居場所のない私はだーれ? | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


キネマ旬報で新人女優賞を受賞した嵐莉菜さん主演作、「マイスモールランド」。
映画の評価も高く、彼女を絶賛する声で溢れていた。
新宿ピカデリーで凱旋上映。


クルド人家族が在留資格を失い、次第に追い詰められていくという人間ドラマ。
彼女が演じるのは、埼玉で普通の高校生活を送っているものの、クルドという国を失い、日本での居場所も失っていくという複雑な役だ。


共演は「MOTHER」で長澤まさみさんの息子を演じ、これまた凄まじい演技を見せた奥平大兼さん。
彼の自然な受けの演技がとてもいい。
特に河原で嵐莉菜さんと2人語らうシーンは、遠い昔の思春期を思い出させて堪らない。


在留資格を失うと、埼玉から出られなくなる。
東京と埼玉の境界線で過ごす、かけがえのない時間が美しい。
そこはまるで、北と南を分ける「イムジン河」の歌のよう。
どうにもならないことの辛さ。


嵐莉菜さんの濃いはっきりとした、意志の強い顔がいい。
自立した大人の顔である。
表情が語り、目が語る。


キャスティングも韓英恵さんや池脇千鶴さん、藤井隆さん、皆良い。
孤立していく家族の姿に「誰も知らない」を思い出したが、製作は是枝裕和監督率いる集団「分福」だから納得。


自分達は知らない。
クルド人のこと。
在留資格のこと。
強制送還される外国人のこと。
なーんにも知らない。