怪物は実在する | 映画ブログ 市川裕隆の燃えよ ヒロゴン


自分もどちらかというと、危ない人間だ。 
近くにいたら面倒臭いだろうし、常識からは若干ずれている。
それが分かって付き合ってくれる相手もいるが、最初から敬遠する人もいる。
映画「空白」は、常識からはだいぶ外れた怪物が主人公だ。


スーパーでの万引きが見つかって逃走した女子中学生が、追い掛けた店長の目の前でトラックに跳ねられて即死する。
娘を失った横暴な主人公は、その店長だけでなく、周りの人間を次々無茶苦茶なやり方で追い込んでいく。 
古田新太さんの怪物っぷりがはまっている。


加害者側の店長を演じた松坂桃李さんも、精神的に追い込まれていく普通の男をリアルに刻み込む。
七転八倒する様は凄まじく、特に弁当屋との電話のシーンは繊細で美しい。
これは後半の伏線にも繋がる。


監督はこれまでも鋭利でクオリティー高い問題作を発表し続けてきた、吉田恵輔監督。
「犬猿」も「愛しのアイリーン」も大好きだが、今年公開された「ブルー」もまた、ボクシングを違う角度から見つめた素晴らしい作品であった。


怪物が生まれるのも原因があり、理由がある。
彼が後半思わず吐露する言葉は、あまりにも弱々しく、胸を打つ。
常識と共に生きてきた人達には、なかなか理解出来ないだろうが。
人間はどこかでボタンを掛け違うのだ。 


自分も若い頃に渋谷の道玄坂や、新宿の歌舞伎町で社会からはみ出して喘いでる人達と時を過ごした。
彼らは危険でもあり刺激的でもあり、脆い一面も持ち合わせていた。
暴力が唯一のコミュニケーション手段である場合もあった。


人生は思い通りにはいかない。
ましてやどん底に落ちたら、そこから這い上がるには綺麗事では這い上がれない。
誰しもが怪物になる可能性がある。
皆さんは「人」に興味がありますか?