アイドルが世界進出するには(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

本日125日は、2017年、Guns N’ RosesSupport Actとして、神奈川・横浜アリーナに出演した日DEATH

 

113日のライブ「眉村ちあき 東阪クアトロライブ~眉村ちあき × スーパードラゴンゲスト~」@渋谷CLUB QUATTROで、眉村ちあきは満席の観客に、「私は目に見えるほどのスピード感で出世しています。こんなにどんどん規模が大きくなっているにも関わらず、まったくプレッシャーを感じていません!」と力強く語ったそうである。

前回書いた2018616日の「社長対談」には続きがあって、2019年は6月の新木場STUDIO COASTが一つの目標、2020年にはさいたまスーパーアリーナを2Days貸し切って、夜中にファンと「ハンカチ落とし」をするのが目標だと語っていた。

実際、今年53日~6日にさいたまスーパーアリーナで行われる「VIVA LA ROCK 2019」では55日に出演することが決まっている。

地引網ライブやバスジャックライブに参加するコアなファンがいるだけでなく、東阪クアトロライブはSOLD OUTした。眉村ちあきのファンベースが広がっているのは間違いない。

ただし、メジャーデビューアルバムである『ぎっしり歯ぐき』はいきなりベストテンというわけにはいかず、オリコン41位だった。

「世界進出」を目標としつつ、ファンの中心がオジサン、オタクであるアイドルグループのファーストアルバムの順位はどうだったか調べてみた。なお、ランキングはすべてオリコンの週間売り上げ最高順位である。

●でんぱ組.inc

st『ねぇきいて?宇宙を救うのは、きっとお寿司ではなく、でんぱ組.inc!』(20111214日)は132位。

ndWORLD WIDE DEMPA』(20131211日)は5位。

rdWWDD』(日本盤2015218日、EU201587日)は3位。

thGOGO DEMPA』(日本盤2016427日、台湾盤2016520日)は3位。

th『ワレワレハデンパグミインクダ』(201911日)は10位。

PASSCODE

インディーズ1stALL is VANITY』(2014612日)は198位。

インディーズ2ndVIRTUAL』(20160525日)は43位。

メジャー1stZENITH』(20171220日)は20位。

メジャー2ndLocus』(2018312日付)は15

海外デビュー盤となる『Ex Libris Passcode』(2018年10月5日、英JPU Records)の順位は不明。

ベスト盤『PassCode 2016-2018 LIVE UNLIMITED』(20181219日)は93位。

ちなみに、女性メタルバンドLOVEBITESの場合は、

LOVEBITES

stフルアルバム『AWAKENING FROM ABYSS』(20171025日)は18位。

ndフルアルバム『CLOCKWORK IMMORTALITY』(2018125日)』は21位となっている。

世界進出を公言してはいないが、やはり不思議ちゃん系で、眉村ちあき同様「深夜に発見新Shock感」(テレビ東京系)に出演したアイドルの場合。

●ゆるめるモ!

stフルアルバム『Unforgettable Oddysey』(2014714日)は82位。

ndフルアルバム『YOU ARE THE WORLD』(20151111日)は51位。

最新スタジオアルバム『YOUTOPIA』(20171129日)は60位。

ベスト盤『音楽よ回れ!! MUSIC GO ROUND ~ゆるベスト!』(2018521日付)が63位。

●生ハムと焼うどん

「深夜に発見新Shock感」に出ていて、自作楽曲かつセルフプロデュースの天才といえば生ハムと焼うどん(東理紗、西井万理那)であるが、楽曲はライブで演奏される以外には、CD-Rで配布されていたので、全国流通しなかった。東理紗作のコントと楽曲が合体したすさまじい才能を感じるユニットだったが、20174月に「断食」(解散)している。

これらはすべてグループで、比較にならないかもしれないので、「天才」「不思議ちゃん系」の女性ソロアーティストを見てみよう。

●大森靖子

インディーズ1st『魔法が使えないなら死にたい』(2013320日)は圏外。

インディーズ2nd『絶対少女』(20131211日)は53位。

メジャー1st『洗脳』(2014123日)は18位。

メジャー2ndTOKYO BLACK HOLE』(2016323日)は19位。

メジャー3rdkitixxxgaia』(2017315日)は10位。

ベスト盤『MUTEKI』(2017927日)は16位。

メジャー4th『クソカワParty』(2018711日)は9位。

●吉澤嘉代子

st『箒星図鑑』(201534日)は72位。

nd『東京絶景』(2016217日)は33位。

rd『屋根裏獣』(2017314日)は39位。

th『女優姉妹』(2018117日)は14位。

女性シンガーソングライターといえば、シングルヒットを連発するメジャーなアーティストやベテランもいるので、大森靖子と吉澤嘉代子だけではデータ不足かもしれない。

だが、とりあえず「天才不思議ちゃん系」というくくりで見てみると、眉村ちあきの現在のポジションは、これらのグループもしくはアーティストの1st~2ndあたりにあり、地上波出演効果もあって、順調なデビューとはいえそうだ。

問題は、現在「不思議ちゃん系」「天才即興面白アイドル」「一緒に遊べる地下アイドル」という位置づけになっている眉村ちあきが、どう世界進出を果たしていくかである。

というのは、これらのアーティストが、少なくともメジャー1stアルバムを出すまでには「前史」があり、それが、後の展開をある意味決定づけてしまうと考えるからである。

実は、BABYMETALだって、2010年の結成から2013年までは、相当変わった「アイドル」だった。

何といっても結成時には小学校5年生と中学1年生であり、Kawaiiとメタル楽曲という組み合わせ、しかも「キツネ様」「神降臨!」「世界征服」は、ほぼほぼギャグみたいなものだった。バックバンドは2013年まで当てぶりの骨バンドである。

その「面白さ」がシリアスな感動に変わったのは、メタルというジャンルだったからであり、生バンドがついたLegendシリーズのライブや、過酷な国内フェス席巻を渾身のパフォーマンスで果たしていく彼女たちに強い「志」が感じられたからではないか。

デビューアルバムがリリースされたのは、その志に共鳴したファン層をがっちりつかんだ日本武道館2Daysの後だった。

BABYMETAL

stBABYMETAL』(日本盤2014226日、EU2015529日、US2015518日)は、4位。(ビルボード200187位)

ndMetal Resistance』(日本盤EUUS盤とも201641日)は2位。(ビルボード20039位)

現在に至るまで、アルバムはたった2枚だけ。昨年ライブで披露したものを合わせても30曲程度の持ち歌しかない。眉村ちあきのデビューアルバムとほぼ同じ曲数である。

ライブ数に関しても同様である。昨年は国内で5回しかライブを行っていない。

近年のファンサービスといえるのは、2017年のエクスクルーシブイベント、Five Foxくらいである。それもたった5人の選ばれたファンだけ。握手会もサイン会もなし。

メンバーにはTwitterで発信することすら許されていない。

要するに、BABYMETALはクオリティの高い楽曲、ライブ、グッズを提供する以外のファンサービスを一切やらないのである。

実は201422日の日本武道館「黒い夜」で「召喚の儀」があるまで、ファンはBABYMETALが本格的に欧米進出を図るとも、それがここまで大成功するとも考えていなかった。

確かに2013年のメジャーデビュー時に書初めで「世界征服」を掲げていたし、ラジオ番組でYUIが「行ってみたいのはヨーロッパ、ワールドツアーをやりたい」と言っていたのは事実だ。(だからYUIは国内アイドルを目指していたのでBABYMETALを辞めたのだというアンチの言い分は大間違いである)

だがそれは「夢のまた夢」であり、現実になるとはメンバーもファンも思っていなかった。

日本武道館は「アイドル」にとっては夢の晴舞台であり、小中学生だった「重音部」がそこまで来られたこと自体が凄いことだった。

だが、2013年の「イジメ、ダメ、ゼッタイ」でのメジャーデビュー以降、BABYMETALをさくら学院と切り離し、和風メタル「メギツネ」を2nd シングルとしてリリースし、生バンドをつけて国内のロックフェスに出演させ、「ギミチョコ」PVをアップし、シンガポールで初単独ライブを経験させるといった一連の流れは、KOBAMETALが本気でBABYMETALを海外でライブのできるアーティストにするためのシナリオだった。

KOBAMETALにとって、日本武道館はゴールではなく、国内征服完了の証であり、海外進出の踏み台に過ぎなかった。1stアルバム『BABYMETAL』も同様だった。

それはある意味で、ファンへの裏切り行為でさえある。

昨年、二宮海岸で一緒に地引網をして過ごした眉村ちあきのファンは、動画で見る限り約50名はいた。彼らは眉村ちあきが国内で「出世」することは喜ぶだろうが、今後、彼女が本当に欧米で活躍して、ビルボード200にランクインし、手の届かない存在になってしまうとしたらどう思うだろうか。

BABYMETALのもっとも古いファンは、かつてさくら学院の「父兄」であり、数メートルの距離で水野由結に「前の人のバッグが空いていたらどうするか」を相談したり、渋谷タワレコ地下スタジオで、嶺脇社長からの誕生日ケーキの差し入れに菊地最愛が号泣するところを目撃したり、「メギツネ」のヒット祈願イベントで、「SU-METAL DEATH」と自己紹介した瞬間、着物のたもとでSU-の顔が隠れてしまうシーンに立ち会ったりしていた。

だが、KOBAMETALは、国内ファンとの距離感よりクオリティを優先し、欧米市場進出への戦略と戦術にもとづいたプロデュースを行った。だからこそ、BABYMETALは世界的メタルアーティストになれたといえる。

そして、そのことをファンは受け入れ、BABYMETALが世界に羽ばたくことを応援してきたのだ。

(つづく)