人類は、「巨人化能力」を持ち、その力で1700年間にわたってマーレ大陸の諸民族を支配していたエルディア帝国人の末裔だった。
100年前、内部対立から「巨人大戦」が起こり、敗れたエルディア王は「非戦の契り」をして国民と共にパラディ島に移住、壁を建設して閉じこもった。
科学技術が停滞した壁内で、「壁の外で人類は絶滅した」とエレンたちが教えられた歴史はウソだった。襲ってくる巨人も、実はマーレ大陸に残って迫害され、罰として同胞を食らうよう巨人化させられたエルディア人だった…。
島国で、かつて世界を支配したが大戦に敗れ、「非戦の契り」をして「壁の中」に引きこもり、ウソの歴史を教えられていたといった要素は、やっぱり戦後日本のメタファーといえなくもない。
ただ、「壁」が「反日教育」で統制された言語空間、科学や経済が発達したマーレ大陸が日本で、迫害されている同胞が在日だという被害者目線で考えると、「壁の中」は韓国ないし北朝鮮と考えられなくもない。
もっといえば、現在、絶望的に強大な大陸国家に自由や人権を脅かされている香港や台湾もそうかもしれない。ただこの場合、一見小さい領土しか持たない香港や台湾ではなく、広大な中国本土こそ、文字通り「グレートウォール(金盾)」という情報統制網に囲まれた「壁の中」なのだといえよう。
北京で中華人民共和国建国70年の国慶節を祝う軍事パレードが行われた2019年10月1日、香港警察は、新界地区の商店街でデモに参加していた高校生に対して、至近距離から拳銃を実弾発砲した。高校生は左胸を撃たれ、重体となったが、幸い一命は取りとめた。


ネットの情報では、他の地区でも複数件、実弾銃撃があったというし、インドネシアのジャーナリストが警官隊の発射したゴム弾が右目に当たって失明するという不幸も起きている。
逮捕者は6月以来最大の180名、負傷して病院に搬送されたのは52名うち2人は重体という。
市街地でのデモは、8月以降許可されていないため、この日のデモは各地区で自然発生的に起こったものだったが、香港警察は、催涙弾、放水、ゴム弾、そして実弾と鎮圧手段をエスカレートさせている。
高校生が警官に銃撃されたという事態に、香港人の反政府感情は再び燃え上っている。
この事件は中国本土では一切報道されていない。NHKがニュースで伝えようとした瞬間、回線が遮断されたという。
ただ、ネットにつながった香港では、SNSで現場の様子が逐一世界に拡散されるので、1989年6月4日の天安門事件で、人民解放軍が多数のデモ参加者を殺害したような事態は起きにくい。
だが、習近平国家主席は、国慶節の演説で「一国二制度を堅持する」と発言しているため、自由と民主主義を求める香港が、中国から分離・独立できる可能性はゼロに等しい。
若者たちの5大訴求が実現するわずかな可能性があるとすれば、外圧だろう。
米国議会は先月、中国当局が香港で人権を抑圧している場合、経済制裁を行うことができる「香港人権・民主主義法」を全会一致で可決した。米中経済戦争のさなか、追い込まれた中国政府が譲歩し、香港の民主化を認める可能性がないわけでなない。
だが、最もありそうなのは、リーダーが特定できなくても、当局が手あたり次第に参加者を逮捕し、保釈条件をつけて身動きできないようにし、デモ参加者が徐々に減っていくというシナリオだろう。
建前上、香港がすぐに「グレートウォール」の中に入ることはないだろうが、規制が厳しくなり、少しずつ、少しずつ、自由と人権が削られていくのだ。
ちなみに米議会では、台湾の国家承認や台湾との非政府間交流を各国に促すよう米政府に要求する「台北法」も可決された。
情けないことに、日本政府は、香港の状況に関しても、安倍首相や菅官房長官が「一国二制度を堅持するよう望む」とコメントしただけで、中国で起こっている臓器収奪やウイグルの惨状には一言も発言せず、台湾政策も明確でない。
一方、韓国では開天節(建国記念日)の昨日10月3日、台風の去ったソウル光化門広場で、保守派による反文大統領のデモが行われた。主催者発表による参加者は300万人~500万人という。


5日前の9月28日には左派による文大統領・曺国法相支持、検察改革推進のデモが行われており、主催者発表の参加者数は200万人だという。


香港デモや野外フェスと比べれば、どちらも過大発表で、実数はそれぞれ10分の1以下じゃないかと思う。
要するに、世論が2分されているわけで、日本人のぼくには韓国民がどちらを選択するか、注視するしかない。
ただ、二つの大規模デモのうち、前者は「反日」姿勢が明確で、かつ地上波マスコミで大々的に報道されたが、後者は「反日」色がなく、かつほとんど報道されていないのは事実である。幸い、日本のネットメディアでは、両者がほぼ平等に扱われているようだ。
『進撃の巨人』の「壁」とは情報統制のことであり、「立体起動装置」とはインターネットのことなのかもしれない。
(つづく)