母とは何て厄介な存在 | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


「しびれ」
幼い主人公は古い白黒のバスター・キートンの映画を観ている。
キートンは声を発することもなく、無表情のままだ。


これ程生々しい映画もそうはない。
内山拓也監督の自伝的作品とのことだが、だとしたら相当ヘヴィーだ。
主人公は幼い頃、父親の激しい暴力で声を出せなくなった。


父親は姿を消し、母親は女手一つで息子を育てた。
しかしそれは育てたというより、時々現れたと言った方がいいかもしれない。
主人公は食べ物や生活に必要な物を盗み、学校に行くこともなく、孤独に暮らした。


母親は水商売をし、体を売った。
宮沢りえさんが体を張って母親を演じ、声を失った息子を3人の子役と北村匠海さんが体現している。
新潟の寒空にポツンと立った主人公には、行き場もない。


芝居の同期がワンシーン出演している。
同期の活躍は、昔は喜びよりも悔しさの方が強かった。
今は自分も余裕が出たのか、ちゃんと客観的に観ていられる。


彼女は当時自分の相手役も務めてくれたが、当時から上手かった。
小さい役ながら生活臭を漂わせ、リアルだ。
これまでも佐藤二朗さんや光石研さんの相手役に抜擢され、映画ファンとしては嫉妬してしまう。


さて道が逸れたが、「しびれ」は好き嫌いきっぱり分かれるだろう。
物語を一切排除し、主人公の成長を見つめる。
内山拓也監督、渾身の一作であり、覚悟の一作である。