好きすぎてツライ(15) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-


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―May FOX GOD be with You―

★今日のベビメタ

本日4月26日は、2017年、Red Hot Chili PeppersのUSAツアーSpecial Guestとして、オーランド(FL)Amway Centerに出演した日DEATH。

 

「ギミチョコ!!」編

●2013年12月21日、Legend“1997”SU-METAL聖誕祭@幕張メッセで撮影されたこの曲のMVは、YouTubeの公式チャンネルに、ショートバージョンが2014年2月4日に、フルバージョンが2月25日にアップされた。

3月6日付USA Today紙で、音楽評論家のBrian Mansfieldが「BABYMETALのビデオは最高の傑作-それともその反対?」と題した記事の中で、「デスメタルとEDMのリズム、甘ったるいJ-POPのメロディが奇妙に混ざり合ったサウンド。スピーカーを引き裂くようなギター攻撃で始まって、それがすぐにマシンガンのように速くて小鳥のように陽気なボーカルとコーラスに変わる。まるでチョコレートコーティングされたシリアルと土曜の朝のTVアニメみたいにハマる。とってもくせになる作品。」と評価した。

4月3日にYouTubeの「YouTuber’s React to BABYMETAL」がアップされると、一気に視聴件数を伸ばし、同じようにアメリカ人がリアクションする動画がいくつも現れ、6月末にヨーロッパツアーが始まった頃には、「ギミチョコ!!」MVの視聴件数は1000万件を超えていた。

「YouTuber’s React to BABYMETAL」は、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」「いいね!」「ギミチョコ!!」の3曲を、高校生っぽい女の子、若い男のコンビが中国系、ヒップホップ系、メタル系など数組、インテリ・ゲイらしき白人眼鏡君、ニット帽をかぶった黒人男性、同じニット帽をかぶったニート風白人男性、音楽評論家風中年男性眼鏡有、リベラルキャスター風女史、陽気な音楽好きカップルなどがリアクションするという構成だった。

最初の「ド・キ・ド・キ☆モーニング」では、全員かなりシニカルにMVを見ている。

中には「12歳くらい?」とスタッフに尋ねている人もいる。面白いのは、MVの中でSU-、YUI、MOAが顔だけになって増殖し、ぐるぐる回るところで、「気持ち悪い」「オーマイゴッド」などと叫ぶことである。日本人はマンガやアニメなどでこういう表現に慣れているが、アメリカ人にとっては、顔だけというのは「生首」だと思ってしまうのだろう。いずれにしてもこの人たちは「ド・キ・ド・キ☆モーニング」にはあまりいい印象を持っていないように見える。

続く「いいね!」は、最初のパラパラのところで「EDMだ」と言ってフリ真似をするなどやや好意的になる。「♪YO!YO!」の部分になると女の子は「イエーイ!」といってノルし、ニット帽の黒人男性も体が動いている。そのあと、「♪メロイックじゃないキツネさん」のメタル・ブレイクになると全員「なんじゃこりゃ?」という顔をし、またパラパラに戻ると「もとに戻った!」と叫び、「ジェットコースターみたいだ」「6秒で全部ある」「色々な要素があれば客が大勢入る」などと解説し始める。賛否両論という感じ。

「♪Give me Chocolate」というグロウルのSEが流れると眼鏡君は「チョコレートをくれ、だって?」と笑う。曲が始まると、全員、画面にぐっと惹きつけられていく。

調子っぱずれのキーボードの不協和音に続いて、Eの単音が鳴る中、頭を指さしながら踊るヘンテコダンスをすぐに真似する人もいる。

「♪あたたたたーた…ずっきゅん」「♪わだだだだーだ…どっきゅん」が始まると全員ビックリした声をあげ、笑顔になる。目ざとく、「ステージ後方にVirgin Mary(聖母)がいるぞ!」と指摘する人もいる。「なんじゃこりゃ」感はどんどん強まっていくが、「♪C!I!O!チョコレートチョコレート…」のパートになるとうっとりした表情になり、眼鏡君も「この辺は好き」とポジティブな反応になる。

ギターソロになり、MOAがステージを駆け回ると、会場が大観衆で埋まっていることがわかり、「すげー、3万人くらいいるぞ」「ライブに行きたい」と興奮してくる。若いカップルの女の子は「今日はこの曲を一日中聴き続けるわ」ラッパーっぽい黒人男性は「(この子たちの)背景を知りたい」という。最後に「See you in the mosh’sh pit」の文字が出ると、声に出して読み、「これはどうやって起こったんだろう」「ぜひライブに行きたい」とほぼ全員が好意的な感想を述べる。

Kawaii Metalという触れ込みの「ド・キ・ド・キ☆モーニング」は、欧米に一定数いる日本のアニメ、アイドル、サブカル好きのジャパカルスノッブにはウケたが、一般的にはならなかった。しかし「ギミチョコ!!」は、アメリカの一般層にも響くキラーチューンとなった。

それはなぜか。

●「YouTuber’s react to BABYMETAL」を注意深く見ると、出演者たちが非常に狭い音楽観、価値観しか持っていないことがわかる。

まず服装。各人がそれぞれの好みの音楽やライフスタイルに典型的な服を着ている。これがディレクターの指示だとしたら別だが、おそらくそうではない。素人が集められて寸評しているだけだ。日本なら、大学教授風なのにメタルファンとか、B-Boy風なのにインテリとか、女子高生がセンスのいいブランド服を着ているとか、ひ弱なニートが過激なラッパーのTシャツを着ているとか、「外し」がむしろ普通だろう。しかし、彼らは、まさにキャラクターどおりの服装をしているのだ。凡庸としかいいようがない。

顔がぐるぐる回るシュールな映像を、アートやギャグとして楽しむ文化的経験がなく「生首」だと思ってしまい、「おお!神様!」と叫ぶ。それが「表現」であるとは夢にも思わず、「良識」に反するとでも思っているのだろう。

決定的なのは、「ギミチョコ!!」MVで、ステージ上の像をすぐに「Virgin Mary=聖母」だと見抜き、なにか重大なことが起こっていると思い込むことである。

要するに、この動画の出演者たちは、人種や好みやステータスは一見「多様」に見えるが、一様にキリスト教的な「健全な良識」を持ち、コミュニティやメディアに与えられるもの以外に、自分から何かを求めて文化的、芸術的な探求をしたことがない、非常に単純で底の浅いOrdinary People(普通の人々)なのである。

そういう人たちにとって、「小さくてCuteな女の子たちがラウドな音楽をやっている」「目まぐるしく曲調が変わる」「ジャンルに分類できない」「何を言っているのかわからない」「でも大観衆を集めている」「ダンスがかっこいい」「ワケが分からないけど、一瞬うっとりするところがある」「ライブで見られるらしい」という“常識の破壊”そのものがショッキングで、かつそれが魅力的だったということだ。

アメリカというのは移民国家なので、人々は自分が属するコミュニティや文化的背景をはっきり主張しなければならない。それとともに、社会の共通項としての「良識」を遵守する。タテマエであっても、そうしないと暮らしていけないからだ。コアにあるのが「神の元ではいろいろな出自の人がみな平等である」というキリスト教的倫理である。一見個性的だがステレオタイプで許容範囲内。それが大事なのだ。

しかし、既存の許容範囲内しか認めないのでは社会が進歩しないから、時々、アメリカ社会では常識を打ち破る人が出る。エルビス・プレスリー、ジャッキー・ロビンソン、スティーブ・ジョブス…。こういう人は最初ものすごく叩かれるが、最後にはヒーローになる。

国技ベースボールの“ホームラン”という仕組みが、アメリカを体現している。狭いフィールドを飛び超えて、客席に届くほどの大飛球を打つ人=常識を突破する人は、無条件でヒーローになるのだ。

BABYMETALの「ギミチョコ!!」は、ワールドミュージックとしてのケルティック音楽やK-POPの“ヒット”とは違い、良識的アメリカ人にとって、“ホームラン”だったのである。

では、たかがチョコレートを食べるかどうかで悩む女の子の歌が、なぜ一般的アメリカ人にとって、良識破壊的だったのか。

●聖母マリアを彫刻像にするというのは、キリスト教でもカトリック特有のものである。

ローマ教皇をイエスの一番弟子ペトロの後継者として組織化されたカトリックの信仰体系では、神が選びイエスが宿った母体もまた神聖(=無原罪)であったに違いないと考え、マリアやそのマリアを孕んだお母さんのアンナまで崇拝する。またイエスの弟子たちや殉教した聖職者を、神から奇跡的な力を与えられた聖人として崇拝する。

しかし、プロテスタントは、まず、偶像崇拝自体を認めない。旧約聖書に「あなたの神の像を刻んではならない」とあるからである。ミケランジェロのマッチョなイエスの磔の像とか、グラマーな聖母マリアの彫刻などもってのほかである。そんな彫刻が置いてあるのはカトリック教会だけで、プロテスタント教会の意匠は抽象的でシンプルになっている。

さらに、マリアは人間代表としてイエスを宿したが、神のような力があるわけではない。歴史上の諸聖人も福音を広めるのに尽力したが、神に準じるような存在ではない。

そもそもプロテスタントはローマ教会に反抗したのだから、聖職者すら認めず、神の元で人間はみな平等であると考えている。カトリック教会の神父(=司祭、司教)はローマ教皇から按手を受けた聖職だが、プロテスタント教会の牧師は信徒のリーダーというだけだ。

したがって、プロテスタントの信徒は、マリアや聖人を崇拝するなんておかしなことだと考える。Legend “1997”の最後に行われた聖母マリア像=偶像の破壊は、プロテスタント的にはちっとも悪いことではなく、むしろ「良いこと」ないし「義務」ですらある。(宗派によって微妙に違うが)

ローマ・カトリックは、イタリアやスペイン、ポルトガルの植民地だったラテン系の国々では主流派で、世界10億人の信徒を抱えるが、アメリカでは少数派(20%程度)。

プロテスタントとは、ドイツのルターやスイスのカルヴァンの流れを汲み、聖公会からメソディスト、バプティスト、長老派、ルーテル派、福音派など、無数の宗派の総称だが、アメリカではキリスト教徒の多数派である。

家族の出自や居住地によって属する宗派が決まり、教会がコミュニティの中心となる。どこかのコミュニティに属していることがアイデンティティになり、そこで教えられた「良識」が個人の価値観のベースを作る。

だから、「ギミチョコ!!」のMVで、巨大なマリア像の前で奇妙なダンスをする女の子たちや、骸骨のコスチュームを着た者たちが演奏しているのを見れば、普通のアメリカ人には、明らかに宗教的な逸脱、「尋常でないことをやっている」という衝撃が走ることになる。

しかも唯一理解しうる言葉が「♪Give me Chocolate」というグロウルと「See you in the mosh’sh pit」の文字である。

映像だけでなく、音楽的にも、頭指さしヘンテコダンス、歪んだドライブサウンドで単音E(6弦開放&12F→13F)が鳴り続ける中、調子っぱずれなキーボードのメロディ、「Grrrrrrrr」と高まっていくSE、「♪ずきゅん、どきゅん」というオノマトペは理解不可能で、フラストレーションがたまってきた瞬間、「E→Eaug→F#m7→E」という和音に乗せて、SU-の美しいボーカルが響く。

破壊的で異常なサウンドの中の神聖な響き。聖なる「良識」の破壊。

それを日本人のKawaii女の子たちがやっちまっている!

Ordinary People(普通の人々)にとって、摩訶不思議な「ギミチョコ!!」を歌い踊るBABYMETALは文字通りExtra Ordinary(尋常ならざる存在)に見えたのである。

(つづく)

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