
ここ最近のホラー映画で勢いのある監督と言えば、「ヘレディタリー~継承」で最大限のインパクトを残したアメリカのアリ・アスター監督でしょう。
ホラー・ファンを唸らせる怖さ、その作家性、過激な映像描写ながら品もある、そこが彼を稀有な存在にしてる。
新作「ミッドサマー」も、評価の高い驚愕のフェスティバル・スリラー。
まずは導入部の人物紹介が上手い。
そこから一気にスウェーデンの祝祭へと突入。
沈まない太陽、明るい日差しの中、笑顔に包まれたお祝い。
それを一瞬にぶち破る老人の転落死。
続いて次々失踪する仲間達。
逃れられない彼らの恐怖が、じわじわと観客をも追い詰める。
記憶にくっきりと刻まれるグロテスクな描写はアリ・アスター監督ならでは。
デビュー作「ヘレディタリー~継承」での悪夢のようなシーンが頭から離れなかった人も多いだろう。
今回の凄惨なシーンも夢に出て来そうな程。
フェスティバルの恐怖シーンで私達を震え上がらせるのは、ルキノ・ヴィスコンティ「ベニスに死す」の美少年だったビョルン・アンドレセン。
フェスティバルに参加した若者達の目の前で起きたあの衝撃の死に様を、我々も受け止めるのに必死だ。
あまりに美しいフェスティバルの描写と、そこで繰り広げられる凄惨な出来事。
このギャップが作品の怖さを倍増させる。
スターも出演してないこの映画が大ヒットしている。
みんな怖さに飢えているのか?
この御時世、ウィルスも怖いが、人間が怖いことも皆知っている。
「ミッドサマー」を観ても、恐ろしいのは人間だ。
アリ・アスター監督が世界の映画祭を席巻するのは、もう時間の問題だ。
その前夜祭を味わい尽くせ!!