先月、母校・早稲田大学のホームカミングデーである稲門祭に招かれ、「大隈講堂」で行なった講演の模様をYouTubeにアップしました。

 

 

 

 

早稲田大学は今年で創立140周年。一方、私が理事長を務める「作新学院」も創立137年を迎えます。

 

つまり、両校はほぼ同じ時期、同じ時代背景の中で設立されました。

 

140年前の日本と言えば文明開花華やかなりし頃ですが、両校創設の背景には、西欧列強に四方八方から取り囲まれ、国家の主権が脅かされんとする国家存亡の危機がありました。

 

軍事力、科学技術力、経済力など、あらゆる力で圧倒的な優位に立つ西欧列強と対等に渡りあい、国家の独立を堅持し国民の安寧を守るには、それを担うだけの能力と志を有した人財を一人でも多く世に輩出せねばならない。

 

そんな切実な思いから、大隈重信は早稲田大学を創設し、作新学院の前身である洋学の学問所「下野英学校」の創立者・船田兵吾のもとには、国を憂い西洋の学問を学びたいという志士たちが参集したのだと思います。

 

 

早稲田の校歌に謳われる「進取の精神」と「学の独立」。そこには建学の志が込められています。

 

国家存亡の危機を救うには、自ら困難な課題に果敢に挑戦する進取の精神に富んだ人財が必要であり、またそのような人財を育成するためには、お上や既存の組織、前例や慣習に縛られることなく、主体性を堅持し自律した“個”を育めるような、独立した学問環境が必須であるという思いが、校歌には刻まれていると私は解釈しています。

 

 

こうした教育のスタンスは、作新学院にも共通しています。

 

何よりその校名に込められた「作新(新しきを作れ)」という志。

 

その出典は中国の四書五経の一つ『大学』の一節にある「作新民(新しき民を作れ)」ですが、名付け親は維新の立役者・勝海舟です。

 

坂本龍馬など幕末の志士たちが師と仰ぎ、西欧列強と対峙しうる海軍力の増強に尽力した勝海舟は、「作新」という校名に“世の中を刷新(イノベート)する”人財を作るという志を託したのだと思います。

 

また、作新学院の教育方針の第一には、「自学自習」が掲げられています。

 

自学自習こそ、お上や権威に押し付けられ一方的に与えられる教育ではなく、自ら学ぶべきことを自ら見きわめ選択し、主体的に学習する探究型「主体性教育」そのものです。

 

 

という訳で、早稲田と作新は同じ時代背景のもと、同じ志と同じ教育方針を掲げ創立され、今日までその歴史を重ねて来ました。

 

残念ながら現在、日本は世界ワーストクラスの少子高齢化と財政赤字という問題を抱え、その国際的地位もあらゆる指標で低下の一途をたどるという、まさに国家存亡の危機に直面しています。

 

〔「総合経済対策39兆円〜日本は“第二の敗戦”から再生できるか」参照〕

https://ameblo.jp/japanvisionforum/entry-12772765618.html

 

ただこうした今だからこそ、幕末に国家存亡の危機を格別なる「人間力」で乗り越えた、先人の知恵と勇気と志に学ぶべきだと強く思うのです。

 

 

 

 

以前のように人寄せパンダの価値はない一介の教育者となった私が、創立140周年という節目の年に、歴史ある「大隈講堂」の大ホールで講演の機会を与えられたというのも、きっと大隈重信や勝海舟、船田兵吾など先人の思いが、時空を超えて運命を動かして下さったからと思っています。

 

真摯に学問に取り組み、志ある有能な人財を育み続けることができれば、日本はどんな危機でも乗り越えられる!

 

そんな思いを、拙い講演ではありますが、お汲み取りいただければ幸いです。