懐かしドラマ 松本清張『二階』1977 | ゆうべ見た映画

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懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

松本清張原作 

 

 

再掲載なのですが とっても好きな作品です。

 

何度も何度も、原作を読みました。

そのたびに 清張さんは

女心をよく判っているなあと 感心しちゃうんです。

 

すみません、ほとんど、ネタバレです。

 

お話。


竹沢幸子 (十朱幸代)   夫・英二 (山口崇)


幸子は今、女手ひとつで
小さな印刷所を経営している。

幸子の夫・英二は 胸を病み
2年近く療養所にいたが 治癒の見込みはなく

このたび 自宅療養に切り替え
泊まり込みの 付き添い看護婦・坪川裕子を頼んだ。

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坪川裕子 (渡辺美佐子)


坪川は 控えめで 品のいい女性で
経験も長く、その世話は行き届いていた。


従業員が3人の 印刷屋の仕事は多忙で 

幸子は二階の夫の部屋に 上がって行く暇もなかったが
熟練した看護婦が 来たことで安心出来た。

夜は、夫の寝床の隣りに
幸子と坪川が 蒲団を並べて寝るが


夜、発作が起きることもあり 
位置的に 夫に近いほうが坪川である。


ある夜、ふと目覚めた幸子は 思わず息を呑んだ。

 

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けれどそれは 幸子の幻覚で

 

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実際は咳に苦しむ夫を 介抱している坪川の姿だった。


しかしやがて 

日が経つうち 幸子は二階から 
何か威圧のようなものを 感じるようになる。

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用事で階段に 足をかけるたび
素直に上がれない 躊躇が起きるのだ。
幸子はわざと足音を立て ゆっくりと上がった。

それは、病人と看護婦というよりも 
男と女が ひっそりと部屋に籠っている
という雰囲気だった。

 

理由のない不安だった。

実際、坪川裕子は 常に忠実で慎み深かった。

 

しかし、そう、うち消しても

部屋に幸子が入って行ったときの ふたりの様子は 

どうしても、ぎこちなく見えた。


二人の間に 不自然に会話が無いのだ。

そして坪川はいつも 

幸子と入れ違いに 即座に部屋を出て行く。


だが、坪川は若くもなく 中年の質素な女である。
何より、ふたりが顔を合わせてから
まだ一週間ほどしか経っていない。


ある種の感情が生まれるには 短かすぎる期間だ。

しかしあるとき、

幸子は決定的な場面を 見せつけられる。

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二階に上がって行ったとき いきなり襖が開いて
坪川が走り出て来たが 彼女は泣いていたのだ。

胸の動悸を抑えながら 幸子は襖を開けた。

夫は目を閉じていた。
そのこわばった顔を 見下ろしながら
幸子は言った。

「坪川さんには、辞めていただきます」

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幸子は坪川に 辞めて欲しい旨を伝えるが
坪川は後始末もあるので 

今日一日だけ置いてほしいと言う。

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「今日のお給金は 頂戴いたしません」


その日は 普段以上に仕事が立て込み

夕方、従業員が帰ってから

幸子は お昼以後、

坪川が一度も降りて 来なかったことに気づいた。


二階からは ことりとも音がしない。
心が騒ぎ、恐れ、幸子は階段を駆け上った。
 

そして 蒲団の中で 
ふたりが折り重なって 死んでいるのを見た。


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夫の手紙が置いてあった。

坪川裕子は 英二が幸子と出逢う前に
結婚を約束していた 恋人だった。
しかしその頃、英二の病が悪化し、ふたりは別れたのだ。

坪川裕子が突然、看護婦として 目の前に現れたときは
お互い息が詰まるほど 驚いたという。

「自分の体が 回復の見込みのないことは判っている。
 幸い僕も裕子も、生きるより死ぬ条件が揃っている」

幸子は取り残された。


ふたりが昔、どんな関係だったかなんて知らない。


ただ現実は
ほんの10日ほど前に 突然、現れた略奪者に
愛していた夫を 連れて行かれたのだ。

世間からは嘲りと、哀れみが集まることだろう。


幸子は長い間 そこに座り続けた。
それから静かに 夫の手紙を焼いた。

そしてこの後、幸子は・・


      黄色い花


十朱幸代さんも 渡辺美佐子さんも

ぴったりの配役という気がしましたが


でもやっぱり、小説がいいんです。
清張さんの素晴らしい文章で 読んでいただきたいです。