咲かせられなかった蕾 | マリリンの独り言

マリリンの独り言

ほんの些細な日常の出来事や、面白エピソード、我が家の動物達の話、ハンドメイド作品の話などを気ままに綴ります。

時々毒吐き。
クズ男やモラ男の話、人間関係についても書いています。

夫婦間だけの呼び名は
『プニ』『プニちゃん』


私が入学した高校には、同じ中学校だった友達が二人いる。
以前ブログに書いたタッキン以外に、もう一人ミッチという子がいた。



 タッキンのことを書いたブログ
下矢印下矢印下矢印




私は8組で、ミッチは1組。



入学式の直後、私はミッチの教室に遊びに行った。


そこで一人の男子に目が止まる。


まだ誰とも打ち解けていないようで、机に座り真っ直ぐに前を見ていたのだが、その瞳が情熱的で強烈な印象を受け私は恋に落ちた。



いわゆる一目惚れだ。



生まれてから一度も一目惚れなどしたことがなかったし、性格も分からないまま人を好きになれる訳がないと、それまでは否定する側だったのに。



しかしその時には、何故か目が離せなくなったのだ。



「〇〇くん、すごくいい子やで」


私の気持ちを知っていたミッチから色々と話を聞いて、ますますその人のことが好きになった。


1組だったし、名前にも『一』の字があることから、私は友達との間では
『イッちゃん』と呼んでいた。




イッちゃんは高校に入学する前に、一年間だけ自衛隊にいたそうだ。

その一年間で免許を取ったり、お金を貯めたと話していたらしい。


だから年齢は私達より一つ上だった。


だからあんなにも余裕があり、落ち着いて見えたのかなと思った。





学校から二回乗り換える路線まで同じだったので、朝も帰りもイッちゃんと一緒の電車になった。


私が合わせていたってのもあるけど。


そして遠くから熱い視線を送り続けた。

だけどこちらを見られたら、恥ずかしくて目を逸らした。



イッちゃんは背が高くてイケメンだったので、とてつもなくモテた。


入学当初から多くの女子がイッちゃんに告白したことを、ミッチを含めた様々なルートから情報が入った。




しかし全員、その場でハッキリと断られていたという。


その時の断りの理由が、イッちゃんには一つ下の妹がいるので、妹と同じ年齢である同学年女子も、本人にとっては妹にしか見られないというものだった。


みんな全滅していたし、私も断られるのは分かっている。

それでも想いを告げずにはいられなかった。



小学生の時も、中学生の時も、私は好きになった相手には必ず想いを伝えて来たから。

自分の想いを胸に秘めたままでいるなんて、どうしても出来ない性格だったのだ。





半年間 片想いを続け、10月に私は駅のホームでイッちゃんにラブレターを渡した。


その駅で私とイッちゃんは、それぞれ反対方向の電車に乗る。



駅のホームに立っていたイッちゃんの制服を掴み、少し引っ張って振り向かせた。




口を開いたら心臓が飛び出しそうだったので、何も言えず手紙を差し出すと私はその場から走り去った。




次の日、教室にいると廊下から見慣れた顔が覗いている。


いつもイッちゃんと一緒にいる背の低い金髪男子だった。


教室内をキョロキョロしているかと思ったら、次にイッちゃんの顔が見えた。


咄嗟に私は顔を背けて気付かない振りをした。


しかし視界にはしっかりロックオンしていたのだが、イッちゃんが私を指差して金髪男子に教えているようだった。


(えー!こんな情報は聞いてないで~!
他の子らも金髪男子のチェック受けてたんかなぁ·····)

(´>///<`)あせる


それ以降、電車の中でイッちゃんと頻繁に目が合うようになった。


向こうから見て来て、私が視線に気付くことも多かった。

告白された相手だから、気になって当然だよな。


手紙には私の想いを綴っただけで、付き合ってほしいとか返事をくれとかは書かなかった。


私がイッちゃんの妹と同じ歳である以上、みんなと同じく振られるのは分かっていたし、イッちゃんを悩ませたくはなかったからだ。






それでも私は気持ちを伝え続けた。



クリスマスには、イッちゃんに似合うと思った色を選び、チャコールグレーの毛糸でマフラーを編んだ。
ボルドーのイニシャルも入れて、手紙の時と同じく駅のホームで渡した。



なんの見返りも求めてはいなかった。


好きの気持ちが止まらなかっただけだったが、それすらもイッちゃんには迷惑かもしれないと不安になることが多かった。




その年の大晦日、離れて暮らす姉が実家に来ていた。

イッちゃんの話を姉にも話していた矢先のことだ。

元旦になってから、私はポストに郵便物を取りに行った。




すると なんと
イッちゃんから
年賀状が届いていたのだ!


「わわわわわ!お姉ちゃん!さっき話してた子から年賀状来たー!」

◻️٩(º ロ º๑)あせる




イッちゃんからの年賀状には

『マフラー
本当にありがとう』

と書かれていた。




「これって脈アリちゃうの?
だって今まで全員その場で振られてたんやろ?
普通は気のない相手に、わざわざ年賀状まで出さへんのとちゃう?」


そう言う姉に対して

「まさか!それはないやろ~!
真面目やから律儀にお礼して来ただけやと思うわ」


私は否定したものの、内心はドキドキで少しは期待していいのかなと思うようになった。



その年、我が家は喪中だったので私からは年賀状を出さなかったのだ。

でも急いでイッちゃんには、可愛いイラストを添えて返事を書いた。







そして私は
更に大胆な行動に出た。



同じ学校の生徒が殆どいなくなる路線があって、そこへ移る途中のエスカレーターを上がった所で、何度も色付きリップを塗り直していた私はイッちゃんを待ち伏せしていた。





イッちゃんがエスカレーターから上がって来て、私に気付いた瞬間 目を大きく見開いた。



ドキッとしてくれたのかな·····



こっちのドキッならいいな。
⇩⇩⇩
(OoO///

こっちじゃなければいいのにな。
⇩⇩⇩
(◎_◎ガーン





「一緒に帰っていい·····?」


「うん、いいよ」



承諾は得たものの、緊張して話が出来ない。


それでも駅のホームまでの道が、ずっと永遠に続けばいいのにと思った。


気のせいか、いつもよりイッちゃんの足取りもゆっくりだった。


ホームに着くと、イッちゃんが反対側を指差して言った。



「こっちやろ?」



私がどの電車に乗るのかを、覚えていてくれていることが嬉しかった。

まあ知ってて当たり前だったかもしれないけど。



最後に精一杯頑張って声を出した。


「ありがとう!」


そう言うと、私はイッちゃんの表情も確認することが出来ないまま走り去った。






そして2月、バレンタインデーの日には手作りチョコを用意していた。


私は考えが硬いのか、バレンタインも結婚と同様に神聖なものだと捉えていたので、義理チョコどころか好きな人がいても運命を感じるまでは──と、それまで一度もチョコを渡したことがなかったのだ。


だから生まれて初めてのバレンタインチョコだった。



いつものように、同じ学校の生徒が殆どいなくなる路線のホームで、私はイッちゃんにチョコを手渡した。



「いつも ありがとう」


イッちゃんは笑顔でそう言った。



今なんとおっしゃいました?
いつも
!!!!!!!!!!!?
『いつも』ですと~!?
しかもその笑顔なんですのん?
私をキュン死させるおつもりか?

キューン(  *´ཫ`)飛び出すハート



しかし舞い上がっていたのも束の間、先日のブログに書いたように、チョコを渡している現場を、意地悪なクラスメイトに目撃された。



そして私への嫌がらせのために、翌日その子は私の目の前でイッちゃんにチョコを渡したのである。


「ホワイトデーにお返しくれるかな♪」

と言っていたクラスメイトだったが、イッちゃんが全員にお返しを配るとも考えられなかった。



私も最初から期待はしていなかった。





しかし奇跡は起こる!



ホワイトデーの日、腐れ縁のタッキンが側にいたにも関わらず、いつものホームでイッちゃんが走って私を追い掛けて来たのだ。



イッちゃんとは反対方向なので、その背中を見届けてから自分達が乗り込む場所まで移動していたのに。



イッちゃんは学生カバンの中から、小さな紙袋を出して私に手渡した。



「これ·····今日ホワイトデーやから」



私は瞬きも言葉も忘れてしまい、マネキンのように立っているだけだった。


ただ震える両手で紙袋を受け取るのが精一杯だった。


微かに微笑み、イッちゃんは来た時と同じようにホームを走って行った。


呆然と立ちすくむ私に、一部始終を見ていたタッキンが声を掛けた。


「茉莉花!やったなぁ!良かったやん!」


(え?何が良かったん?
これって、どういうこと!?)


このお返しが、告白のOKの返事なのか単なるお礼なのかが私には分からなかった。


そもそも私は、最初から振られるのを承知で返事も催促していなかったから。



イッちゃんがくれたホワイトデーのお返しの中身は、可愛いクッキーとキャンディーのセットだった。


クッキーはハート型だったし、キャンディーはまるで宝石のようにキラキラした綺麗なもので、それだけでテンションがMAXになり鼻血が吹き出しそうになった。



ミッチのリサーチによると、ホワイトデーにお返しを貰ったのは私以外にはいなかったらしい。





確かに距離は縮んだ。


しかし私もイッちゃんも、どちらからも付き合ってとか付き合おうとか言ったことはなかった。



それでも同じ学校の生徒が殆どいなくなってからの道を、幾度となく二人で歩くようになった。

休みの日にはイッちゃんの家まで行って、バイクの後ろに乗せてもらったりした。





私達って、どんな関係なんだろう。
これって付き合ってると言えるのかな。


考えたことはあったけれど、答えを求めることはしなかった。

それはイッちゃんも同じ気持ちだったのかもしれない。


最初にイッちゃんに出会った時からそうだった。



何か特別な存在のような気がして·····



私とイッちゃんが似ていると、何回か友達に言われたことがある。


「茉莉花って、自分の顔が好きなん?
二人ともそっくりやで」


似ているなんて思ったことはなかったが、何人かが同じことをいうので、もしかしたら生き別れの兄妹なのかも!と想像すらした。


更に空想にふけって、私とイッちゃんは異母兄弟だから結ばれない運命なんだと考え、一人で涙を流したこともある。


そうではないにしても、前世で何らかの繋がりがあったのかもしれない。






そんな友達以上恋人未満の関係が続く中、ある衝撃的な場面に出くわす。



イッちゃんが他の女の子と一緒に下校していたのだ。



私とは、同じ学校の生徒の目がない場所でしか歩かなかったのに、同じクラスの女子とは学校から一緒に帰っていた。


その子のことは知っていた。

以前他のクラスと体育の合同授業があり、私が見学していた時に同じく見学をしていた子で、少しお喋りしたことがあったのだ。


でもその時に、その子はサッカー部の人が好きなのだと教えてくれた。


あれから気持ちが変わったのだろうか。


大人っぽい子だった。


同じ歳のクラスメイトが妹に思えるイッちゃんとは、美男美女でお似合いだった。



それを機に私はイッちゃんと距離を置いた。

別に私は正式な彼女だった訳じゃない。
私がイッちゃんを責める理由もない。

ただその幸せを願い、邪魔はせず応援するだけだ。



電車の時間もずらして、なるべくイッちゃんと顔を合わせないようにした。



仲良くしていた私が、突然まとわりつかなくなったことで、イッちゃんは気にしたのかもしれない。


渡り廊下を歩いていた時に、視線を感じて見上げると、教室の窓からイッちゃんが私を見ていた。


私と目が合うと、スっと目を逸らしてカーテンの陰に隠れたイッちゃん。


朝も帰りも電車の時間をずらしたはずなのに、いつの間にかイッちゃんの方から私に合わせて来ていた。

何か言いたげに遠くからこちらを見ている。


一緒に帰っていた子のことは誤解だったのかな·····



でももう手遅れなんだ





勝手に失恋したと思った私は、恋愛モードではなくなってしまい、そんな頃にバイト先で最初の元夫から告白をされた。


「友達としてなら」と言って断ったが、母との衝突などもあり実家を出て行くことになって、自暴自棄になり元夫と付き合う流れになってしまったのだ。



母に反発するかのように、高校在学中に結婚をした。





お互い大学に進学した頃、駅のホームでイッちゃんと会ったことがある。


目指している大学は聞いていたので、登校中だと分かった。

私のバイト先の最寄り駅が、イッちゃんが通学で乗り換える駅でもあったのだ。


10mほど離れたホームで、私もイッちゃんも目を逸らせることなく、暫く無言で見つめ合った。



話し掛ければ良かったのだろうか。
しかし何かが変わる訳でもないし·····




その二年後、今度はゲームセンターの中で再会した。

イッちゃんはスーツを着こなしカッコ良かったが、私は母が経営していたお食事処の手伝いをしていたので、大きく店名が入った法被を着ていた。

「ちょっと休憩しておいで」と母に言われたのだが、どうして法被を着たまま出たのか激しく後悔したものだ。

その時も、イッちゃんはじっと私の方を見ていた。


しかしまたもや何も言葉を交わさないまま。


そんなことが何回も起こった。


住んでいる場所も大学や職場の場所も全く違うのに、こんな広い街で何度も出くわす確率が凄かったと思う。





この何回か訪れたチャンスの機会に、ちゃんと話して誤解を解いたりすれば良かったのかもしれない。

しかし私は結婚をして子どももいたので、過去に振り回されたくないと思ってしまったのだ。






大好きだった人から、大嫌いだった人の横にいることを選んだのは私自身。


それから先に、地獄のような生活が待っていようとは微塵にも考えずに·····



淡い恋の思い出は、今でも懐かしく心の中にある。



今の旦那との間にあるのは、紛れもないだけど、あの頃の気持ちはとしか言いようがないだろう。



現在の幸せを手に入れるために、イッちゃんとの淡い恋も、元夫との辛く苦しい日々も、通らなければならない道程だったのだと思う。



あれからイッちゃんは、結婚して家族にも恵まれ幸せに暮らしている。


好きだった人が幸せでいてくれて本当に良かった。

私もイッちゃんの思い出の一部として、記憶の片隅にでも置いてもらえていたらいいなと思う。



咲かせられなかった蕾だけど、だからこそ永遠に散らない思い出になったのだろう。

(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈⋆)
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