極上のミステリーをどうぞ | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


実によく出来たミステリー映画だ。
オーストラリア映画の「渇きと偽り」。
ジェイン・ハーパーのベストセラー小説を映画化。


主演はエリック・バナ。
大作にも出演してるけど、地味な印象を拭えない俳優だが、ここで演じる連邦警察官ははまり役だ。
過去に恋人を殺人事件で失い、疑いをかけられ、逃げるように故郷を飛び出した。
20年振りに親友の死をきっかけに故郷に戻って来る。


今も彼を快く思ってない人間は多い。
嫌がらせを受けたりする中、静かなる佇まいと事件に向き合う姿は、日本で言えば高倉健さんか?
過去の恋人の殺人事件と、親友を失った事件を追い掛ける、内なる闘志が頼もしい。


地元の警察官とのバディ・ムービー的要素もあり、見所はいっぱいだ。
過去の事件をフラッシュバックさせ、現在と往き来する編集の手腕も見事。
ロバート・コノリーの全貌を敢えて見せない演出も素晴らしい。


何より魅力的なのは、複雑に入り組んだ人間模様である。
それぞれに思惑があり、こじれた関係があり、現実の問題を抱え、伏線が忍ばせてあって面白い。
もちろん真犯人を探すフーダニットの楽しみもある。


背景にはオーストラリアが抱える問題、1年近く雨が降らず干ばつに喘ぐ町があり、金銭的に追い込まれた住民がいて、 そこもリアルだ。
自分は昔からサスペンス映画のファンだし、それなりに目も肥えていると思うので、この映画にはサスペンス映画、ミステリー映画のファンを唸らせるものが多々あると断言する。


5月には続編が撮影されたと言う。
パンフレットを読んで、おーっ!とテンションが上がったものだ。
「渇きと偽り」
この極上のミステリーをどうぞ。