初めてのギドク体験は確か「弓」。
じいさんと少女の心温まる話かと思ったら、全然違った。
それでも他の作品を追いかけ、ほとんどを映画館で味わった。
「うつせみ」だって「春夏秋冬そして春」だって「ブレス」とか、「悪い男」も、とにかく変のてんこ盛りである。

でも、そのギドク作品に俺ははまった。
通常では体験出来ない、その変の中毒になってしまったのだ。
新作「殺されたミンジュ」は、ある女子高生殺害事件に関与した男達が、武装した集団に誘拐されて拷問されてゆくいわゆる復讐劇に近い。

しかしやはりギドク作品、変がつきまとう。
まずは主要な役を演じる俳優が、8役も演じている。
重要なシーンの多くにこの俳優がちょっと髪型を変えたりホクロをつけたりする程度で現れるため、確実に客は混乱する。
そしてこの武装集団の様々なファッション。
残酷な描写は今回も振り切っているが、武装集団の奇妙さに可笑しさも漂う。

ギドクはインタビューで「羊たちの沈黙」と「ポンヌフの恋人」に影響を受けたと語る。
何だかあまりに普通過ぎて、逆に驚く。
ギドクの作家性は一体どこからやって来たのか?
タイトルのミンジュは女性の名だが、民主の意味でもあると言う。
今作は特にメッセージ性も強く、思い切りストレートだ。
ギドクの最高傑作ではないけれど、まだまだ観ていたい。
ギドクを体に射ちたいのだ!
もっとギドクをくれ!
