UKロック事情(5) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

―May the FOX GOD be with You―
★今日のベビメタ
本日6月18日は、2013年、ニッポン放送「ミューコミプラス」にSU-のみ出演し、2017年には、KORN USツアー・アルバカーキ@Isleta Amphitheaterに出演した日DEATH。

さてそれでは実際に、Download 2018 UKの3日間でぼくが見たバンドの印象から、BABYMETALの置かれた位置を検証してみよう。
まずは6月8日の初日から。
●DRAGON FORCE(Main Stage 6月8日14:55-15:35)
UKパワーメタルの雄ドラゴンフォースは、メインステージ金曜日3バンド目の出番。
「Road of Resistance」のギターを弾いているドラフォはBABYMETALの大恩人であり、ぜひ聴きたいと思っていた。
だがしかし。
車列の渋滞後、ぼくらが停めたWest Car Park6からエントランスまで丘の登り下りで約20分。Iron MaidenデザインのTrooperビールを飲みながら、上機嫌でエントランス近くのチェックポイントに着いたと思ったら、Richardが三人分のチケットを車に忘れたことがわかった。Richardは「ぼくがとってくる」と言ったのだが、中年男三人協議の結果、もう一度仲良く全員で往復したので、フェス会場に入ったのは14:30を過ぎていた。
ようやくメインステージ前に来たのは、ドラフォが始まる直前だった。
PAの調子が悪かったのか、イマイチ音圧が感じられない。観客は、金曜日の午後早い時間ということもあって、それほど熱狂しているわけでもない。それでもサム・トットマン(上手G)とハーマン・リ(下手G)のツインギターは速く、かつ美しいハーモニーを聴かせている。
しかし、数曲やったところで、マーク・ハドソン(V)のマイクが聴こえなくなり、ハーマン・リのギターの出力もおかしくなってしまう。マイクはすぐに復活したが、ハーマン・リは、下手舞台袖からなかなか出てこない。約5分間アドリブでつなぎ、ようやく全員が揃い、ドラフォと言えばこの曲「Through the fire and the Flames」で観客が熱狂したところでフィニッシュ。
●Andrew W.K(Zippo Encore Stage 6月8日16:40-17:20)
ドラフォ終了後、RichardとMikeに、明日のためにセカンドステージを見ておきたいといって、セカンドステージを見に行くと、後方に物販所があり、そこにBABYMETALのヨーロッパ限定Tが展示してあり、売っていた。列に並び10分くらいでなんなくゲット。
セカンドステージは、Andrew W.Kが始まるところだった。
アップル・マッキントッシュ発祥の地、カリフォルニア州パロアルト出身の“パーティ・キング”。モットーは、「パーティは日常生活の出口であり、日常生活の出口はパーティだ!」
2008年に着うた限定で、小島よしおの「そんなの関係ねえ」「オッパッピー」を取り入れた「そんなの関係ねえロック」や、Greeenの「キセキ」、鼠先輩の「ギロッポン」をカバーしており、安藤竜の日本名を持つ。サマソニにも2002年と2006年の2回出演している。
そんなことは、RichardやMikeはもちろん、UKのファンは誰も知らないが、そのステージは最高に盛り上がっていた。キーボードがメインだが、彼自身はあらゆる楽器を弾きこなす天才的楽曲制作&演奏能力をもち、Village Voiceのコラムニストでもあり、Cartoon Networkの番組の司会者でもある文字通りのマルチタレントである。
アメリカ人の彼にとって、UKも日本もボーダーレスの市場なのであり、ギャグから入るという戦略はしたたか、かつ有効なのだ。
今回はバンドを率いての出演。曲調はへヴィなヒップホップとロックンロールのミクスチャーだが、とにかくMCで観客が笑い転げ、盛り上がる。凄かったのは、「よおし、最後の曲のカウントダウンだ!」といって、「99,98,97,96…」と100から数え始め、観客全員が唱和して「…51,50,49…41,40,39…31,30,29…20…」と桁が下がるにつれてどんどん盛り上がっていき、ついに「10,9,8,7,6,5,4,3,2,1,Fire!!!!!!!」となったところでフィニッシュ曲に入るというステージング。いやあ楽しかったあ。いいもの見ました。


●VOLBEAT(Main Stage 6月8日17:20-18:20)
群衆をかき分け、メインステージに戻る。
ロカビリー/ロックンロールとへヴィメタルの融合。黒の革ジャン、リーゼントにごっついタトゥーのデンマーク出身の3人組VOLBEATがすでに始まっていた。
シンプルかつタイトなリズム、吠えるようなボーカル。
古臭いと思いきや、これがメインステージの数万人の観客にウケている。テクニカルなわけではない。シンプルなリフにブルージィなリード。
MCで、「この中に、デンマーク出身の奴はいるか?」と聞くが、ぼくらのいる位置の周りではほとんど手が上がらない。ステージ前にはいるのかもしれない。それでも、ぼくは知らなかったが、ヒット曲は観衆が大合唱する。
オールドスタイルだが、「これが俺たちの音楽だ」という芯の強さが、ジョンブル魂と共鳴するのだろう。
●BULLET FOR MY VALENTINE(Main Stage 6月8日18:50-20:00)
英国を代表するモダンメタルバンド。
構成はメタリカと同じでシンプルだが、曲調はスラッシーな曲から、グランジ、エモ的な曲まで幅広い。
ギタリストは相当な使い手であり、手の込んだリフや速弾きテクニックを見せる。
フレットハーモニクスを使った「♪ピンポーン」という音が印象的な「Tears don’t falls」では、観衆が大合唱していた。
●AVENGED SEVENFOLD(Main Stage 6月8日21:00-22:20)
メインステージ初日のトリを飾ったのは、アイアン・メイデンなどNWOBHMのダークネスを継承して、1999年にアメリカで結成された正統派へヴィメタルバンド、アヴェンジド・セブンフォールド。
バンド名からして旧約聖書からとっており、黒魔術的な雰囲気と、重いドラムスのタイム感、へヴィなツインギターリフは、オールドファッションだが、ぼくにとっては一番しっくりくる“ザ・メタルバンド”という感じ。
ややオールドスクールなへヴィネスを前面に出して、2007年「アヴェンジド・セブンフォールド」で大物バンドにのし上がるが、その直後にドラマーの死という難局を迎える。それを2010年まで、ドリームシアターのマイク・ポートノイ(D)がサポート・ドラマーとなって支えた。アルバム「Nightmare」(2010年)と「Hail to the King」(2013年)は全米、UKチャートで1位を記録し、現在まで世界800万枚に売り上げを誇る大物バンドとなった。
『Metal Hammer』は、Download 2018前の特集で、このバンドを一番推していた。
メインステージのトリのバンドが、Avenged Sevenfold、GNR、Ozzy Osbourneというビッグネームばかりであるので、やや懐古調に振れているのが、今年のDownloadの傾向なのかもしれない。
リードギターのシニスター・ゲイツのギターは、色や形が違っても、すべてストライプの塗装がなされていてステージ映えした。
ライブの途中、ステージ前面で巨大なパイロの炎が上がるたびに黒煙が立ち上り、それが夜9時を過ぎているというのにまだ明るい空に、何重もの輪を作った。演出ではなく自然の産物なので、なんとも不思議な気分にさせられた。


「Nightmare」、「Hail to the King」といったヒット曲、亡くなった親友ドラマーに捧げられたアコースティックな「Dear God」では、観衆がやはり大合唱した。
イギリス人観客は、バンドの歴史や、歌詞に込められた思いをよくわかっているのだと思う。
イギリスのロックフェスは、家族や親しい友人が集まって絆を確認するイベントだけにとどまらない。
人間は死を避けられない。だが、集まった観客は、ひとつの「歌」を唄うことで、時間や死者への思いを共有し、日常生活では目に見えない、巨大な共同体―ロック共同体―を現出させる。
薄暮の丘陵に8万人の歌声が響くとき、バンドやアーティストも、この場にいる観客も、みな生きて、それぞれの人生を歩んでいることが実感される。
不幸も、死も、みな人生の一部。巨大な共同体とともに、死をも超えて、人間が生きる力の源泉に触れる。それがロックフェスなのだ。だから、100%字義通り、これは「お盆」であり「お祭り」なのである。

この感覚は、翌日のGNRにも、最終日のOzzy Osbourneにも感じられた。してみると、BABYMETALの藤岡神逝去、YUIMETAL欠場というDark Sideという現状もまた、単なる「物語」や「設定」ではなく、生身のバンドの生き様として観客に共有され得る。

それが、人々の心にロックが生きているUK市場に受け入れられるということなのだろう。
(つづく)