ジョージ・スティーヴンス監督 モノクロ
ジョージ・イーストマン (モンゴメリー・クリフト)
アンジェラ・ヴィカーズ (エリザベス・テーラー)
すみません、またまたお話、最後まで。
母子二人きりの 貧しい暮らしを続けながら
ホテルのボーイをしていた ジョージ・イーストマンは
あるとき偶然、伯父のチャールズ・イーストマンに会い
ウォーソーの街で 彼が経営する
大手の水着製造工場の職を得る。
数日後、伯父の邸宅に 挨拶に訪れたジョージは
そこで 自分にとって従妹にあたる
アンジェラ・ヴィカーズを見かけ
その美しさに 一瞬で心を奪われた。
しかし、社交界の花のような存在の アンジェラは
ジョージにとっては まったく手の届かない遠い存在。
彼女は
ジョージには気づきもせず 風のように去って行った。
都会に出て来たばかりの 淋しさから
ジョージは同じ職場の アリスと付き合うようになるが
会社のルールで 社員同士の交際は許されず
ふたりはいつも人目を忍んで デートをした。
アリス (シェリー・ウィンタース)
やがてジョージは 伯父から昇進の機会を与えられ
邸でのパーティに招かれる。
周りは 華やかな上流階級の人々で溢れ
居場所の無いジョージは
人気のない ビリヤード・ルームに逃げたが
そこで図らずも アンジェラと出逢った。
はじめて言葉をかわすシーン。
そしてダンス。
やがて ジョージの純真さに アンジェラは惹かれ
激しく愛し合うようになる ふたり。
しかしその頃、アリスの妊娠が判明。
会社への発覚を恐れ
ふたりは 堕胎手術をしてくれる医者を探し
夜の中を歩きまわるが 見つからない。
なんという、違いだろう。
あの、まばゆいほどの 陽のあたる世界と
自分たちのいる じめじめとした 陽かげの惨めな暗い世界・・
ジョージは 仕事の話で伯父に会うと アリスを騙し
アンジェラの別荘へ行った。
湖でのふたり。
湖の名は 「アビの湖」
アビとは この土地に多くいる鳥の名前だ。
アンジェラが言います。
「この湖はふたつに分かれていて こちら側の美しい湖を
私は自分の湖と決めて いつもここで泳ぐの」
同じ湖でも 向こう側は薄暗く
古いロッジとボートがあって
数年前には 水死事件もあった・・・
ふたりの住む世界を 象徴しているようなシーン。
その夜、突然アリスが 別荘近くまでやって来て
電話でジョージを呼び出した。
結婚を迫り、承諾しなければ
自分との仲を公にすると 興奮するアリスをなだめて
ジョージは ボートに誘う。
今は
アンジェラの両親も 自分を認めてくれている。
ここには 自分の望むすべて・・・
愛する女性と 野心と 輝かしい未来があるのだ。
アリスの溺死を 企てるジョージ。
しかし・・
「ふたりが幸せになれるよう、今、流れ星に祈ったの」
この、アリスのあまりにも ひたむきな愛情に
一瞬、彼女を殺す気持ちを 失ったジョージでしたが
皮肉なことに このとき不意に
ジョージの底意を 感じたアリスは
恐怖のため、ボートの上で立ち上がり
ボートは転覆、アリスは溺死。
ジョージは岸に泳ぎつき 逃走したが
翌日、逮捕され 裁判で死刑を宣告された。
自分は殺すつもりはなかったと 語るジョージに
神父さんが言います。
「君は ボートが転覆した瞬間、
アリスではなく 他の女性を想ったのではないですか。
君はそのとき 心で殺人を犯したんだ」
あまりに美しかった エリザベス・テーラー。
テーラーさん、このときまだ19歳。
類いまれな美貌と 揺るぎない自信
既に大女優の風格がありました。
モンゴメリー・クリフトも 正真正銘の美男子。
クリフトさんの
あの暗い瞳は やっぱり惹きつけられる。
もう今は こういう雰囲気の俳優さんはいませんね。
そして モノクロの美しさ。
銀幕の世界と言っていた あの頃のラブ・ストーリーです。