ライブビュー@Zepp東京参戦記(2) | 私、BABYMETALの味方です。

私、BABYMETALの味方です。

アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

「黒い夜」オープニングのKOBAMETAL部分は、「赤い夜」と共通なのでカットされ、いつもの女性ナレーターの語りから始まった。「過去を乗り越える」ことがテーマだという。

そしてシンバル4つ打ちから「BABYMETAL DEATH」。ドーム当日、ぼくは正面に近い三塁側天空席にいたので、タワー上階に白装束が現れたとき「やっぱりここからか」と思ったが、三人は棺桶状花道の突端にいて、十字架につけられた状態で出現した。

直ちに2012-13年のLegend“D”、Legend“Z”が想起される。もう4年前だ。あの頃BABYMETALはさくら学院の「部活動」で、ライブは学芸会みたいだった。中学3年生の女の子を十字架につけるなんて、パロディと言って悪ければ、お芝居以外の何物でもない。だが、その笑ってしまうような悲劇性の聖痕(スティグマ)の向こう側から、アイドルを目指しながら、メタルという音楽に取り組もうとする三人の生身の少女たちの聖なる”リアル“が立ち上がってくるのがBABYMETALというプロジェクトの真骨頂であった。

初めてブレブレのファンカムの中で、「Death! Death!」と叫び踊る三人の少女を見たとき、真っ暗闇の絶望の中にいたぼくは、「死んでしまえ、死んでしまえ」と言われている気がした。それはとりもなおさず、こだわっていたつまらない過去と決別し、「生まれ変わって生きよ」ということだと思った。アイドルなのにDeath!なんて「怖えー!ありえなーい!」と思っている人がいるかもしれない。だが、死とは再生の謂いであり、ヨルダン川につかって一度死に、蘇るプロセスを再現するキリスト教の洗礼と同じ、生まれ変わることを意味する。アイドルとしてのBABYMETALのメッセージは「メタルのパワーで、生まれ変わる勇気をあげるよ」ということなのだ。

”Legend“Z”の白装束を見たときにそう確信し、それがぼく自身の人生のターニングポイントとなって今に至る。恥ずかしいけど、そういうことです。

だから、あのタワー上階の白装束は、遠いLegend“Z”の記憶、再生の原点という演出なのだろうと思う。

話が長くなってしまったが、東京ドーム「黒い夜」BMDで十字架から蘇った三人の衣装は、赤チュチュ!現場でも感じたけど、やっぱベビメタは赤だよなーという安心感がある。

2016年からファンになってくれた人には、黒とメタリックグレーの衣装の方が、よりメタルっぽくてカッコいいかもしれないが、ぼくのようにギリギリ2015年までのファンは、赤がしっくりくるのだ。それで「Death! Death!」とやられると、ああ、三人の少女がトランスフォームしてBABYMETALとなり、ただ今降臨!とテンションが一気に上がる。

続く「あわ玉フィーバー」で、三人の表情がアップになると、LV会場には「うへー!」「ひゃあ!」という声が漏れる。やっぱりKawaiiのだ。ドーム当日にはぼくのうしろに若いメギツネさんたちがいて、「キャー、カワイイ!!!」と絶叫していたが、何度見てもSU-のオーラほとばしる綺麗さ、YUIのロリータっぽさを残した美しさ、MOAの小悪魔的可愛さのバランスは、絶妙というよりほかはない。LV会場は新規さんが多かったらしく、SU-の「歌って」「もっと」に応えて「あーイェイ!」はみんなやるのだが、その前のあわ玉ポーズをやっている人が少なかった。

余韻を残したアウトロのあと、いきなり始まる「電気を消して元気をチャージそりゃ始まるよ」で、会場は「ウキウキミッナイ!」の大合唱。合いの手最難関の「ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト」である。SU-の「Say!」がかかれば「ウキウキミッナイ!」は言えるのだが、「あなたと私(You & Me!)」「今宵は楽しい(ウキウキミッナイ!)」「門限(Crossing Time!)」「ノノノン(No way!)」あたりは、みんなごまかしている。LVなのだから、キッチリやる必要は何もないけどね。

暗転の中「ドンドンッタカタッ」とドラムの音。すかさず「メタッ!」でしょ。「METAメタ太郎」は、「WowWowWoo…woowooWooWooWoo」の新しい合いの手が生まれた曲という意味で「黒い夜」の目玉のひとつ。1番の「君に聞こえているか心の声、君に届いているか仲間の声」のところから、すでに「WooWooWoo…」と合唱している。で、肝心の「ぶっとばせーメタ太郎」が揃わなかった。間奏部分の「WooWooWoo…」は、会場一丸となって大合唱。CDでは途中でキーを半音あげるのだが、ドームでのシンガロングは同じキーのままずっと続き、SU-の歌の直前で半音上げる編曲になっていた。しかし、LV会場ではSU-の歌が入ってもそのままのキーで観客が歌っているから、調子っぱずれになってしまった。ここは要改良だろう。CDどおり最初に半音キーを上げておけばよかったのだ。

「紙芝居」が入り、例の「怒りという獣を神は封印したが、A-KIBAの魔力によって解き放たれ…」という仮想敵A-KIBAの悪が強調される。「Sis. Anger」である。

ドーム当日は、「おい!おら!」だけでなく、「戦え!戦え!お前らの怒りを叫べよー」(YUI、MOAが観客席に向けて耳に手を当てるポーズ)のところで観客も「バカヤロー!」と叫んでいたが、LV会場のぼくの周りでは誰もやってなかった。

もうお気づきと思うが、ビデオ観賞会といえども、2,000人もいるとライブと同じなのである。「ゆいちゃーん!」「もあ!!!」「SU-う」という掛け声はしょっちゅうかかるし、画面上の一挙手一投足に歓声が上がる。

暗転後、またしてもメランコリックなシンフォニー。そして「紅月-アカツキ-」のイントロのピアノ。「幾千ものー」と歌いだした途端、5万5千人+LV会場の観客が静まり返る。隣の30代の男子はまたしてもタオルに顔を埋め、泣き顔を見られまいと必死。ぼくは、バンドが入り、SU-が「アカツキだー」と叫んだ瞬間から、またスイッチが入り、頭と上半身が上下にタテノリするのを抑えられない。青山神の超正確な2ビートが心地よい。「後でヘドバン地獄があるぞ」と理性がささやくが、コントロールが効かない。ツインギターのソロパートではまたしてもエアギターをやってしまう。恥ずかしいけど、止められないのだ。そっちのスイッチが入ってしまったので、泣きはしなかったけど、炎が立ち上る中、回転スジの上で舞いながら歌うSU-の表情にはゾクゾクする。2012年秋のLegend“I”で初披露されたとき、レトロ感漂っていたマントを翻して歌う美少女戦士が、ついに来年にはアニメとして全米に公開されるわけで、いやあ、BABYMETALって、ホントに凄いですよね。

暗転後、聞き覚えのある和楽器のアンサンブルから「セイヤッ!」の掛け声。「おねだり大作戦」だ。昨日(9月19日)の「紙芝居」では、もうパパに「おねだり大作戦」しないとか言っていたのにやっぱりやるじゃないか、と「黒い夜」当日には思っていた。まあ、よく見えなかったライブを2週間後にLVで金とって見せるというのは、やっぱり父兄への「おねだり大作戦」だよな>爆

「おねだり」のあとは神々の遊び「Mischief of Metal Gods」。アップで見るとLeda神のスタインバーガー風ギターは、表側しか塗装されていない手作り感満載。大村神のピンクちゃんに比べてボディが2センチくらい厚い。「NRNR」と「ヘドバン」でもやってたけど、ソロフレーズの最後に左手をヘッド側にぎゅいーんとスクラッチさせるのに、ヘッドレスは有利なのだな。

続く「紙芝居」冒頭のフライングVが地面に突き刺さっている絵で、ドーム当日では見落としてたけど、斜めに雨が走っている。ここから「No Rain No Rainbow」になる。これも記憶違いがあり、SU-は最初からタワー最上階にいたのではなく、下のステージで1番とBメロを歌い、ツインギターソロの間にエレベーターで上ったのですね。それにしても、5万5千人をくぎづけにするこの歌唱力。またしても隣の男子はタオルで目頭を押さえている。よく泣く子は、大きくなるよ。

「リンリンリン!おはようWake Up」のSEリフレインから、「ド・キ・ド・キ☆モーニング」。ぼくなんか下手するとこれで泣くからね。酔っぱらってこれを聴くと、頭の中を走馬灯のように赤レンガ倉庫とか、Legend“Z”とか、レディガガとか、Circo Voladorとか、歴代の衣装を着て必死で歌っていた三人が目に浮かび、その苦闘と成長を思ってボロボロ涙が出るからね。

BABYMETALはアイドル卒業しろとか、ドルオタは去れとか言ってる書き込み見ると、日本人であれ、外人であれ、おまいらわかってねえなあと思うよ。

あと残りは3曲。「ドキモ」から「ヘドバン」の流れだと、銅鑼を鳴らして、斜め上を行く次のサプライズがある予兆。そう思ってドーム当日はワクワクしてきたのだけれど、LVでは何もないことが分かっているから、曲目を楽しむのみ。

「きーつーねー、きーつーねー」から「メギツネ」が始まる。思うに、東京ドーム「黒い夜」のセトリは、1stアルバムの曲順どおり「BMD」から「メギツネ」の流れにしてもよかったが、それではフィニッシュが「ドキドキ☆モーニング」「ヘドバン」「イジメ、ダメ、ゼッタイ」となり、どこかで見たようなライブになってしまうし、銅鑼を鳴らしてサプライズがないと完結しない。都市伝説によれば、今でもプロデュース委員長のYUIがセトリを決めているそうだから、「過去の乗り越え」という「黒い夜」らしさを出すために、「メギツネ」からのフィニッシュ3曲で観客をくたくたにさせることにした、ということではないか。

だって、最初のリフから「ソレ!ソレ!ソレ!ソレソレソレソレ!」と大熱狂している観客に、ブレイクのところでSU-が「Are you ready?」と言いながら、本当にキツネに憑かれた顔を一瞬見せて、「怖えー!」と震え上がらせ、「ソイヤソイヤソイヤソイヤ!」と煽り始めるのは今回初めて気づいたが、YUIちゃんなのである。この煽りはRising Sun よりも1コーラス長く続き、LVといえど観客は興奮のルツボにたたき込まれた。

そして不吉なイントロから「ヘドバンギャー!!!」。いつものことながら、この曲のSU-は男前である。一段低いドスの利いた声で歌う姿は、「デロリアン、入ってきちゃう」のあの中元すず香とは別人である。さあ、ブレイク。ヘドバン地獄の始まりだ。

鋭い眼光を飛ばし、SU-が舞台中央で仁王立ちする中、YUIとMOAは回転スジ、花道を駆けまわり観客を煽る。あの時には感じなかったが、最後には5万5千人が、デモ行進しているような気になってくる。「ピッピーピッピー!ヘドバンヘドバン!ピッピーピッピー!ヘドバンヘドバン!」ぼくももう、これが最後だということがわかっているので、首も折れよとヘドバンした。どなたか、ヘドバンの人数記録、ギネス申請お願いします。

そしてフィニッシュソングとなる「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のイントロが流れる。動画が手元にないからあいまいだが、やっぱり「紙芝居」中、英語で「ぼくらはひとりひとり小さな存在だが、集まればThe Oneになる、不可能が可能になる」とか言っている。ワーナーブラザースのアニメの雰囲気がだんだんわかってきたぞ。昔ムスメたちを連れて映画を見たことがあるが、「プリキュア」と同じで、ヒロインがピンチになると映画が中断して、入り口で渡された光のグッズを観客に振らせる。すると、その力が集まってヒロインたちの「命の力」になり、ストーリーが再開して巨大な相手を倒す原動力になる。

ぼくらに渡された光のコルセットも、そんな意味合いなのだろう。ワーナーアニメBABYMETAL、公開、放映に合わせた光のグッズ販売、これ、新しいビジネスになるんじゃないの。

「あー」でYUI、MOAが全力疾走するとき、上手のMOAはコケなかったから、その時点では花道に水たまりはなかったと思われる。また、肉眼では、それほどスピード感はなかったような気がしたのだが、映像で見ると二人はかなり速く走っているように見える。

LV会場はといえば、ぼくは後ろの方にいたから見えなかったのだが、ピット前方ではモッシュシュが行われた模様。もはやライブ会場だから、「イジメ(ダメ!)」「キツネ(飛べ!)」は、3時間立ちっぱなしのぼくも飛んだよ。最後の「タカドドン、ジャーン!」からの「We are?」「BABYMETAL!」の時の3人の表情は、やっぱりリラックスしていて、ライブをやりきった充実感に満ちていた。「お言葉」がなくても、あの表情が見られれば、まあ満足する。Cアリーナ上手の花道でSU-がスリップして尻餅をつき、YUIが体幹でセーフポーズをとったシーンは、アップじゃなかったけど、俯瞰ショットで撮られていたよ。その瞬間観客席からの「オゥ」という声も入っていた。その後、YUIとMOAが肩を組んで進んだシーン、SU-がYUIにマイクを向けて「We are?」と言わせ、MOAにはマイクを向けつつ渡さないイジワルをして、MOAがヘッドセットで「We are?」と叫ぶシーンはアップだった。

大村神の座りアドリブも、クールなLeda神のアップもあった。最上階での「3!2!1!」からの銅鑼鳴らし、花火はドームで見た通り。「See You!」もなく、サプライズを期待する観客をよそに、ドームに客電がつく非情の俯瞰ショットで終わり。

LVでも期待されたサプライズ発表は何もなく、そのまま著作権カットが入って終わり。「これを持ちまして、BABYMETAL東京ドーム公演ライブビューイングを終了いたします…」というアナウンスを聞き、ぼくらはブツブツ言いながら出口に急いだ。

足はパンパン。腰はガクガク。でもLVで初めて「赤い夜」のすばらしさを味わったし、「黒い夜」の盛り上がりも2度楽しめた。打ち出しは22:20。やっぱり満員になりましたね。

BABYMETALのライブはなんだかんだ言って盛り上がるなあとニコニコして東京テレポートに急いだ。

その後、冒頭に書いたような悲劇がぼくを待っていたのだが。

いよいよ本格的なベビメタロス期間に入る。12月にイギリスに行って、当日券を入手するのは現実的じゃないから、下手すると4月まで続くのかもしれない。でも、紅白出場発表もあるし、グラミー賞のノミネートもあるし、毎年出ている幕張のカウントダウンジャパンに出る可能性も高い。第一、BABYMETALが活動休止すれば、アミューズの株価に影響が出るから、小出しにでも何らかの発表はあるだろうと慰めてみる。

いやあ、つらいなあ、すべてはOnly The Fox God Knowsってのは。