未解決事件に惹かれて | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


未解決事件は我々を刺激する。
映画によっては事件の全貌が明らかにならないので、カタルシスを得られないものもある。
犯人が現れた方が分かり易く、観客にも伝わり易い。


未解決事件を扱ったもので傑作と言えば、ポン ・ジュノの「殺人の追憶」やデヴィッド・フィンチャーの「ゾディアック」。
前作「悪なき殺人」が好評だったドミニク・モル監督も、この辺を狙ったのだろう。
フランス映画のセザール賞6冠を制した「12日の殺人」も、未解決事件を追い掛けた作品。


女性が、ガソリンをかけられ、火だるまになって殺される。
理由は?
犯人は?


パルムドールを受賞した「落下の解剖学」もそうだが、人間が炙り出されることによって分かることがある。
「12日の殺人」では、被害者の女性が男性遍歴が豊かだったことが明らかになる。
容疑者が次々現れるが、彼らが口にするのは彼女の奔放な私生活。


警察もまた、彼女を蔑視する発言を繰り出す。
この映画の軸は、語れない死者が女性であるということ。
生きたまま焼かれた彼女が、まるで悪いことでもしたかのように心ない男性達によって、酷い言葉で語られてゆく。


監督は、前作「悪なき殺人」も好評だったドミニク・モル。
昇進したばかりの刑事と、家庭に問題があるベテラン刑事のバディムービーでもある。
派手な展開はないが、じっくりリアルに見せる演出が光る。


事件はもちろん解決していない。
犯人はあの容疑者の中にいたのだろうか?
フランスでは、事件の2割が未解決事件なのだと言う。