★今日のベビメタ
本日2月6日は、過去BABYMETAL関連で大きなイベントのなかった日DEATH。
5.トータルデザインによるプレミアム感の演出
テレビに依存しないBABYMETALの商品は、CD、楽曲配信、DVD/BDの売上、ライブチケット売上、グッズ売上、WOWOWの放映権しかない。
THE ONEの登録には、コード付きのグッズを購入するので、グッズ売上に他ならない。
大物アーティストやバラエティタレントならともかく、現在、アイドルグループやアーティストのテレビ出演は、ギャラを得るというより、CMとのタイアップだろうから、出費を抑えるという意味で、テレビに依存しないのは色々な意味で効率的だ。
ただし、テレビでの告知効果がないため、BABYMETALは楽曲や映像作品のクオリティそのもので訴求しなければならない。
映像作品とは結局、ライブのことである。
ライブは、歌唱やダンスや演奏だけでなく、舞台装置、コスチューム、照明・特効など総合的デザインが重要だし、ライブで販売されるグッズも、来場者が欲しい!と思う付加価値をつけねば売れない。
要するにBABYMETALプロジェクトの生命線はデザインなのである。
BABYMETALは、初期段階から非常に凝ったデザインのグッズを作ってきた。
その代表が、黒地にアーティスティックなイラストがプリントされたTシャツ、通称べビTである。
海外進出が明らかにされた2014年2月1日-2日の日本武道館公演「赤い夜」「黒い夜」では、べビTのイラストレーター5人の作品が勢ぞろいした。
●KAgaMI
まずはKAgaMI氏による日本武道館記念Tシャツ。
KAgaMI氏は、2012年のLegend “I”のTシャツで初お目見えし、“I、D、Z”シリーズでは北欧神話の三女神と世界樹のモチーフを、2013年のLegend“1999”や“1997”では、「創世記」のエデンの園のモチーフを導入した。
これによって、BABYMETALの“聖なる”存在感や神話性が際立つことになった。
●Yutty
次は、Fear, and Loathing in Las Vegasなども手がけるデザイン事務所Kiss of DeathのYutty氏の「召喚」Tシャツ。
Yutty氏のデザインは、コミック風のポップな絵柄と青やピンクを使うところに特徴があり、女性に人気がある。
氏は、BABYMETALの公式Tシャツ第1号となる「BABYMETAL×キバオブアキバ」のTシャツも手がけた。また、「五月革命」では、「メタルによるアイドル革命」あるいは「アイドルによるメタル革命」の同志の証として、フリーメーソン風の「EYE OF THE FOX GOD」Tシャツや、Legend"1999"のBLACK BABYMETALのTシャツも作っている。
●TOSHIHIRO EGAWA
次は、TOSHIHIRO EGAWA氏の作品、「ブルータルロゴキツネ様」Tシャツ。
2013年1月7日、メジャーデビューシングル「イジメ、ダメ、ゼッタイ」リリース記念の「一曲入魂!爆音ライブ」@HMV渋谷クアトロで販売された通称「キツネ様」Tシャツが最初のお目見えで、当時EGAWA氏は FACTやSUICIDE SILENCEなどのアートワークをてがけていた。ここで初めてブルータルロゴや骸骨、魔法陣など、デスメタルに通じるオカルティックな意匠がBABYMETALのアートワークに登場する。LOUDPARK13のTシャツもEGAWA氏によるものだった。
●BALZAC・Hirosuke
次は、BALZAC・Hirosuke氏の作品「巨大コルセット祭り」Tシャツ。
BALZAC氏は、2012年7月の「ヘドバンギャー!!」リリース&Legendコルセット祭りの記念Tシャツでお目見えした。骨のモチーフと日本語、英字を梵字風にアレンジするところに特徴があり、会場でよく目立つ。
●ローリングクレイドル
次はローリングクレイドル氏の作品「COMING DOOMSDAY」Tシャツ。
氏は、マキシマム・ザ・ホルモンなどのデザインを手がけており、2012年12月20日のLegend“D”の「BABYMETAL DEATH」Tシャツでお目見えした。ポップさとカッコよさが融合しているところに特徴があり、その都度のBABYMETALのテーマが背中側にはっきりと打ち出される。
ぼくは2017年8月に、ハリウッドで出会ったO氏の案内で、同じくイギリスから来日したRichard氏と一緒に、御徒町のギャラリーで、
TOSHIHIRO EGAWA氏http://toshihiroegawa.com/html_j/index.html)、
KAgaMI氏(http://kamikaze69.com/merch.html)
らの作品を鑑賞する機会に恵まれた。
重厚かつ繊細なデザインは圧倒的な存在感だった。
作品のモチーフは、残虐な中の聖なる美しさといったもので、魔法陣や十字架、骸骨、絡み合う植物や猛獣の鋭い牙などの中に美少女が描かれ、細部が、見るものに迫ってくる。
たかが「アイドル」のTシャツなのだから、安物のメンバーカラーの生地に、テキトーにロゴをプリントしておけば、ファンは喜んで買う。
しかしKOBAMETALは、まだBABYMETALがさほど知名度のなかった2012年初頭から、そんなやり方を拒否した。
Tシャツであっても、「アイドル」の付加価値だけでなく、「アート」の付加価値をつける。そのために著名なデザイナーを起用したのだ。
Tシャツだけではない。さまざまな小物を、BABYMETALデザインで統一して制作・販売してきた。
●フェイスタオル
初期クラッシュロゴ(黒白)、WEMBLEY MEMORIAL、TOKYO DOMEMEMORIALクラッシュロゴ(黒白/黒赤)、ワールドツアー2016、エクストリームブルータル五大キツネ祭り(黒白)
●フード付きタオル
キツネサイン、THE ONE、THEONE 2016公式、CHOSEN SEVEN
●ビッグタオル
THEONE2018公式、巨大キツネ祭り
●パーカー
手書きロゴ、ギミチョコ、DEATH WARRIOR、METAL WALKURE 、CHOSEN SEVEN
●コーチジャケット
ブルータルロゴ、REVOLUTION、DEATH WARRIOR、Chosen Seven
●スウェット
TOKYO DOME MEMORIALスウェット
●レインポンチョ
クラッシュロゴ(黒白)、エクストリームブルータル(黒赤)
●幼児用ロンパース
GIMMEWEMBLEY、骨
●キャップ
ブルータルロゴメッシュキャップ、REVOLUTION、WORLDTOUR2017
●ソフトキャップ
ブルータルロゴニットキャップ、DARKNIGHT CARNIVALベレー
●その他
巨大キツネ祭りビブ、BABYMETALアパレル(ブルゾン、レギンス、ショートパンツ)
●ラバーバンド
ロゴシェイプ、WEMBLEY MEMORIAL、TOKYO DOME MEMORIAL、HOLLYWOOD、CHOSEN SEVEN、DARKNIGHT CARNIVAL
●タオル地リストバンド
BABYMETALロゴ
●サングラス
ハズセメガネType-S、Type-Y、Type-M
●サンダル
TOKYO DOME MEMORIALエクストリームブルータルロゴサンダル
●バッグ
WEMBLEYビニールバッグ、TOKYO DOMEビニールバッグ、TOKYO DOMEME MORIALシンバルケース(PCポケット付き)、ブルータルロゴリュック、スピーカー付きキャリーバッグ、巨大キツネ祭りトートバッグ、巨大キツネ祭りTRI-ICONボディバッグ、Legend-S-トートバッグ、CHOSEN SEVENトートバッグ
●マスク
DEATH MASK、FOX MASKⅡ
●旗
クラッシュロゴ(黒白)
●シート/マット
クラッシュロゴレジャーシート、魔法陣レジャーシート、魔法陣ラグマット
●実用小物
3WAYデカロゴイヤフォンジャック、TOKYO DOMEME MORIALスマホケース、TOKYO DOME MEMORIAL魔法陣財布、巨大キツネ祭りラゲッジタグ、CHOSEN SEVENキーホルダー、CHOSEN SEVENアンブレラ
●装飾品
マジックサークルピラミッド、キツ根付、Legend-S-NOTEBOOK、DARKNIGHT CARNIVALスカルチャーム
●楽器
ESP製MINIARROW、ピックセット
BABYMETALの音楽性は「アイドル」とはかけ離れたものであり、SU-の歌唱力、YUI&MOAのダンス、神バンドの演奏は、他を圧する力をもっていたが、こうした数々のプロダクツのデザイン性も、類を見ないクオリティの高さだった。
BABYMETALは、ライブのチケットもグッズの価格も、他のグループより割高だったが、トータルにデザインされたプレミアム感が、中高年ファンの財布のひもをゆるめさせた。
ぼくらメイトは、割高なライブチケットを買うだけでなく、物販ではTシャツ数枚、グッズ数種を購入する。平均1万円は使うだろう。全種買う人も珍しくない。ライブの一人当たり購入額は2万円~3万円になるのである。
2010年~2012年まで、日本は失われた20年間(平成不況)の最終局面にあり、東日本大震災の影響で、景気は低迷し、若者の購買力は低下していた。
相対的に中高年は購買力を持っており、高いからこそ価値があるというプチ贅沢=プレミアム商品がヒットする傾向があった。
BABYMETALグッズは、客層や、こうした経済的傾向も踏まえて開発されたと見ることもできるが、それよりも、KOBAMETALのメタル文化へのオマージュや、「本物のメタルバンド」のクオリティを創出する信念が、アイテムのデザイン志向にも表れていると考えた方がいいだろう。
そして、アミューズの社是である「世界に通用するアーティストの創出」に向けて、テレビに依存しなくても、世界進出の原資を確保できる収益構造を作り出したという意味で、デザインによるプレミアム感を演出したグッズは、大いに貢献したといえよう。
BABYMETALは、果敢に欧米市場に進出したが、ただやみくもに蛮勇を奮って行ったわけではない。
それまでの売り上げによって十分な原資を確保し、神バンド、機材、移動、告知などに予算をかけられたからこそ、日本でのクオリティを維持したまま、海外でのツアーを実施できたのである。
(つづく)