道理に照らして、おかしいことをおかしいと感じることはストレスになる。

 

おかしい現状を容易に変えられればストレスはすぐに解消されるが、大抵の場合、道理に叶わぬおかしなことは、そう簡単には現状変更できない。

 

そこで、道理を貫くよりも日々の平穏を重んじる傾向が強い日本人は、おかしいことをおかしいと感じる感情に蓋をし、論理性や正義感を敢えて鈍らせることにより、おかしいと感じる自分の方がおかしいのだと自己暗示をかけ、ストレスを回避する。

 

そして、こうした自己暗示をかけ沈黙している他者を見て、日本人はより一層自分の心や頭の動きにブレーキをかけ、道理に照らしておかしいことをおかしいと思わない方がやはり得策なのだという自己暗示を相互に強化することにより、謂わば集団催眠の如き思考停止状態に没入して行く。

 

普遍的な真理や道理といった揺らぐことのない“精神の座標軸”を掲げて生きることを良しとせず、その時々の世論や世間の空気感に迎合し漂い流されて生きることは、中長期的視点あるいはグローバルな観点から言えば国益を損ね決して得策ではないのだが、極東の島国の閉じたムラ社会においては、問題には目をつぶるか或いは先送りして、できるだけ軋轢を生むことなく、表面的には穏やかに淡々と日々が流れて行くことを良しとするのだ。

 

たとえ、問題先送りのその先には奈落の底へ突き落とされる未来が待っているだろうと薄々勘づいていたとしても、誰も自ら言い出すことはなく行動することもしない。

 

ただ中には、道理を貫くことを良しとするおかしな日本人もたまにいて、おかしいものはおかしい、やはり現状を改革すべきだなどと声を上げるのだが、その途端、世間からは袋叩きに遭う。

 

せっかく皆で集団催眠にかかり、道理に合わないことは見ない、知らない、存在しないことにし、できるだけ顕在化させずスルーしてストレス回避をはかっているというのに、そうした空気も読まず、道理に合わないことをあげつらい、わざわざ波風を立てて皆にストレスを与えるなんて愚かなこと、そんな我慢のない自分勝手なええカッコしいは、社会秩序を乱す厄介者であるから存在自体を無視、つまり村八分にして社会から排除しよう、というのが日本社会の常である。

 

いくら文科省が、「主体的・対話的学び」を実行せよと旗を振ったところで、自分の頭で考え自分の心で感じた不条理を自分の行動で正そうとしたその瞬間、世の中から一斉にバッシングを受け、世間から爪弾きにされる日本社会の現実を目の当たりにして、子どもたちが主体的・対話的な生き方こそが正しくより良い生き方だと心底から思えるかと言えば、それは甚だ疑問だ。

 

子どもたちを理想通りに教育したいと本気で大人たちが思うなら、まず大人自身がその理想に少しでも近づけるよう我が身を律し、範を垂れねばなるまい。

 

 

(画像:毎日新聞)

 

コロナ禍で、日本の不条理はさらに積み上がっている。

 

 

 なぜ医療従事者、しかも高齢の医療従事者

 までもがワクチン接種を受けられぬまま、

 コロナ患者の治療やワクチン接種に従事

 しなければならないのか?

 

 なぜ飲食店ばかりが一方的に努力や忍従

 を強いられ、実際にマスクをせず飛沫を

 飛ばすことにより他者を病気や死に至ら

 しめる可能性のある危険行為を店内や

 路上で続ける者を、禁煙区域で喫煙した

 者が罰せられるのと同様に取り締まる

 ことができないのか?

 

 なぜ一般企業であれば厳重な懲罰を受け、

 場合によっては免職になって然るべき、

 コロナ禍での大人数での会食について、

 政治家や官僚という国民の鑑となるべき

 立場にある者が行ってもその罪はほとんど

 問われず、ただ頭を下げるだけで許される

 のか?

 

 なぜ学校で子どもたちはこの一年、クラス

 メートと一言も言葉を交わすこともなく、

 全員同じ方向を向いてただ黙々と無味

 乾燥な給食の時間を過ごして来たという

 のに、大人たちは感染リスクを最小限に

 する努力もせずに会食を行うのか?

 

 なぜコロナ患者の治療に自己だけでなく

 家族まで犠牲にして取り組んでいる医療

 従事者たちに、十分な給与と柔軟な労働

 条件を与えられるよう政府は速やかに

 動かないのか?

 また、そうした医療従事者などコロナに

 関係した人たちに対し差別や虐めという

 不当行為を行う者を処罰できるよう、

 法改正しないのか?

 

 なぜ目前に迫った東京五輪に向けて、

 その開催の意義を国内外に広く問い直し、

 ベネフィットとリスクについて正しい

 データに基づいて議論を行おうとしない

 のか?

 

 なぜPCR検査はいまだに、簡便で安価に

 受ける体制が整備されないのか?

 

 etc.・・・

 

 

一つとして解消されることなく、雪だるま式に膨れ上がって行く不条理な事態に対し、この国の人たちは本当に寛容で恐ろしく我慢強い。

 

一方、心が狭いのか神経が細いのか、あれもこれも腑に落ちずいちいち疑問に感じ義憤に駆られる私は、ともするとストレスで爆発しそうになる。

 

壊れた蓄音機のように針が飛んで、聴きたくもないレコードをまた同じところから一年経って聴かされているような、この国の現状に目眩がする。

 

しかし心身の健康を損ねては元も子もないし、免疫力を低下させてコロナに感染でもしようものなら、こんなに傍迷惑なことはないわけだから、ひとまずここはあまり心や頭を動かさず、おかしなことには片目をつぶりある程度はスルーしてと思っていると、ウインクが生来できない不器用な私は結局両目を閉じてしまうことになる。

 

いっそのこと全てに目をつぶり、心を殺し、頭から思考という機能を取り除いてしまえれば、どんなにか楽になるだろうと思えてさえしまう。

 

それでもやはり、おかしいことはおかしいと声を上げることに意味があると思い、今回こんな駄文をしたためてみました。

 

強毒化した変異ウイルスの脅威に対し、いまだに人流を止めることしか策を持たない政府から緊急事態宣言が各地に発出される中、皆様どうかくれぐれもご自愛下さい。