関東も梅雨入りし、とりどりの紫陽花が街角を美しく彩る今日この頃。

 

そんな鬱陶しい季節だからこそ美味しく味わえる夏の楽しみが「夏酒」です。

 

中でも、この酒が飲めるからこそ夏が待ち遠しく、この酒が登場すると夏到来!という日本酒が、オンザロックで味わう玉川の「Ice Breaker」。

 

 

 

 

冬季に搾った酒を約半年間熟成させた純米吟醸原酒だからこそオンザロックが旨いこのお酒、実は造り手はイギリス・オックスフォード大学出身の杜氏、フィリップ・ハーパー氏。

 

アルコール度数が約18%と高く、爽やかでまろやかながら濃醇で飲み応えがあるので、大きめの氷をロックグラスに浮かべ溶かしながら味わうと、氷が溶けるにつれ温度と濃度が時々刻々移り変わって行って、実に楽しいお酒です。

 

「Ice Breaker」というネーミングも洒落ていて、元の意味は“砕氷船”ながらそれが転じて、堅苦しい場の雰囲気を和らげること、初対面が多いパーティやディスカッションで、最初にジョークや自己紹介で場を和らげることを「Ice Breaker」と言うそうです。

 

ブルーボトルで、氷上の青いペンギンのラベルがとても愛らしく、その名の通り、何かと鬱陶しい季節に身も心も解放させてくれるとびきりの一本です。

 

京都・丹後の木下酒造が夏期限定品として開発し、毎年初夏には予定本数が全て売り切れてしまう「Ice Breaker」。

 

年々生産量を増やしているそうですが受注数が上回ってしまい、出荷調整がされているようなので、気になる方はお早めに。

 

 

 

同じ木下酒造から、夏に楽しいお酒をもう一本。

 

古酒ながら実に爽やかで軽やかな飲み口がクセになる日本酒、「 玉川 Time Machine ビンテージ」です。

 

このお酒は「Time Machine」というその名の通り、江戸時代の製法で造られており、現代のオーソドックスな日本酒と比べて約7倍のアミノ酸が含まれています。

 

それもあって絞りたての段階で既に、通常の造りの酒であれば5年から10年ものの古酒を思わせる淡い琥珀色をしているとのこと。

 

「ビンテージ」バージョンは3年間の瓶貯蔵を経た長期熟成酒で、その効果で色合いはさらに深く美しく、風味はコクを増して上等のお醤油のような芳ばしい香りが鼻をくすぐります。

 

グッと凝縮した米の旨味や香りを味わえる濃厚な甘口ながら、古酒にありがちな雑味や甘ったるさは微塵もなく、実にスッキリと端正な飲み口で、これは通常の吟醸タイプとくらべて3倍の酸と7倍のアミノ酸の魔法によるものだそうです。

 

アイスクリームにかけるとミルクの旨味が引き立って実に美味で、ブルーチーズ、フォアグラ、さらに丹後名物・鯖の糠漬け「へしこ」といったクセの強い酒の肴とも相性が良いのですが、私はお酒単独で味わうのが一番好きです。

 

江戸時代の酒蔵の風景を描いた「Time Machine1712」のラベルには、顔が玉川ロゴになっているロボットが蔵人として紛れ込んでいて、「Ice Breaker」同様、遊び心満載の一本です。

 

 

 

 

さて、この玉川の粋な夏酒を、さるワインコレクターの方へ暑気払いとしてお送りしたところ、これまた夏に味わいたい、実に洒落た白ワインが届きました。

 

 

世界でも屈指の白ワインの造り手であるディディエ・ダグノーの入門キュヴェと言える「Blanc Fume De Pouilly(ブラン フュメ ド プイィ)」。

 

フランス最長の河川であるロワール川流域に広がるワイン銘醸地・ロワール地方の上流、プイィ・フュメ地区サン・アンドレン村でワイン造りを営むディディエ・ダグノー。

 

ダグノー氏は「ソーヴィニヨン・ブラン」という個性的な品種を、白ワインとして芸術的なレベルへと高めた天才と称賛されたワインメーカーです。

 

しかし2008年に飛行機事故で早世し、現在は父親の遺志を継いだ息子のベンジャマン氏がワイナリーを運営していますが、依然フランスワインのガイドブック「レ・メイユール・ヴァン・ド・フランス」でも3ツ星評価を獲得し続け、ベンジャマン氏自身も2016年に仏のワイン専門誌である『La Revue du Vin de France』で「Vigneron de l'annee」つまりワインメーカー オブ ザ イヤー として選出されています。

 

 

 

 

エティケットに描かれた楽譜のデザインが印象的なこの「ブラン・フュメ・ド・プイィ」。

 

描かれている楽譜は、ディディエ氏の友人である作曲家による「Mauvaise reputation(悪い噂)」と名付けられた曲で、演奏してみると調が違ったり、綺麗な和音が成立しなかったりと、芸術家肌であるディディエ・ダグノーの遊び心が結晶しています。

 

国民的人気を誇るフランスの吟遊詩人、Georges Brassens(ジョルジュ・ブラッサンス)が歌っていますので、よかったら試聴してみてください。

 

https://m.youtube.com/watch?v=Cz9NOhwK1yo

 

 

 

さて、話をワインに戻しますが、ワイナリーではブドウの成熟を重視しヴィンテージごとの個性やテロワールをしっかり表現するワイン造りを追求。

 

土壌と環境を尊重したビオディナミ農法による栽培を取り入れ、畑の区画によっては馬で耕作を行う等、出来る限り機械を使用しない栽培方法を徹底しています。

 

樽の種類も特注のシガールと呼ばれる300ℓの樽とドゥミムイと呼ばれる600ℓの樽を主体に、澱に触れる面積の違いによって味わいにも違いが出るよう工夫され、こだわりのワインが造られます。

 

この「ブラン・フュメ・ド・プイィ」は、粘土シレックス土壌と石灰質土壌の2区画を別々に醸造してアサンブラージュする、ダグノーでは唯一となる土壌が違う畑のブレンドワインだそうです。

 

 

もともとPouilly Fumé(プイィ・フュメ)特有の、柑橘系の爽快感の中にちょっと燻るスモーキー感が大好きな私としては、今から開栓が本当に楽しみ!

 

しかも今回いただいたワインは、ディディエ・ダグノー氏が急逝した2008年に製造された記念の一本。

 

withマスクの日本の夏、和洋問わずお好みの一杯を見つけて、乗り切ってみては如何がでしょうか。

 

 

 

〈参考文献〉

https://www.miraido-onlineshop.com/item/1-didier-d-04/