シモーヌ・ヴェイユという生き様 | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


仕事でキックボクシングを教えている。
人気のあるインストラクターではないけれど、ごく稀に自分に教えを請う人たちもいる。
最近、強くなりたい女性が熱心に通い続けている。


多い時は週5日。
本当に毎日のように通い続け、男性陣と拳を交える。
一方的で歯が立たない時もあるが、その戦う姿勢は見る者の心を打つ。


役者の頃は自分自分で、自分の状況を変えたいばかりだった。
今は何か人のためにというと大袈裟だが、自分のアドバイスが人のためになるなら、それはとても生き方として良いのではと思えるようになった。
彼女がそれによって強くなり、前を向いてくれるなら。


さて、本題。
フランス映画「シモーヌ~フランスに最も愛された政治家」である。
この人こそ、人のために死力を尽くした政治家であった。


シモーヌ・ヴェイユ。
女性の権利委員会を設置し、女性のため、移民やエイズ患者ら弱者に目を向け、果敢に戦った女性政治家だ。
過去と現在を往き来する構成が見事で、彼女が何故そういう人生を選んだかが後半に分かる仕組みだ。


凄絶な過去があり、のたうち回る程の苦しみを超えて、未来の彼女がいる。
大勢を目の前に自身を奮い立たせて戦う姿は、勇気と感動をくれる。
監督は、「エディット・ピアフ」や「グレース・オブ・モナコ」のオリヴィエ・ダアン。


特に今回は力の入り方が違うのが分かる。
それに応える主演のエルザ・ジルベルスタインの演技も、凄まじい。
晩年までの約40年間を演じ、8㎏の増量で威厳と迫力を備え、正に命を削るような演技。


今年最高の1本と言っていいと思う。
人に苦しめられ、窮地に立たされ、生死を彷徨うけれど、助けてくれるのも人だ。
シモーヌ・ヴェイユの生き様が、現代を生きる我々に訴える。
「生きろ」と。