ウェンブリー密着レポートに感涙 | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

「まにゃん」さんのビンゴ!!!(みんなが言いたかった一言)が出たところで、ひとまずバラカンは措いておきましょう。あとはあいつが自分の番組でなんとコメントするかだな。
今日は、「QJクイックジャパンvol.125」の特集「BABYMETALロンドン密着レポート」について書く。FOX Dayの前後から、「ヘドバン」「Music Magazine」「日経エンタテインメント」「別冊カドカワDirect」「Young Guitar」と、活字媒体がこぞってBABYMETALの特集を組んでいる。それぞれ、写真は素晴らしいし、インタビューも長文だし、KOBAMETAL やMIKIKOはもちろん、マーティ・フリードマン、サム・トットマン、カトウタロウなどのミュージシャンから、東大教授や脳科学者のインタビューまで、とにかく充実している。どれを読んでも新しい発見があり、感動する。去年までの「イロモノ」「異物」「まがい物」としての皮肉な取り上げ方とは、まったく違う、トップバンド、トップアイドルとしての取り上げ方である。全く現金なものだ。売れるとなれば持ち上げる。だが、これこそアーティストとしての戦場なのであり、プロデューサーチームが必死で戦略を考え、三人と神バンド、スタッフが渾身の努力をし、ファンがそれを根強く支持し、かつ、本当に世界的に人気が出たからこそ、この現状が生まれたのだ。そして、この関係性をBABYMETALプロジェクトはThe Oneと呼んでいる。The Oneは強い。ぼくたちは全員The Oneだ。ぼくたちは強い。だが、まだまだ小さい。
「QJ」のロンドン密着レポートは、ウェンブリー公演を取材したものだが、市内のSushi屋で開かれた3月30日のメディア向け「Metal Resistance」先行視聴会のようすや、メタルパブやカムデンストリートでの無作為に行った街頭インタビュー、BBCのプロデューサーや「Kerrang!」「Metal Hammer」「Rock Sound」編集長、ヨーロッパでのCD発売元のear MUSIC UKのBABYMETAL担当者、そして、ライブ当日ウェンブリーに集まった世界各国のファンなど、総勢100名以上のインタビューが掲載されている。まず、この気合の入れ方に「よおし!」と心の中で声が出る。
街頭インタビューでは、BABYMETALを知っているという人の比率は50%というところ。これを多いとみるか、少ないと見るか。圧倒的に多いだろう。日本の街頭で聞いてもとても半分はいかない。現に昨日、上野駅前で携帯会社の呼び込みをやっていた綺麗なおねいさんに声をかけられ、「ブログやっているんで通信費が…」と言ったら、「なんのブログやっているんですか」と聞かれたので、「BABYMETAL」と言ったら、「へヴィメタルですか?」と聞き返されてしまった。店頭ではももクロの「Chaimax」がガンガンかかっていた。
ロンドンで、日本のバンドがこれだけの知名度があるのは、驚異的と言っていい。
ライブ当日のファンの中には、30代で音楽から離れて以来こんなのめりこみ方をしたアーティストはいないという日本から来た60代の男性や、ガンになって余命幾ばくもないことを知りロサンゼルスから来た女性体育教師、学校でいじめられ不登校になって自殺しようと思ったが、「イジメ、ダメ、ゼッタイ」のビデオを見て勇気づけられたという、ケント州から来た青年のインタビューもあった。
雑誌の編集長や、BBCのプロデューサー、earの担当者は、異口同音に、BABYMETALが、彼ら自身の長年のキャリアの中で、今まで見たこともないスピードで成長し、広がっている稀有の存在である、という意味のことを述べている。
「Metal Hammer」の編集長、アレックス・マイラスの言を引用しよう。
(「QJ」vol.125 P26-27引用)
「ブリクストンでライブを見るまで、本当のところ、魅力やどのような現象が起きているのかわかりませんでした。日本人や日本文化が好きな人ばかりだと思ったんです。」(中略)「メタルが発明されてから40年以上経った。(中略)本当に幅広い年代・国籍・人種の人々がメタルのライブに来ています。そして、BMはまたこの40年続いてきたメタルの歴史の新たな1ページなのです。ブラックサバスはこの音楽を発明したとき、こんなことが起きるとは考えてもなかったでしょう。予測できない方向で、素晴らしい音楽に成長していっているわけですから。」(中略)(最後に、彼女たちの最大の魅力を教えてください、という質問に)「勇気だと思います。ステージにいるとき自信たっぷりに見えますし。バンドもそのように見えます。ステージ上の彼女を見ると笑顔になってしまいますし、自分がメタルヘッズであることを誇りに思います。多分、まだまだ世界ではなにが起きているのか全然わかっていなくて混乱している人がたくさんいるでしょう。その混乱している部分こそが素晴らしいところなので、そこでなにが起きているか、自分たちのような存在が伝えていくべきだと思っています。」(引用、オワリ)
この、なにが起きているのか全然わかっていなくて混乱している人の一人が、かの日本在住イギリス人音楽評論家なのでしょうな。さらに、ear Music UKのかつてメタリカ担当で、現在BABYMETALの担当となっているジョナサン・グリーンは、こう述べる。
(同書p.33引用)
「契約する前にソニスフィアで見てるんだ。驚異的だった。バックステージにいたんだけど、みんな立ち止まってたよ。何なんだこの3人組は!?って感じで、小さくて、ヘンテコな衣装を着て、でも本当に存在感があって…。なんというか政権交代っていうかね、新しい子達が登場して、古いやつらが敬意を表してるんだ。ロックという音楽において、すごく重要な瞬間だったと思うよ。BMの成功は、ロックの歴史を書き換えたというかね。」
古いやつらなのに敬意を表さないのは、誰だ?ロックの歴史が書き換えられた瞬間を知らないロック評論家って誰だ? まあ、チクチクいじめるのはやめておこう。
QJの白眉は、ウェンブリーライブのレポートで、セットリストに従って詳細に解説してあるのだが、WOWOWの放送前なのでここで紹介するのは控えます。だが、開演前、必ずしも熱狂的ファンばかりではなかったのに、BABYMETAL DEATHで、三人がせり上がりから登場した瞬間、オーディエンスの動きが止まるほど引き込まれていった様子や、「紅月-アカツキ-」でSU-が「かかってこいやー」とシャウトした気合い、「4の歌」「GJ!」でYUIとMOAが屈強なメタルヘッドたちを手玉に取り、笑いに包まれた様子などが克明に記されていることは紹介しておきたい。
そして、「The One」のシーン。ちょっとだけ引用させて、ね。
(同書、P.39引用)
「サビの部分で日本のライブビューイングの会場の映像がスクリーンに映し出され、日本とイギリスがつながる。SU-METALが歌い、客席には幾重にもたなびく各国の国旗が広がった。3人のパフォーマンスに合わせて揺れる国旗のひとつひとつを見ていると、この取材で出会ってきた幾人もの人々の顔が浮かび上がってきた。ある人は孤独を乗り越え、ある人は病を抱え、ある人は友情を育み、それぞれの今を闘いながらここに集結した。この国旗一つひとつはただの記号かもしれないが、まったく異なるバックグラウンドを持ちながらも、BABYMETALという3人の少女と神々が奏でる音楽のもとに集まった、とても美しい光景だった。」
ここを読み、ライブ後わんわん泣いているイギリス人女子ファンの写真を見ていたら、ぼくも、電車の中で「ううっ…」と声が出てしまい、涙がほほを伝ったのを、隣の人に見られてしまった。QJの表紙はSU-、YUI、MOAの写真だから、絶対に変態だと思われたに違いない。