2017年 中国 全86話
(第1部42話、第2部44話)
チャンネルNECOにて録画視聴しました
舞台は魏・呉・蜀の三国時代
蜀の天才軍師、諸葛亮(孔明)と並び称される、魏の切れ者軍師、司馬懿が本作の主人公
後漢·朝廷の丞相で魏の大王、曹操の目に止まり、曹丕、曹叡、曹芳と続く皇帝三代に渡り魏の重臣として献身的に仕え続けた一人の軍師とその家族の物語
日々命懸けの毎日の中、ユーモアを忘れず、家族を愛し部下を愛し、壮絶に生きた司馬懿の一生に、ただただ圧倒されました
今まで見た中国ドラマの中で一番長い86話の大長編ですが、中だるみは全く無くて最後まで面白かったです
俳優さんたちの演技も素晴らしく、力作の極み
大変見応えるのある作品でした
あらすじ
物語は司馬懿の妻張春華が次男昭を帝王切開の末に出産するシーンから始まる
執刀したのは神医と謳われていた華佗
時は後漢末期、献帝をお飾りの皇帝に据えた丞相曹操が、我が物顔で朝廷を牛耳っていたため、影で曹操暗殺を企てている家臣たちが数多くいた
その一派に重臣である司馬懿の父司馬防も関わっている事を知った司馬懿は、それまでは目立たないようにひっそりとプータローの文人として生きて来たが、父が投獄され司馬家存亡の危機に瀕し、否応なく表に出ざるを得なくなる
そして、司馬懿の策略が上手く行き、司馬家はなんとか危機を脱する
しかし曹操は司馬懿の並外れた才能を見抜き、配下になるよう誘いを掛ける
それを自らの足を馬車に轢かせて砕き車いすの身となり、断る理由となす司馬懿
とは言え足も回復し、結局は曹操に士官せざるを得なくなる司馬懿は、気の合う曹操の長男曹丕の部下となり、曹操の次男曹植とその参謀で悪知恵が働く危険人物楊修との、曹操の世継ぎを巡る戦いの矢面に立たされることになる
曹操はどうして勇猛果敢で頭も良い長男曹丕を毛嫌いして、書や音曲に秀でた優男の次男曹植をあからさまに贔屓するのか謎
誰が見ても跡継ぎには曹丕が適任と思えるのに、曹操夫婦はなぜか曹植を溺愛し、特に曹操は曹丕に終始厳しく辛く当たる
そのあからさまな依怙贔屓を見て曹植に取り入り、その参謀となった楊修は、あまりに尊大な態度を取って曹操の怒りを買い処刑されることになる
明日は我が身と身を引き締める司馬懿
曹操軍を指揮し後漢の要人袁煕を倒した曹丕は、その美貌で名高い残された妻甄宓を曹操の命により正室に賜る
しかし甄宓は取っ付きにくい曹丕より、何かと自分を元気付けようと気を配る曹植に好意を抱いていた
曹植もまた美しく優しい甄宓に深く心魅かれていた
戦いで手に入れた女人に手を出そうとしていた部下たちを厳しく叱責していたのは本当は曹丕だったが、これも曹植だと甄宓は勘違いした節があり、曹植には好意を、曹丕には心を閉ざしたまま曹操の命通りその妻となる
強者曹操も病には勝てず、その死の間際で後継者に認めた曹丕に対して曹植を跡継ぎにしようとしたのは自らの誤りだったと謝りの言葉を残しつつ世を去るのだが、曹操との確執で疲れ切った曹丕にとって、司馬懿の妻の義妹である愛する側室の郭照と腹心司馬懿だけが心の支えだった
甄宓と曹丕との間に生まれた曹叡は利発な子だったが、曹丕は曹植と甄宓の仲を邪推し、ある日とうとう甄宓に毒杯を飲ませて死に至らせる
その事を根に持った曹叡は、以後決して父曹丕に心を開くことなく
曹丕の死後皇帝の座につくと母の仇討ちとばかりに郭照を死に至らせ誤った復讐を遂げるのである
曹叡は司馬懿に対しても無理難題を吹っかけては司馬懿を葬ろうと虎視眈々と狙いつつ、表向きは司馬懿を一番頼りにしているとしおらしく接して来る芝居巧者だ
しかし全てお見通しの一枚上手の司馬懿はスルリスルリと危機を脱して行く
父親の影響で心身ともに病み早々に死んでしまった曹丕よりもまた一段と精神を病んでいた曹叡は、体も蝕まれ、36歳の若さで世を去り、その後皇帝となった幼君曹芳の後見人となった司馬懿は、好機を得てとうとう自ら兵を挙げる
「私はこれまで他人の手中の刃だった。
今度は私が刀を振るう番だ。」
蜀の軍師で丞相として有名な諸葛亮(孔明)と司馬懿との知恵比べ、戦いの駆け引き、宮中の争い、司馬懿の息子たちや家族の話、どこまでも司馬懿を目の敵にする曹真との対立、その他にもたくさんのエピソードが絡んで物語は展開する
そしてその道は最終的に三国を統一する司馬氏による晋王朝の礎を築くことになるのだった
主な登場人物
魏の軍師、司馬懿
司馬懿/ウー・ショウポー 本作の製作総指揮も担当
冷静沈着、終始自らを客観視できる洞察力を持つ
思い切りの良さ、度胸の良さに感嘆するが、全てが計算ずくの怖ろしさ
家族思いで部下にも心を砕くが、いざと言う時にはヒジョーに冷徹
日々生死の境目を生きて来たため、我が身と家族を守るためには仕方のないことかも知れない
その半面ペットの亀をこよなく可愛がる優しさや辛い時にもユーモアを忘れない心の余裕も持ち合わせている
司馬懿の正室、張春華
張春華/リウ・タオ
長男司馬師と次男司馬昭の実母
若い頃は江湖を渡り歩いていた剣の使い手
気が強く頼りになる存在で司馬懿にとっては妻であり同士である
長男、司馬師
司馬師/シャオ・シュンヤオ
父の教えに忠実に生きる心の清い実直な人物
正義感が強く家族思いで情に篤い人格者である
次男、司馬昭
司馬昭/タン・ジェンツー
才気に溢れるが思慮分別に乏しく、計算高い性格は歳と共に酷くなり、何かと大問題をやらかす司馬家一のトラブルメーカー
司馬懿の側室、柏霊筠
柏霊筠/チャン・チュンニン
元々は曹丕が無理やり見張り役として司馬懿に押し付けた柏霊筠だが、司馬懿の人柄に惚れ込み自ら側室になり、その深い洞察力と智恵に深く感銘した司馬懿は、何とか妻を説き伏せ離れに住まわせ、良き相談相手となる
柏霊筠を如何にして家に入れるか、あの手この手で成功させる司馬懿と春華とのやり取りは実に面白かった
難事に的確な助言をくれる柏霊筠は、司馬懿にとって大切な存在
最後に柏霊筠は司馬懿の無慈悲なやり方を憂い、自ら袂を分かつ
潔く賢く美しい実に見事な女性
なのに一人息子は悪賢く成長して残念
チャン・チュンニンさんは台湾ドラマで知って、もう20年くらいになります
お変わりない美しさ、品の良さにうっとりです
春華の義妹、郭照
郭照/タン・イーシー
正義感が強く真っすぐな性格
相思相愛の曹丕に望まれて側室になり、曹丕の心の拠り所となるが曹丕の死後、義理の息子である曹叡に殺されるという悲惨な最期を遂げる
司馬家の厨房係、侯吉
侯吉/ライ・シー
司馬懿をいくつになっても「若様」と呼び、戦場にも供をし食事の世話をしつつ必要とあらば早馬にも乗る、司馬懿にとっては一番の強い味方で心の友
あれだけ兄司馬懿を尊敬し従っていた弟司馬孚でさえ、何千人も虐殺する命を出した司馬懿には付いて行けず、縁切りをして司馬家を去り、最後に司馬懿の傍に残ったのはこの侯吉只一人
愛する小沅を殺した司馬昭を結局は見逃してしまう司馬懿に堪忍袋の緒が切れかけるが、今の司馬懿には自分しか残っていない事を悟る侯吉は、司馬懿に亀を使ったいたずらを仕掛けてそれで水に流すという、優しい、優しい人物である
司馬懿を誰よりも理解してくれた人物と言えよう
無残に死んだ小沅の魂を温めるかのように、侯吉は小沅の位牌と結婚式を挙げる
媒酌人は春華の位牌を抱いた司馬懿
侯吉には本当に小沅と幸せになってもらいたかった
亀を水に放ち、馬車を引きながら天寿を全うした侯吉の亡骸と共に、川辺で華佗五禽戯を演じながらその命を閉じる司馬懿
最後の最後まで侯吉にとって司馬懿は若様で、司馬懿にとって侯吉もかけがえのない存在で、司馬懿には侯吉がいてくれて本当に良かった
私としては侯吉は本作中、一番好きなキャラクターでした
司馬家以外の人物を少しご紹介しますと・・
圧倒的な存在感の魏の大王、曹操
曹操/ユー・ハーウェイ
何しでかすか、何言い出すか、万人が曹操の出方を恐る恐る見守ると言った、ほんと独裁者の空気感を醸し出していて恐ろしい
家来たちどころか息子たちも恐れおののくその圧倒的存在感
周りの人達は大変です
私の中では曹操=チャン・フォンイーさんでして、最初勝手に違和感ありましたが、ユー・ハーウェイさん、素晴らしかったです
個人的に印象的だったその他の人達
その① 曹操の軍師、荀攸
荀攸/ヤン・モン
身の危険も顧みず、曹操に苦言を呈した正義の士
用無しと見るや掌返しの曹操の冷酷さにも「そこまでしないといけないものか」と一言言っただけで潔く命を絶った高潔さに涙
その② 曹植の参謀、楊修
楊修/ジャイ・ティエンリン
才能豊かで自信家で頭の回転が速く、曹操からも高く評価され愛息曹植の参謀にするが、分をわきまえない所があり、やり過ぎて曹操の怒りを買い、処刑される
ライバル司馬懿を何とか罠に落とそうと画策するが、その上を行く司馬懿に結局は負けることに
その死に臨んで牢に会いに来てくれた司馬懿と酒を酌み交わし処刑場に笑顔で赴く楊修
普段から肝を据えて毎日を過ごしているからなのだろう
悪賢い人物ではあるが、死に臨む潔さには感銘を受けた
その③曹叡の側近の宦官、辟邪
辟邪/チャン・ティエンヤン
曹叡が唯一心を許した宦官、辟邪
その立場を利用して賄賂を強要し財を貯め、曹叡には都合の良い報告ばかり行う悪賢い宦官だが、曹叡の悲惨な身の上を一番よくわかっている人物で曹叡を心配するその気持には嘘が無いように見える
曹叡の命が短いとわかっても唯一傍で曹叡を支え続け、曹叡亡き後すぐさま投獄される
身ぐるみ剥がされた辟邪に司馬懿が衣を届けると、辟邪は司馬懿に笑顔で礼を言う
「これでやっと人に戻れる」
これはいったいどんな意味なのだろう
辟邪の覚悟の上の笑顔が心に強く残った
その➃ 曹爽の参謀、何晏
何晏/イエン・ウエンシェン
最初見た時、あまりにお綺麗で小柄な方なので女優さんかと思いました
付け髭かと思いました
第一そんなお話ではないし、気付けばお声が男の人だし
と言う事で男性と納得
しかし、この風貌が実に何晏と言うあざとい役にピッタリでした
最初司馬昭を利用するため近付いて友達になり、罠にかけたつもりが逆に司馬昭の罠にかかって
終わってみれば司馬昭はまさに司馬懿の息子でした
母親似は実直な兄の司馬師
その二人で今後の司馬家を率いて行くのでしょう
3年以上前に録画してBDに落としたままほったらかしにしていた本作、タン・ジェンツー見たさにやっと日の目を見ることになりました
もっと早く見れば良かった
ウー・ショウポーさんの作品にハズレはありませんね
三国志ものは数えるほどしか見てなくて、知らない事ばかりで、今回とても勉強になりました
一度見ただけなので、間違った事書いてたらご容赦ください
タン・ジェンツーは、やはり只者ではございませんでした
素晴らしい俳優さんです
難役を上手に演じてて、びっくりでした
もちろん「猟罪図鑑」の時のタン・ジェンツーの方がずっと好きですけど
全86話の大長編を見終わってすごいもの見たぞ~~!!な達成感に感無量です
長々と拙い感想文、失礼致しました~
最後に美しい柏霊筠の写真を一枚
画像お借りしています