物理的ストレッサーは、地震や台風をはじめ、気象の変化による温度の高低、
寒冷、気圧の変化、さらに、自動車や工事の騒音、照明やスマホのディスプレイなどがあります。
外的刺激によって生体が示す反応自体は、生体に備わった適応的なものです。
しかし、長期間のストレッサーあるいは強いストレッサーによって、
望ましくないストレス反応が生じます。
ストレス反応として現れる症状には個人差がありますが、その一例を示します。
o 心理面の反応としては、不安、気分の落ち込み、イライラ、恐怖、怒り、
罪悪感、孤独感、無気力、否定的な考えなどがあります。
o 身体面の反応としては、非特異的な腰痛、肩こり、動悸、頭痛、
体のふしぶしの痛み、食欲低下、便秘、下痢、不眠など、全身にわたります。
o 行動面の反応としては、攻撃的、引きこもり、場当たり的な反応、
拒食や過食、飲酒量の増加、オーバードーズ、ストレス場面からの
回避行動などがあります。そしてこれらのストレス反応は相互にも影響します。
刺激に対する対応法は、問題焦点型と情動焦点型の2つに分けることができます。
前者は、ストレッサーとなっている状況や問題に働きかけ、
それを直接解決する方法であり、後者は、実際の状況を変化させるのではなく、
ストレッサーがもたらす不快な感情を軽減させる対応です。
問題焦点型がうまくいってストレッサーが根本的に解決すれば得られる効果も大きいですが、
o 地震や台風のような災害の場合、ストレッサーが解決されるのは困難です。
そのようなときには、リラクセーション状態を作り出すことが大変効果的です。
o また、その状況をストレスと捉えるのではなく、
考え方や受け止め方にアプローチする認知的な方法も有効です。
例えば、今後30年間で70%の確率で発生するといわれている東南海地震の確率は、
2024年の発生率に直すと2.6%になります。
リスク度30年で70%と2024年のリスク度2.6%は大きな開きがありますが、
どちらも同じことを伝えている数値です。
もちろん、2.6%のほうが心理的な負担は少なくなります。
「地震がいつ来るか分からない」という不安な心理が30年も続くと、
慢性疾患などの病気のリスクが30~50%増加します。
また、日常生活に不安があると、ものごとを否定的にとらえるようになり、
イライラや怒りの感情が現れてきます。
o 不安に思っている出来事の実現率を研究した結果によると、
不安が実現する確率は15%程度です。
そのうちの80%は影響が軽微であったと報告しています。
つまり、考えている不安の実現率は3%に過ぎないのです。
この発生確率は、日常生活ではほとんど見ることはありません。
私たちが悩んでいる「心配は役に立たない」ということです。
不安解消法は行動すること以外に良い方法はありません。
地震や台風への不安は、その備えを行なうことと、
過度に心配せずに日常生活を充実させることが
最も合理的なストレスマネジメントになります。