シリーズ第十四巻となる本稿では、「汎テュルクリズム(大ユーラシア主義)」をテーマにし、シュメールから西アジア、中央アジア、満州、そして中華の歴史分析、現状分析、そして将来予想を提示します。
とくに、中華史を分析する中で気づいたことは「漢民族」の実態である。すなわち、そもそも彼らがいう「漢民族」など存在するのであろうか?中華史上唯一といってもよい「漢(前漢)」を建国した高祖劉邦の側近を見ても、『三国志演義』では関羽、張飛との桃園の盟で美化されている。
だが、実際は沛公と称した劉邦のもとに二~三千人の若者が集まり、その中の蕭何(しょうか)は沛の小役人、曹参は獄吏、樊噲(はんかい)は屠狗者(犬殺し)、周勃は蓆(むしろ)職人など下層民であったらしい。日本で言えばこれらの職種を生業にするのは〝山窩(さんか)〟である。
とまれ、本稿のメインは、広大な中央アジアなどユーラシアの歴史分析から、𡈁體経略たる汎テュルクリズムの背景を導引することです。「中亜史」とせずに「中亜論」としたのはそのためです。そして、「中亜経略」ともいう汎テュルクリズムの概要は、以下の通りです。
「(本文から)…それ以上にプーチンが危惧するのが中国である。忌みじくもプーチン大統領は米国のフォックステレビで、「敵は中国」と漏らした。というのも、旧満州地域には約一億五〇〇〇万人の中国人(テュルク系満州人)が居住しており、彼らがシベリアに雪崩れ込めば極東ロシアは一溜まりもなく占拠されるし、既にシベリアには一〇〇万人以上中国人が移住しており、ロシア人人口を上回っている。
一方、中国、なかんずく満州族やツングース系などのテュルク系人にとっては、ウラジオストックや樺太は、一六八九年のネルチンスク条約で、ロシアに強奪された領土との認識がある。
ただ、中国が極東地域まで支配下に置くことは、日本にとっては重大な脅威となる。『文明の衝突』の著者ハンチントンは、「極東から米軍が撤退した場合、日本は国家としての存亡の危機を迎えるが、そのとき、モンゴルが反乱を起こすだろう」と指摘した。これは地域的な汎モンゴリズムの脈動にとどまらず、ユーラシア全体に大動員をかけるきっかけとなることを示唆している。
ところで、「大東亜戦争」は東南アジアの独立をもって完了した。しかし、冷戦によりソ連邦の崩壊で、中央アジア諸国が独立を果たした。これが「大東亜戦争の延長(拡大)戦」であった。
もっとも、南モンゴル・ウイグル(東トルキスタン)・チベットは、未だ共産中国の支配下にある。これを解放するのが、戦前、鮎川儀介が命名した「(第一次)河豚計画(満州経略)」に続く「第三次河豚計画(中亜経略)」と命名される𡈁體経略である。
昨年七月、天皇陛下がモンゴルを訪問され、七日間も滞在されたのは、イスラエルからトルコ、中央アジア・満州・朝鮮半島ラインの中核となるモンゴルにおいて「汎テュルクリズム(大ユーラシア主義)」を宣言するためであった。
この「汎チュルクリズム・ゾーン」が鳴動するとき、それは中国・ロシアを分断し、それぞれにおける民族主義の沸騰など、中露両国とっての歴史的転換をもたらす、重大な脅威となることであろう」
