今、日本は重い病を患っている。

未曾有のスピードで少子高齢化が進行し(高齢化率世界1位、出生率世界184位)、世界ワーストの財政赤字はコロナ対策でさらに膨らむ中、科学技術やデジタルなど未来をリードする成長分野で軒並み世界競争力を低下させている。

平均年収はOECD加盟国中22位で、労働生産率では20位と約50年間に亘り先進国中最下位を記録している日本。

もはや日本を先進国と呼ぶべきではないという意見も聞かれる中、迎えた今回の総選挙。

“日本という病”の患部と真正面から向き合い、構造改革というメスを振るって根本的治療を施そうという政党は、残念ながら皆無だった。

それどころか、与野党問わず目先のばら撒きと先送りの甘言を繰り返し、未来への借金となる財政出動に対し厳格な規律を設け評価を徹底せよと提唱する党も、成長戦略や社会保障制度のグランドデザインを具体的に示す党も一つもなかった。

どの政党も日本の未来を見捨てた。

それが私の既存政党に対する理解だ。


例えば、日本の財政赤字 1256兆円は戦後最悪のGDP比 256%と、終戦後の200%すら上回る水準で、日本は明らかな危機に直面している。

危機を実感しやすいよう、日本の財政状況を家庭の家計簿に見立てみよう。

すると、日本という一家は月収が28万円しかないのに毎月50万円も支出してしまい、約4割を借金で賄っていることになる。

日本の各家庭が抱えるローンの金額は平均5900万円、今の日本では赤ちゃんまで入れて日本国民全員が生まれた瞬間から970万円の借金を負っている。

ただ、日本は海外から借入をしておらず貸し手は日本人なのだから、いくら借金をしても財政が破綻することはないと語る人がいる。

本当にそうだろうか?

現在、国債費は日本の支出の4分の1(23%)を占めるので、つまり一家はローンの利子返済だけで家計支出の4分の1を持って行かれている。

しかも残り4分の3も自由に使える訳ではなく、そもそも社会保障費が国の支出の3分の1(33.8%)を占めており、この割合は年々増加している。

そしてこうした財政状況は、金利が上昇すればさらに悪化する。


日本の国債格付けは、以前は最も信用性の高いAAA(トリプルA)だったが、今は5段階も低下。貸し手が日本人だろうが外国人だろうが、日本の信用度が揺らぎ金利が上昇したら、財政は一瞬で破綻する。

それが我が国の偽らざる実態だ。


国民に信を問うべき選挙で、信に足る政党が存在しないことほど、国にとって由々しきことはない。

金融緩和という麻薬と財政出動というカンフル剤を打ち続け、具体的な成長戦略も抜本的な社会保障制度改革も打ち出せないままでは、日本丸が早晩、世界競争の狭間に沈没するのは必至だ。

そして、日本の沈没に待ったをかける政党の出現を、手をこまねいて待つ時はもう終わった。

「自分たちの社会は、自分たちで作る」という気概を胸に、未来に責任を持ち国民や世界から信に足る政党を、晴天を衝くが如き覇気と覚悟を胸に作り出さねばならない時が今この時であると、グランドデザイン無き総選挙を終え強く思う。