ナギが呼んでいる | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン



深田晃司監督は、濱口竜介監督や是枝裕和監督と並び、今、世界が注目する監督である。
もともと映画を学び、劇団青年団に所属するという異色の映画監督だ。
以前彼のワークショップオーディションを受けたことがあり、その後別のところで少しだけ話をしたことがある。


その時は「ほとりの朔子」がナント三大陸映画祭グランプリを獲得した直後であった。
彼は終始穏やかで、映画作りも昔の映画監督とは違う、独自の路線を築いている。
「ナギダイアリー」


青年団の平田オリザさんの「東京ノート」から着想を得た作品。
正直、内容を一言で語るのは難しい。
中心になるのは、松たか子さん演じる彫刻家。


セクシャルマイノリティーでどこか孤独を抱える女性が、岡山県奈義町でひっそりと暮らす。
そこを訪れるのは、石橋静河さん演じる彫刻のモデル。
彼女は主人公の弟の元妻である。


ナギでの静かなる一騒動と言うべきか?
他作品のように大きく物語が動くわけではないが、彼女の登場により彼らにうねりが起こる。
彼女は都会の人間であり、ナギのことを知らない人間である。


ナギには自衛隊の駐屯地があり、砲声が当たり前に響く。
暮らせば慣れると言うが、都会とは異なる光景に驚きを隠せない。
そこで暮らす彼らにも日常があり、平和なばかりでもない。


その積み重ねが「ナギダイアリー」の骨幹である。
皆それぞれ価値観は違えど、逞しく生きている。
悩みを抱え、過去を抱え、それでも前を向いて。


映画では、問題は何も解決しない。
田舎でこれからも暮らす彼らの未来に、答えは用意されてない。
田舎が恋しくてナギも素敵だなと思った自分は、もう東京で40年以上暮らしている。