関東はじめ各地から異例の早さで桜の開花が伝えられていますが、ほころびかけた蕾もキュッと縮こまってしまいそうな寒の戻りが、明日も続きそうですね。

 

久しぶりの桜の下でのお花見を直前に、京の都から春の便りを二題お届けします。

 

 

(※)

 

まずは、洛南は伏見に座す「城南宮」のしだれ梅。

 

平安京の安泰と守護を願って創建された城南宮は、桂離宮や宇治の平等院など周囲に多くの離宮が築かれると、熊野詣の際に方位の禍いが無いように祈願する方違(かたたがえ)の宿所に離宮の御殿が選ばれたことから、「方除(ほうよけ)の大社」として知られています。

 

広大で豪奢かつ繊細で手入れの行き届いた庭園には、季節を映した花々がそれは見事に咲き競い、京都でも有数の花の社として名を馳せていますが、中でも「しだれ梅」は必見です。

 

 

(※)

 

冒頭の画像は先月末に参詣した折の一枚でまだ5分咲き程度でしたが、見頃ともなると紅白のしだれ梅が花瀧の如く咲き競い、その妙なる美しさはまさしくこの世の桃源郷です。

 

 

(※)

 

実はこの時期の城南宮は椿もとても美しく見応えがあり、「城南椿」と呼ばれる真紅の自生の藪椿から、滅多にお目にかかることができない貴重で艶やかな150種を超える椿まで約400本もの椿を堪能することができます。

 

 

(※)

 

落椿となった城南椿がビロードのような苔庭を彩り、その背景にしだれ梅がけぶる姿は思わず息を呑む美しさです。

 

 

(※)

 

3月下旬まで開催される「しだれ梅と椿まつり」の間は、梅の花を冠にあしらった巫女さんが、梅ヶ枝を手に神楽を舞って参拝者をお祓いして下さる「梅ヶ枝神楽」も自由観覧できますので、京都へお出かけの際は是非参拝なさってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

 

(みやこ)からの花便り、続いては2月25日の天神祭である「梅花祭」に参詣した折の「北野天満宮」から(ちょっと遅くてすみません🙇‍♀️)。

 

 

 

 

梅花祭は菅公の祥月命日に行われる祭典で、お米を蒸して大小二つの台に盛った「大飯(おおばん))」「小飯(こばん)」や、白梅・紅梅の小枝を玄米に挿した「紙立(こうだて)」という特殊な神饌をお供えし、菅公の御遺徳を偲ぶ御祭典です。

 

この季節の天満宮は菅公ゆかりの梅50種、約1,500本の梅花に彩られますが、その梅苑も毎年、梅花祭前後に見頃を迎えます。

 

 

 

 

今年の梅花祭では3年ぶりにほぼ例年通りの「野点大茶湯」が催され、露店がひしめくように軒を連ねた参道は多くの参拝客で賑わい、久方ぶりに“天神さん”の華やぎが戻って来た喜びに、私も胸がいっぱいになりました。

 

梅花祭の野点大茶湯(のだておおちゃのゆ)は、豊臣秀吉が一般庶民を無礼講で茶席に招いた「北野大茶湯」を催した故事にちなみ、1952年から菅原道真の祥月命日である2月25日に毎年行われています。

 

 

 

 

天満宮境内の「船出の庭」で地元・上七軒の花街の芸舞妓衆が正装でもてなしてくれる、それは雅な催しですが、可憐な舞妓はんが点てて下さったお抹茶を、私も久しぶりに味わわせていただきました。

 

 

 

 

コロナという長い冬を越え、やっと到来した春の喜びをしみじみと噛みしめる格別な一服でありました。

 

 

 

 

そして、この日の梅花祭の御撤饌として天満宮より賜わった品が、京菓子司「末富」による桃の節句限定の御干菓子。

 

なんとも艶やかにはんなりと、“春爛漫”を端的に表現し味わい尽くすことができる日本文化の奥深さをあらためて教えていただいた逸品でした。

 

 

 

 

(画像出典:※城南宮公式サイト)