最終更新日:2019年09月24日
こんにちは、暮らしの畑屋そーやんです。「野菜づくりを始めるときにオススメの培養土や肥料は何ですか?」とよく聞かれます。そのときに僕がオススメしているのが金澤バイオ研究所が作っている九州大学ブランドグッズ有機肥料「土の薬膳®」です。僕の畑でも利用していますが、ここの土だと、とても丈夫で健康的な野菜が育つのです。この土の秘密は何やら「超好熱細菌」という微生物にあるようです。今回はその超好熱細菌について、開発者の金澤晋二郎先生に詳しくお聞きしてきました。
【プロフィール】
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金澤晋二郎(かなざわ しんじろう) 株式会社 金澤バイオ研究所 所長。元九州大学農学部教授。専門は土壌微生物、土壌生化学、環境微生物学、未利用有機物の資源化など。2001年の九州大学で行われた「学内ゼロエミッションプロジェクト」で提供した超好熱細菌をもちいた「超高温・好気発酵法」による有機質肥料「土の薬膳」が好評だったことをきっかけに、退官2年前に株式会社 金澤バイオ研究所を設立し、土づくりに取り組む。常時80度以上の高温で好気発酵を行う超好熱細菌を利用した「超好熱・好気発酵法」を開発し大腸菌、害虫病原菌、寄生虫、雑草種子などを死滅させたクリーンで高品質な肥料「土の薬膳®」を開発する。その他、様々な企業や機関との共同研究やプロジェクトも手がける。 |
超好熱細菌とは
――ここで作られている培養土の一番の特徴は、超好熱細菌による有機肥料「土の薬膳®」を肥料として製造されているところだと思います。この超好熱細菌の特徴について教えていただけますか。
微生物はね、種類によって増殖する最適な温度が違うんだよ。普通そこらへんにいる中温(常温)菌は20度〜40度くらいを好むんだけど、だいたい50度以上になると活動を休止してしまう。それ以上の温度を好んで生育する菌を好熱菌、さらにその中でも80度以上のかなり高い温度帯でよく生育する菌を超好熱菌と言うんだ。
――そんなに高い温度のところでも生育できる菌もいるんですね。それはどうやって発見したんでしょうか。
九州大学に転勤する前は鹿児島大学にいてね。鹿児島県は活火山地帯で、温泉もたくさんあるでしょ。そういう常に高温にさらされているところに超好熱菌はいるわけ。微生物学者は、狩人だからね、いろんなところの微生物を捕まえにいくわけよ。微生物は人間と違って単純な構造だから、どんな環境下でもすぐに対応できるように遺伝子を組み換えて適応していっちゃう。このような機能を有する微生物がいたらいいなとか、このような物質を分解できる微生物が欲しいなと思ったら、だいたい見つかるんだよね。
それに加え、微生物が地球上に現れて40憶年を経過しているため、あらゆる環境に対応できる微生物種がすでに地球上に存在しているとも言える。例えば、放射能耐性、超低圧耐性(成層圏)、超高圧(地殻深層)耐性微生物も存在する。
超好熱細菌での堆肥づくりのメリット
――その超好熱細菌で堆肥をつくると何が起きるんですか?
普通、堆肥を作るときは発酵熱で65度くらいまで上がるんだけど、そこにこの超好熱細菌の培養液を水で薄めて散布すると、温度が80〜90度くらいまで上がるんだ。そうするとね、雑草の種とか病原菌とか寄生虫の卵とかも全部綺麗に死滅・分解されちゃうんだよ。
――病原菌とか寄生虫の卵が残っていると怖いですね。普通の堆肥ではそういうのも残っちゃうものなんでしょうか?
60度くらいでも、じっくり時間をかければちゃんとそういう菌や卵も死滅されるんだけどね。乾燥させて水分を30%以下にすれば、悪臭を発生する腐敗菌が活動しないから、堆肥として早く売ることはできる。しかし、この状態だとちゃんと未熟な有機物が発酵分解されているとは言えない。十分に大腸菌、病原菌、寄生虫の卵などが死滅していない堆肥を使うとどうなると思う? 今度は畑の中で害虫・病原菌か増えて農作物などが病虫害に侵されることになるんだよ。そうすると農薬が必要になってくるんだよね。
――なるほど、堆肥が原因で病気になってしまうこともあるんですね。超好熱細菌ではなくとも時間をかけて堆肥化すれば、病原菌や寄生虫の卵は少なくなるんでしょうか。
うん、特に病原菌なんかは栄養豊富で未熟な有機物があるところじゃないと生きられないから。ちゃんと分解された堆肥だったら、これらの病原菌の増殖はなく、生残していて機能性の高い貧栄養細菌である土壌生息微生物に食べられちゃうんだ。ただし超好熱細菌じゃないと分解しきれないものもある。それが農薬とか家畜糞尿に含まれている化学物質。それも超好熱細菌だと分解しちゃうんだよ。すごいだろ?
――え〜! それはすごいですね。化学物質まで分解しちゃうんですか。
そう。爆発的に微生物が増殖して高温状態となると、通常分解できないものも分解しちゃうんだよ。例えば、ダイオキシンなんかも分解しちゃう。普通、分解酵素というのはタンパク質だから高温だと変性し失活してしまうんだけどね、超好熱細菌の酵素は高熱耐性酵素(100℃以上でも高活性を維持)なのでそれに耐えるんだよね。
超好熱細菌を使うと堆肥化のスピードが早くなる
仕込み後二日目の堆肥。温度は75度まで上がっていた。中心部の温度はもっと高いという
――普通は堆肥ができるまで半年はかかりますが、堆肥化されるスピードも普通の堆肥より早いんでしょうか?
高温だから分解スピードも早いんだよ。温度が10度上がるとね、1.7倍〜1.9倍くらいは分解スピードが上がるんだよ。ここでは常時80度以上をキープしてるから25日もあれば堆肥ができちゃう。でも念のため1カ月半はかけてから出荷するけどね。だから品質のことで一回もクレームが出たことはないよ。
――それは革命的な早さですね。
さまざまな原料を堆肥化できる超好熱細菌
――ちなみにここではどんなものを原料に堆肥化してるんですか?
米ぬか・大豆おから・アガリスク菌床・竹パウダー・ビール麦芽かす・かき殻とか、食品産業がら出される良質の有機資源を再利用してるんだ。特に米ぬかとかおから・ビールかすは、ものすごく栄養豊富なんだよ。竹もね、処分に困ってるところが多いけど、良質の炭水化物や必須多量元素のケイ素が豊富なため、ケイ素が作物を頑強にしてくれるんだ。
――確かに! うちでも金澤バイオさんの土で野菜を作っているんですが、ものすごく茎が丈夫で葉も肉厚なものができました。竹の中のケイ素がポイントだったんですね。逆に超好熱細菌での堆肥化に向いてない原料とかってありますか?
いやぁ、あんまりないよ。ほとんどの有機性廃棄物ですでに研究し尽くしたんだけどね、例えば、下水・食品汚泥、家畜糞尿、生ゴミ、剪定枝、魚カス等々の原料で発酵実験は終了しているんだ。
――それはすごい。超好熱菌はいろんな可能性を秘めていそうですね。
超好熱細菌の特徴まとめ
- 常時80度以上の高温で発酵する
- 雑草の種・病原菌・化学物質・寄生虫などを全て死滅・分解できる
- 堆肥化のスピードが格段に早い
- さまざまな原料を堆肥化できる
- 機能性の高い有機肥料となる