
昨日もこの映画について触れた。
刺さるんだね、こういうのは。
ユダヤ人、ホロコースト、それに加えて自分は今、格闘技を教えている人間なので、余計に感情移入しまくりで。
「アウシュヴィッツのチャンピオン」
実在のボクサー、テディのアウシュヴィッツ強制収容所での凄絶な戦いを描いた感動作である。
生きるためにボクサーとして勝ち続けた男の、ストレートな物語だ。
かなりドラマティックに脚色されてるとは思うが、それでもテディのアクションにこちらも拳を握らずにはいられない。
彼が俊敏なフットワークを見せ、スウェーで相手のパンチを交わす度に、それが映画だと分かっているのに興奮してしまうのだ。
「ロッキー」が何だ?
「レイジング・ブル」が何だ?
そこはいつ殺されるか知れない究極の場所だ。
彼は勝利を重ね、命を脅かされる囚人達の英雄になっていく。
強制収容所では「77番」と呼ばれたテディ。
強制収容所でボクシング対決が行われ、そこで戦い続けてホロコーストを生き延びた男がいたことは、あまり知られていない。
囚人達が彼から生きる希望を与えられたことは、想像に難くない。
どこにでもいそうな地味な俳優さんだが、後半の鬼気迫る演技は、自分の大好きな俳優スティーヴ・マックィーンと重なった。
「パピヨン」や「大脱走」で、生きるために奔走したマックィーンとね。
これが長編デビュー作になる監督のマチェイ・バルチェフスキは、ホロコーストの生存者の孫である。
初長編とは思えない濃い人間ドラマの描写と、自身が書いた 普遍的な脚本の強さ、今後が楽しみな存在である。
最後の最後、ぐわーっと込み上げてきて号泣した。
追い込まれた状況で戦うことを決意し、ボクシングを愛し、ボクシングに救われた男。
現代にもがいて、先が見えない人達にも、きっと刺さるだろう。
だいぶ遅かったが、やっとキックボクシングという生きる道が見つかった自分にも、どうしようもないくらい刺さった映画だった。