「スペイス・オディティ」を青春映画で | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


新宿の映画館シネマカリテで、先週こんな会話を耳にした。
自分よりも恐らく年上であるその女性は、さっきまで新宿武蔵野館で自分と同じ映画を観ていた方だ。
「C.R.A.Z.Y.」のパンフレットを指差して、


「デヴィッド・ボウイの歌は何曲流れるの?」
店員は「確か1曲か2曲です」
「そう」
「あ、でも良いところで流れるんですよー」
「私、若い頃のデヴィッド・ボウイが好きだったのよ」
すぐ横にいた自分は思わず、
「僕も大好きなんです」と、つい。


というわけで、 1週間後は「C.R.A.Z.Y.」へ。
気にはなっていた。
昨年12月に亡くなったジャン・マルク・ヴァレ監督の2005年製作の未公開作である。
「ダラス・バイヤーズクラブ」という傑作を放った監督だ。


ガリガリに減量したマシュー・マコノヒーと、性同一性障害者を演じたジャレッド・レトの名演が光る快作であった。
当時は自分も俳優の現役であったから、かなりの刺激を受けた。
「C.R.A.Z.Y.」の主人公は、父親や兄弟との価値観の違いでもがく。


部屋の壁には、デヴィッド・ボウイやブルース・リーのポスターが飾られている。
使われるボウイの曲は「 スペイス・オディティ」。
これまでも何度も映画の名シーンで使われ、ここでも主人公の思いと歌詞がシンクロする美しいシーンとなった。


映画では「オカマ」や「ホモ」という言葉が飛び交う。
自分もこの言葉を何度浴びせられたか。
自分の場合は見た目、中性的だったからでしょう。
高校くらいになるとね、開き直ってそこを敢えて表に出した。
それは自分も、デヴィッド・ボウイや当時流行っていたボーイ・ジョージの影響があるから。
だから主人公の気持ちはよーく分かる。


人と違うことをやる、それを周りは叩く。
自分もそういったものと戦いながら、トラブルメーカーになったような時期もあった。

「リコリス・ピザ」より、こっちが好みかな。
主人公と感性が合うのと、共感も出来たから。
この年齢になっても、良質の青春映画にはキュンとくるね。
それはいいこと。