津軽じょんがら節 (1973) ATG | ゆうべ見た映画

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懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

 

斉藤耕一監督 中島丈晴脚本

こちらも何度か 観ている映画で

強烈な印象という ほどではないのですが

そのたび なにかじーんと 来るものがあるんです

お話

 

生まれ故郷である 津軽の漁村に
イサ子 (江波杏子)が
東京から 若い男を伴って帰って来る 


男は徹男という ヤクザ(織田あきら)で
敵対する組の幹部を刺して 追われている 
  

しかし、頼りにして来た
イサ子の実家は 人手に渡っており

 

そのうえ、当てにしていた
漁猟中の船が転覆して死んだ

イサ子の父と兄の 保険金一千万円は 


二人の死体が 上がらないため
保険金詐欺の疑いで 支払われず

 

ふたりは 海辺の掘っ立て小屋を 借りて住み

イサ子は 飲み屋に働きに出る

 

村には この飲み屋がたった一軒

周辺にはなにも無い

パチンコ屋に行くにも バスで二時間かかる
 

村の男たちは 飲み屋の二階で
連日、お酒や花札で遊び呆けて 

失業保険が切れると また出稼ぎに出る

そんな 侘びしい村

 

徹男は こんな村にいられるかと ふて腐れ

イサ子に辛くあたるが 


若い彼を溺愛している イサ子は
慰め、機嫌をとり 

生活の苦労のすべてを 自分だけで背負い込む

しかし あんたは何もしなくていい

私が食べさせてあげる、と言われても
 

仕事も 遊ぶ場所もない この村で

俺だって何かやりたいんだと 徹男はイラつく

 

そんなある日 徹男は
盲目の娘・ユキ(中川美穂子)と知り合う 


ユキは極貧の家の 実の兄妹の間の
近親相姦の末に 生れた娘で 

いずれは イタコか瞽女になるしかない 運命の娘だが


やがて徹男を あんちゃ、と慕う 純真なユキに

徹男も これまで経験したことのない

情愛を感じるようになる


そして もうひとり

息子に出て行かれ 今は一人暮らしの

 

漁師の為造(西村晃)
 

ある頃から 

為造と親しくなった徹男は

彼のシジミ漁を 手伝うようになる


 

 

実は イサ子は数年前

この為造の息子と 駆け落ちしたのだった

そして あっけなく別れ

別の男・徹男と帰って来た

そんな

イサ子にとっては 気まずい間柄の為造や

ユキといるときだけ 明るい表情になる徹男

 

村の男たちの中にも 次第に溶け込んでいき

シジミ漁に 心地よい汗をかいて

機嫌よく帰って来る徹男

 

人の声さえ かき消すほどの

荒れ狂う波音を 聞きながら

 

イサ子は次第に 自分から離れていく徹男に

不安を感じるようになる

あれほど 恋しかった故郷から

背を向けられ

何もかもが上手く行かない イサ子とは逆に

嫌でたまらなかった この村に

安らぎを見出した徹男

息子を失くした 老いた男と

親の顔も知らない 若者の間に

次第に深まっていく絆

 

しかし あるとき

周辺に 東京からの 追っ手の影を感じ

遂にふたりは この村を出ることになる

飲み屋の主人に 行きがけの駄賃とばかりに
3万円で ユキを売りとばし

ふたりは バス停に急ぐが 

 

このとき ふと、徹男の耳に聴こえて来たのは

津軽三味線の音色だった

そして ふり向いた先に

盲目の旅芸人の 一行を見るが

その中の 瞽女のひとりは ユキである

しかし
これは 徹男の見た 幻想だった


突如、徹男は身をひるがえし

イサ子を振りきって

今来た道を駆け戻り ユキを助けに行くが・・

 


結末は悲しい

     黄色い花

 


荒々しい波音を背に 終始、胸を揺さぶる 

高橋竹山さんの 津軽三味線の音色

 

共演の 寺田農さんも良かった

また「修羅雪姫」「同棲時代」などの

劇画家・上村一夫さんも 土地の青年で出演しています

 

1973年・キネマ旬報ベストテン一位

    主演女優賞・江波杏子


 
撮影合い間

 

     黄色い花

 

江波杏子さんの お母さんは

江波和子という名で 戦前、東宝で活躍した

女優さんでしたが 杏子さんが幼い頃 亡くなりました

 

やがて 自分も母親のように 女優の道を進みたいと

16歳・高校一年のとき 

大映のニューフェイスに応募 

母親が女優だったことは 誰にも言わなかった

 

若い頃から 大人びた美貌を持っていましたが

この頃は シャイで自意識が強く 

人付き合いは 良くなかったそうです

 

彼女の当たり役となった

『女賭博師』シリーズは

 

当初は若尾文子さんのための 企画でしたが 

若尾さんが 出演を渋ったため

江波さんが 抜擢されました

 

日本人離れした美貌に漂う ニヒルさが受け

シリーズを重ねるにしたがって 

人気が高まって行きました

 

ご本人は この役柄が嫌いでしたが

自分が主役の作品が 

一本あってもいいかなと 思い直したとか

 

『女賭博師』

 

「江波」は 母親の芸名から

「杏子」は 室生犀星の「杏っ子」に由来しているそうです

 

年を取られてからの 

江波さんも カッコよかったですが

2018年・76歳で 亡くなりました

生涯、独身でした

 

 

おしまい