今日、4月4日は「清明」。

 

清明は春分に次ぐ二十四節気の5番目の節気ですが、「清浄明潔(しょうじょうめいけつ)」という言葉の略だそうです。

 

「空気は澄み、陽の光は明るく万物を照らし、全てがはっきりと鮮やかに見える頃」であり、芽吹いた植物の葉が開き、なんの植物かがわかるようになる季節とも言われています。

 

そんな佳き日、作新学院では高等学校の入学式が舞い散る桜の下、開催されました。

さすがに満開の作新桜・・・とは行きませんでしたが、その代わりに(はな)(いかだ)ならぬ桜の絨毯で、真新しい制服に身を包んだ新入生たちを迎えることができました。

 

昨年は一斉休校中だったため、新入生も各教室から校内放送での参加となってしまいましたが、今年は、2年ぶりに1255名の新入生たちを迎え対面で式典を挙行することができ、感無量です。

 

ただコロナという試練は依然続いており、実際、一年前と4月1日の感染者数を比較すると、去年は268人だったのに対し、今年は2606人と10倍も増えているため、保護者の皆様には入学式に来場いただけず、オンライン中継での参加となってしまい恐縮でした。

 

感染者数が増えている背景には、検査数の増加などもあると思いますが、いずれにしても私たちはこの一年、ウイルスの感染状況を調査・分析・学習することによって、適切な感染対策を行えば学校生活をはじめ多くの社会活動が継続できることを学びました。

 

またそうした中、ワクチン開発を筆頭にライフサイエンスや医療技術の分野は飛躍的に“進化”し、日本では遅れていたICTの活用も社会全体で進みました。

 

同時に、ルーティンとなっていた日常が断絶したことにより、自分の身の回りや仕事など人生を見つめ直し、本当の幸せ、真の豊かさとは何なのかを自らに問い直すことによって、自身や組織の“深化”がはかられたという人も少なくなかったのではないでしょうか。

 

試練は、“進化”と“深化”の両面でその人や社会の「真価」を磨く、自己改革、社会改革の絶好のチャンスであると思います。

 

 

そんな想いを込めて新入生に向け、次のような祝辞を贈りました。

 

 

 

「今こそ “進化×深化” の時」

 

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。ご家族の皆様にも心からお慶び申し上げます。

 

感染予防のため何かと制限のある日が続きますが、大切なことは、以前のような日常が戻るのを受け身で待つのではなく、新たなを作るため能動的に行動することです。

 

そう、世の中はまさに今「作新」の時を迎えています。

 

これまで通りのことができなくなると、それまでの暮らしや社会すべてが良いものだったような幻想を抱きがちですが、本当にそうでしょうか。実際は見直すべきところが多々あったのではないかと、デジタル化や疫学・防疫体制などの遅れが露呈している今の日本を見て思います。

 

そういう意味でコロナとは、改めるべきところを改善し、社会や自分を新しくバージョンアップできる「作新」の大チャンスであるわけです。

 

このチャンスには、二つの方向があります。「進化(シンカ)」と「深化(しんか)」です。

 

進化とは、変化に対応して物事を進歩させることにより、これまでできなかったことができるようになることを意味します。

 

たとえば作新学院でも昨年の一斉休校中、「絶対に学びを止めない!」という思いからいち早くオンライン授業を全学で実施し、学習の遅れを阻止しました。

 

作新学院では今後も、オンラインを活用することでより主体的に、時や場所を選ばず効率的に学習できる新たな学習形態と、対面だからこそ実践できる密度の高い学習形態をベストミックスさせた「ハイブリッド教育」の実現を目指し、更なる進化を続けて行きます。

 

ではもう一つのチャンスである「深化」とは、どういうことでしょうか。

 

深化とは、自己を掘り下げ、世の中の真理を探究することにより、この世界に存在の根を深く広げることを言います。

 

人は動物で哺乳類ですが、その存在は樹木に似ています。外からは見えない精神や心という根っこがしっかり深くまで成長していないと、人格としての幹も太くなりませんし枝葉も伸びません。

 

人として、本当に大切なこととは何か。自分自身にとって、本当に価値あるものとは何なのか。そうした「人生の座標軸」とも言える精神の根っこをしっかり醸成することが、皆さんのような若い頃には何より大切です。

 

偏差値や金額やイイねの数といった数値的尺度は、一つの目安にはなりますが、人間や幸福の価値をはかることはできません。

 

いくら受験競争に勝って難関校に合格しても、強豪相手に勝って表彰されたとしても、本当に自分がやるべきことは何なのかが分からず、他者や世間の尺度に振り回されているだけの人生ほど、虚しいものはありません。しかも、少し向かい風が吹いただけで容易に倒れてしまいます。

 

ただそうは言っても、日々のスピードがどんどん加速する現代社会で、目には見えない「深化」のため時には立ち止まって、自らや世の中のことを顧み思索を巡らすのは容易なことではありません。

 

でも、コロナの今ならば、それができるのです。

 

人間形成の途上にあるこの時期にコロナと遭遇し、進化と深化のチャンスを得られた皆さんは、本当にラッキーだと思います。

 

どうぞこれからの学院生活で思う存分、様々なことに挑戦して、ご自身の真価に磨きをかけてくれることを心から願っています。