懐かしドラマ 「ながらえば」 1982 | ゆうべ見た映画

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懐かしい映画のブログです。
ときどき、「懐かしの銀幕スター」「読書」など
そして「ちょっと休憩」など 入れてます。

 

 

 


    山田太一原作・脚本     カラー



さっそくお話。

 


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隆吉 (笠智衆)

 

 

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長男夫婦 理一(中野誠也)  妻(佐藤オリエ)


長らく名古屋に住んでいた 隆吉は 
長男の転勤に合わせて 
夫婦と高校生の息子と共に 富山に移り住むことになった。


転勤といっても 言わば左遷であり
ホ-ムに 社員の見送りも無く 
息子は 学校の転校に不貞腐れ
列車内の一家は やや陰気なム-ドだ。


隆吉も 気持ちが沈んでいた。


名古屋の病院に入院中の 妻・もとは 
長女・悦子が面倒を 見てくれているが 
気がかりで 後ろ髪を引かれる思いだった。

昨日、名古屋での 最後のお見舞いに行ったが
ちょうど検査中で 妻はベッドにおらず
短気な隆吉は 待ちきれずに帰って来てしまった。

今は それを後悔し、
もしや妻はこのまま回復しないのでは・・と 
嫌な予感を感じていた。

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妻・もと(堀越節子)   長女・悦子(長山藍子)


富山に着いた翌日、隆吉は息子夫婦に 

急用で一度、名古屋に帰って来たい
預けてある自分のお金を 返して欲しいと訴えますが
息子夫婦に叱られます。

「おじいちゃん、昨日こっちへ来たばかりで何を言いだすの」


「お父さんに 急用なんてある訳ないだろ」


けれど翌日、隆吉は我慢できず 
家の引き出しから 3千円を持ち出し
その現場を見つけ 
せめてひと月待って、と言う 嫁を突き飛ばした。

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「お前にはひと月は 何でもないかも知れんが
 年寄りは明日をも知れん!」


まもなく隆吉は
富山駅から急行に 乗り込みますが

途中、車内検札で
急行券を持ってなかった為 2時間後に来る 
普通列車に乗り変えるよう 車掌に言われます。



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見知らぬ 「猪谷(いのたに)」という駅


しかし隆吉は 時間つぶしに つい、のんびりし過ぎ 
そのうえ、持っていた切符を失くしてしまい
その日の名古屋行き最終列車を 乗り過ごしてしまう。

 


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その頃、長男、長女は 連絡を取り合い
わずか3千円しか持っていない 隆吉の行方を心配。

折も折、
もとは 容体が悪くなり集中治療室へ。

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駆けつけた悦子の顔には 痣が出来ている。
悦子は日常 夫からDVを受けていた。

暗い事情を抱える悦子に
隆吉を引き取る 余裕はないのだ。

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朦朧とした意識の中にいながら 
悦子の痣を心配する母。


そして
うわごとのように 繰り返しつぶやく。

「おじいちゃんが、来るような気がする」 


たまらない気持ちになって
富山の理一に連絡する 悦子。

「そうなの、お父さんが家を出たことなど、何も言ってないのに・・」

「もしかして、お母さん 危ないんじゃないか・・」


やがて理一も 名古屋の病院に駆けつけ 
母への心配と同時に
隆吉への心配と怒りで いらだつ。  



さて、夜になり
途方に暮れた隆吉は 小さな旅館に入る。


他に お客も無さそうなのに
何となくせわしない雰囲気に 仲居さんに尋ねると
さっき、大奥様が亡くなって
お通夜やお葬式などの 段取りの最中なのだと言う。

 

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妻を亡くしたばかりの 
旅館主人・謹造(宇野重吉)



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お悔みに伺った隆吉と
お酒を酌み交わしながら 
謹造は ぽつりぽつりと話す。


妻に優しい言葉も かけてやらなかつたこと
旅行にも連れて 行かなかったこと
一緒の写真さえ 撮らなかったこと

昨日とうとう、ものが言えなくなった妻に
もっとグチでも何でも 聞いてやれば良かったと悔やむ。


やがて隆吉も 問われるままに語る。

名古屋の妻のこと、
今逢わなければ 一生逢えないような気がして
矢も楯もたまらない 気持ちになったこと

そんな気持ちを 息子たちには言えなかったこと

時間を間違えたこと、切符を失くしたこと、
列車に乗りそこなったこと・・

そして

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「これで、金を少々お貸し下さい。
 実は宿代も 後から送らせて貰おうと・・」

 

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「ええですちゃ、金貸しましょう」
「早よう、奥さんに逢ってあげてください。
 逢って、ええことを言ってあげてください」


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「仏があんたをウチに 泊めさせたのかも知れん」


このお二人の対話のシーン。

際立つ、宇野重吉さんの上手さ。
なんて自然なのだろう。

台詞じゃない 
朴訥な謹造の 言葉の一言、一言が 
胸に沁みて 涙がこらえ切れない。


そしてラスト
やっと、やっと、やっと逢えた
妻に背を向けたまま言う 笠さんの台詞。

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「富山は遠い わしは嫌だ
 わしは 名古屋におりたい
 わしは お前と一緒におりたい」


しかし、それだけの想いも叶わぬ
現実の境遇。
 


翌日、隆吉と理一を乗せた 富山行き列車は
名古屋駅を離れて行く。

 

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