
カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した「幸福なラザロ」。
前作「夏をゆく人々」でカンヌのグランプリを獲得した、イタリアのアリーチェ・ロルヴァケル監督の新作。
主人公のラザロはどこまでも無垢な存在。
イタリア映画を象徴するような映画監督フェリーニの代表作「道」の主人公、ジェルソミーナを思い出させる。
ファンタジックな物語の中に、人間生活の現実が横たわり、ラザロの存在がその中で際立つ。
生きるために必死にもがく人々と対照的な、ラザロの真っ直ぐな瞳が印象的だ。
今回の作品では、もうひとりのイタリアの偉大な映画監督ヴィスコンティの影響も窺える。
イタリア映画を継承した女性監督ロルヴァケル。
人を見つめる彼女の眼差しの優しさに酔いしれているのは、決してカンヌだけではない。