台頭し始めた"英米派”(2)無益な軍備増強を始めた山本権兵衛

 

ところで、日本を仮想敵国にした「オレンジ計画」を策定した米国ですが、これはあくまで支那大陸での日本の勢力拡大を警戒するもので、太平洋での日米直接対決を想定したものではありませんでした。したがって、米国は、日米開戦後に成立させた「両洋艦隊法」まで海軍の増強はしません。

 

一方、日本では、日露戦争で傾いた国家財政を立て直すため、参謀総長になった児玉源太郎が、将来予想されるロシアとの最終決戦を想定した装備の近代化による、それまでの歩兵中心だった師団数の大幅削減計画を提案します。

 

が、海軍の山本権兵衛はこれに猛反対。亜細亜を舞台にしたロシアとの決戦構想では海軍の出番がなくなり、陸軍予算の縮小とのバランス論からの海軍予算の削減を警戒、「統帥権の独立」要求と同じ"縄張り意識"が再び頭をもたげます。

 

そして、児玉の急逝後、これを奇貨とした山本は「第1次対米戦備増強計画」を要求、明治40年4月には「帝国国防方針」で米国を仮想敵国とした大規模な軍備増強を図る「八八艦隊計画」を認めさせます。この結果、海軍予算が国家予算の34%にも達します。