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(1)仮想通貨(ビットコイン)の仕組み

 

通常の通貨(法定通貨)は原則、各国の中央銀行が発行して通貨量を管理しています。日本の中央銀行である日本銀行は、その51%の株を日本政府が保有しているため、通貨の発行量は事実上国が管理しているということになります。

 

これは、既にみたように現在の通貨の本質が金、銀などとの交換ができない、国の信用を背景とした唯の“紙切れ”であるからで、これに対し、例えばビットコインなどの「仮想通貨」は、このような金融システムの一部をなす「通貨」とは異なった、ネット上の「取引記録」という決済システムに過ぎないため、そもそも「預貸(貸し借り)」といった観念や、そこから生まれる「金利」もなく、“貸し剥がし”や債務超過による破産処理(収奪)などという事態もありえません。

 

また、仮想通貨には、システムによって初めから発行量(2140年までの上限2100万BTC)と、インフレ率(4年ごとに採掘報酬が半減する)が定められているため管理の必要がなく、「管理者」が存在しません。

 

これに対し法定通貨の場合、政府にしろ中央銀行にしろ(その下の市中銀行も含めて)、「管理通貨制度」の名の下、通貨を一か所で管理して発行量や、金利や預金準備率、国債の売買を通じて流通量を操作しているため、その中でたとえ合法的ではあっても不透明なやり繰りが行われる可能性があります。

 

実際、2013年3月、キプロスは金融破たんの危機に陥り、政府は損失を補填するため、国民が銀行に預けている預金を強制的に没収しようとしました。が、これを避けるため一部の国民は、保持しているキプロスの通貨でビットコイン購入し、預金没収の難を逃れました。

 

このような経緯から、一つの管理者を持たないビットコインなどのネットワーク上のデジタル通貨(仮想通貨)が生まれましたが、あえてビットコインの管理者がいるとすれば、それは世界のネットユーザーの中にいる不特定の「マイナー」と呼ばれる人たちで、彼らが新しいビットコインを生み出す作業を通じて、全取引を大勢で相互に監視しています。

 

この作業を「マイニング」といいますが、それは暗号化されたネットワーク上のデータベース(ブロックチェーン)から、過去の全取引記録を解読し、新しい取引を加える作業で、これにより新しいビットコインが創出され、それをインセンティブとして、世界のマイナーたちが24時間365日、作業(監視)を行っています。

 

ただ、通貨の一括管理者がいないと聞くと不安になりがちで実際、2014年3月にマウントゴックス事件、2018年1月にコインチェック事件が起き、仮想通貨への信頼を揺るがすことになりました。

 

しかし、いずれも本来、保有者がそれぞれ自分で管理すべき「公開秘密鍵」というパスワードを取引所業者に一括管理させていたため、それをハッキングされ(盗まれ)引き出されたことで起きた、管理体制の不備による事件で、分散通貨の根幹であるブロックチェーン自体の不備を突いたものではなく、その後、関連法規が制定され、今では取次業者は金融庁の厳重な監視(保護)の下に置かれています。

 

法定通貨と仮想通貨の次の大きな違いは「国際送金の容易化」です。法定通貨は発行国で使用されることが前提とされているため、他国で使用する際は自国通貨を使用国通貨に変換する必要がありますが、ビットコインなどは世界中どこでも使用できます。

 

スマホをかざすだけでその中にあるコインを使用でき、他国に送金をする際にも、法定通貨だと相当の手数料が発生しますが、ビットコインだとほぼ無料で自由に送金できるため、将来不安から海外送金が著しいものの、厳しい規制下に置かれている中国などで取引量が急増しています。

 

なお、アフリカなどの発展途上国では、そもそも銀行の支店が少なく、口座を持たない人々や送金の際に必要とされる身分証明書を持たない人が約20億人いるといわれています。

 

また、アマゾンなどでネットショッピングをするためクレジットカードを利用しようとしても、その約三分の一は詐欺業者で、代金の不正引き出しが絶えないといわれていますが、仮想通貨はこのような人々にも市場参加を可能にします。

 

このように仮想通貨は、現段階では先進国主導の中央銀行による管理通貨制度に取って代わるまでには至っていませんが、これを補助する通貨として、その存在を高めつつあります。

 

 

(2)その他の新しい通貨

 

ビットコインなどの仮想通貨のほかに考案されているものとして、例えば各都道府県や、九州とか北海道とかを単位とする道州制を前提に、当該地域の活性化のために、当該地域内だけで使える「地域通貨」があります。

 

仮想通貨を国際決済通貨、通常の法定通貨を国内通貨とした上で、三番目の通貨としてこの「地域通貨」を活用することが考えられます。

 

この他、富の蓄積を防ぐため金利が付かないどころか、使わないでおくと価値が低減する「逆金利通貨」や、生活必需品かブランド品、あるいは自動車などの使う目的や収入に応じて価値が変わる「電子価変通貨」など、ICT(情報通信技術)の進化によって可能となり、大量製造コストの低減が課題となっていますが、すでに実際に存在しています。

 

例えば、年収200万円の人と2億円の人が同じ一斤のパンを買う場合、後者が持つ紙幣には2万円の価値を持たせるなどです。

 

これは、私たちの人体は精神活動では複雑な脳波を、拍動する心臓は心電波を、筋肉を動かせば筋電流を放出しており、それらを簡単に感知するチップを貨幣や紙幣に埋め込むだけで可能となります。

 

また、長く持っていると価値が低減する「逆金利通貨」を採用すれば、先に述べた「国債の日銀引き受け」によるベーシック・インカムで市中に大量に出回る通貨を、消費にしろ、投資にしろ購入した財貨の消耗に応じて減価させれば、将来のインフレ懸念を防ぐことができます。

 

もっとも、このような通貨の導入に関しては、すでに最高税率が45%にまで引上げられた累進課税制や、課税最低限制によって不公平は解消されているはずだとの反論があります。

 

しかし、年収2億円の人の可処分所得は、1億2000万円から社会保険料を引いた1億1000万円を下ることはなく、住居費や衣服の購入に2000万円かけたとしても、食費にかけられる金額は9000万円残ります。

 

一方、年収200万円の人は所得税はかからないものの、社会保険料を除くと可処分所得は180万円程度と考えられ、そこから家賃5万円と衣服、交通費、公共料金を払うと食費に使える金額は90万円となり、年収2億円の人と100倍の差が生まれていることが分かります。

 

これがさらに年収200億円となると、食費に使える金額は160億円となり、年収200万円の人の1万8000倍となるのです。

 

これに対しては、「勤労意欲が削がれ、成長が滞る」などという市場原理主義者の定番的な反論がありますが、そもそもこれから人類が直面する社会は、AIなどが学習しながら進化(ディープラーニング)し労働もこなす世界ですので、研究開発などに携わる頭脳労働者などを除いて、私たちの勤労意欲が問われることなどありえません。

 

むしろ、生活の心配をすることなく趣味やボランティアなど幅広い分野で、個々人が才能を発揮できる社会が到来することでしょう。

 

(次回に続く…)